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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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困ったものだ…

 時は流れ、恐らく俺の時代の歴史では永禄8年(西暦1565年)に入っているはず、今川義元を倒した織田家と宿敵である斉藤家との争いも激しさが増し、一進一退の攻防が続いていた。

 更にあの斉藤道三が築城した稲葉山城はそう易々と攻め落とせる城ではなく、それが原因で最近の信長様はかなり機嫌が悪く、これまで以上に評定を開催しては美濃攻略の策を論じていた!。


「これほどの人数が揃っておって、何も斉藤攻略の案が出せぬとは、貴様らの頭は兜を被るだけしか能が無いのか!たかが青二才の龍興(たつおき)程度に苦戦しおって!」


「お言葉ですが殿(との)…あの龍興(たつおき)の配下の者は、道三の時代から斉藤家を支えてきた猛者ばかり…軍功も遥かに我らをしのぐ……」


「えぇい!黙れ、成政(なりまさ)!…我らの士気を下げるような言動は許さぬ!」


 最近の信長様はいつもこうだ、誰かがお諌めしようとしても逆ギレをし、湯飲みを投げそのまま自室に戻りそこで軍議が終ってしまう…それが今の織田家の現状だ…。


「いやはや、桶狭間の勝利から殿(との)の野心が更に暴走したようじゃ…これでは他の家臣も忠義心が揺れようぞ…」


「森様…」


 代表取締役が会議の場を去ったのだ…すでに用件を済ましたと思い、他の武将達も次々とこの場から帰り始める…そんな時に森様は俺に声をかけたのだ…。


「どうじゃ?久しぶりにわしと一杯付き合ってくれぬか?…藤本殿(どの)も、小一郎もいかがか?」


「申し訳ございません森様、拙者はまだ奉行所の勤めがございますので…」


「私は喜んで参加させてもらいますよ!」


「そうか、小一郎は残念じゃが、では巽殿(どの)と藤本殿(どの)で参ろうとするか…して、(かえで)は今何をしておる?」


「今は私の命で美濃に潜伏し情勢を調べてもらっております…」


「そうか、では!酒処(さけどころ)に参るとしよう!」


 俺と浩一はてっきり城下町の赤提灯が目印の居酒屋かと思っていたのだが、さすがに織田家の重臣森様である、彼に案内されたのはこ時代ではかなり立派な料亭であった。

 その造りは俺達が住む屋敷よりも立派な構えで、到底庶民では敷居を跨ぐ事すら恐れ多い店だった!。


「こ、こんな立派な店に私と浩一を…」


「侍大将が何を言っておる、さ、奥座敷を用意させておるでな、ゆっくりと酒を酌み交わし語ろうではないか!」


 こうして俺と浩一は森様の計らいで豪華な食事と酒を嗜んでいたのだが、少々酒が回り始めた辺りで森様は本日の議題を口にした!。


「巽殿(どの)、藤本殿(どの)、単刀直入に申す…未来から来たお二方(ふたかた)なら、これからの織田家の歩む道を御存知のはず…このままでは家臣達の忠義の心は崩壊するやも知れぬ…そうなれば、またこの尾張で権力争いの火種が待っておる…そして、罪無き民が巻き込まれるのじゃ…どうか、織田家の未来を教えてはくれまいか?…」


「…森様…」


 森様は一人食事を取らず、酒ばかり飲んでいた…きっと最近はこのような食生活を送っているのだろう、それほどこの織田家の行く末が気になってしょうがないのかも知れない…。

 恐らくは、織田家に生涯を捧げた家臣達も今は同じ気持ちではあるまいか…。


「森様…森様のお気持ちはよく分かります…ただ、この席で話す内容では…」


「心配要らぬ、この周りにはわしの配下の乱波(らっぱ)が囲っておる、ここでの会話は外には漏れぬ…どうじゃ、話してはくれまいか?…織田家と尾張の民の為に…」


「いいんじゃないか?淳一、お前と信長様の間にも信頼関係があるのは知っている、しかし森様はお前よりもずっと長く信長様を見ていておられたんだ、これからは森様の知恵も必要になってくるはず…」


 人の話を聞いてないような素振りをしながらも、浩一は確実に相手の会話の一言一言を頭に入れ、その趣旨を整理し的確な答えを伝えてくれる、そんな彼のスキルに何度も俺は融資相談を乗り越える事が出来たのだ。


「浩一……分かりました、森様…ただ、先に申しておきますが…これから話す事は私の時代での歴史が参考となります、何かの歯車が違えば、この先、全く異なる歴史になる可能性もある事を心に留めて置いてください…すでに私や浩一がこの時代に現れた事で時代の流れが変わっているのですから…」


「う、うむ…委細承知した…」


 こうして俺と浩一はいずれ織田家が美濃を攻略し稲葉山城に信長様は拠点を移す所までを話した…しかし、織田家が斉藤家に勝利すると伝えても、森様の表情に明るさが戻る事はなかった…。


「森様、これまでの話は歴史の事実です…なぜその様な顔をなさっているのですか?…織田家は斉藤家を滅ぼすのですよ…」


 森様は黙って猪口の中で揺れる酒をジッと見つめたまま、何も語ろうとせず悲しそうな表情をしたままだった、俺達の話が胡散臭く感じたのか、それとも信長様が尾張を捨て美濃に本拠地を変える事が悲しいのだろうか…。


「あ、いや…巽殿(どの)、失礼した…ただの…まだ美濃を取るまで数年の時がかかるのかと思うと…それまで織田家一同の結束が保てるかどうか…いずれ離れていく家臣も少なからず出て来るだろうし…小さないざこざも続くだろう…それで何人の血がまた流れるのかと思うと…心が痛い…」


「森様、だからこそ私と淳一がこの時代に呼び寄せられたのです!」


「ん?…ど、どう言う事じゃ?…藤本殿(どの)…」


 浩一は森様に酌をしながら不敵に微笑んだ、そんな浩一の言葉に針の穴の程度の希望の光りが射したのか、受けた森様は注がれた酒を一気に飲み干す!。


「森様、すでにこの時代に未来から来た私と淳一が存在しているのです、もう歴史は別の道を歩み始めています!ならば、私達の時代に記載されていた歴史の流れを忠実に守る必要なんてありません!…」


「という事は?」


「簡単な事です、斉藤家の滅亡を早めてやればいいのです♪…すでに私達には斉藤家が滅亡する物語を手にしております、それを参考に美濃を落せばいいのです!」


「そ、そんな事が可能なのか!…」


「えぇ、しかし、この美濃攻略にはある男が重要な鍵となりますが!」


「ある男?…誰じゃ、それは!」


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