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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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立身出世の第一歩

「わしと巽殿(どの)だけで話しじゃと?」


「えぇ、少し川辺を散歩でもしながら…」


 俺と藤吉郎様は屋敷から離れた川沿いの土手を歩き始める、その間にも藤吉郎様は何度も溜め息を吐いていたので、その落ち込みようはかなりのように見えた。


「藤吉郎様、私や浩一が何故あの場所に屋敷を建てたか分かりますか?」


「…のどかで水も綺麗で景色もいいからじゃろ?…侍大将様の御身分に合っておりますな…」


(う、いきなり嫌味から始まった…)


 ここから一里も行けばもうそこは美濃だ…俺の視線先にある山々はもう美濃の領地…今はその攻略の為、信長様も内政に勤しんでおられる。

 すでに道三亡き後、織田家と斉藤家は緊張した状態になっている、何かしら美濃で不穏な動きが出ると信長様は容赦なく美濃攻略を始めるだろう…。


「藤吉郎様、あの先は美濃…私達がここに(きょ)を構えたのは、この先に始まる美濃攻略の為でございます…」


「み、美濃を攻略じゃと!…胡蝶様の出生の地でもある美濃を!…そのような事を殿(との)がお考えのはずはなかろう!」


「いえ、これは事実です…藤吉郎様、胡蝶様にはお辛い現実になりますが…今の君主では美濃を治める実力は…そして、次に跡を継ぐのが…恐らく…」


「あの息子か……まぁ、胡蝶様には悪いが、親子共々あまり良い評判は聞かぬな……」


 じっと美濃の山々を眺めていた藤吉郎様は、全てを理解しいきなり俺の前に立ち塞がる!。


「も、もしやこの地に(きょ)を構えたのは斉藤の動きを探る為か?」


「はい、これは信長様のお考えでございます、そして…いずれ藤吉郎様に大きなお役が回ってきます!」


「わ、わしに大役じゃと!」


 俺はここに屋敷を建てた経緯から、義龍の治める美濃攻略の情勢、いずれ信長様が稲葉山城を居城にする夢がある事を藤吉郎様に伝えた。

 そして、そこから信長様の天下取りが始まる事も…。


「な、なんと殿(との)のお考えは壮大なのじゃ…して、わしのお役とはどの様な?…」


「はい、いずれ内密に信長様から藤吉郎様だけにお呼びがかかります、それは藤吉郎様にしか出来ないお役でございます!その為に、信長様は藤吉郎様を清洲城に置いておきたいのでございます!」


「なんと!…そういう事であったか~~!…殿(との)はそれほどわしを想っていてくれたのだな♪…何たる勿体無き事!」


 まぁ最後の下りはその場しのぎの嘘だけど、これで藤吉郎様の機嫌が直れば儲けもんだ♪。

 それに、この美濃攻略が上手くいけば藤吉郎様の出世街道が始まる![木下]から[羽柴]に変わるのもそう遠くはない…。


「信長様はハッキリ私に言われました、「いずれ美濃攻略の先鋒は猿しかおらぬ!」と!」


(まぁこれも俺の大風呂敷だけど…)


「お、おぉ!…わ、わしを先鋒に…た、巽殿(どの)!…どうか殿(との)のご意向に応える為、貴殿の力をわしに貸してくれ!」


「えぇ、喜んで!…なので、しばらくは清洲城にて天の時をお待ち下さいませ!」


 こうして引越しを済ました俺達は、全てを理解し意気揚々と清洲城に赴任していく藤吉郎様を見送り、この新居での生活が始まる…またおねちゃんが居ない事をいい事に、藤吉郎様がよからぬ[オイタ]をしなければいいのだが…。

 それは藤吉郎様だけではない、やたら藤吉郎様を見送るおねちゃんの嬉しそうな顔が俺はかなり不安になっていた…。


(まだまだ俺には問題が山積みだな…)


 それから数週間が流れ、俺と浩一はこの静かな期間を利用し電気屋の本領を発揮していた、まず浩一は信長様との約束を果たす為、(くりや)の横に冷蔵庫一台分のスペースを確保し、そこに令和の時代に売れ残っていた冷蔵庫を持ち込んだ、更に電力供給を得る為、近くの川の流れを利用した水力発電所もそこに建設した。


(さすが大学首席卒業の浩一だったな…)


 このプロジェクトは僅か三週間ほどで完了したのだが、何より一番の功労者は令和の時代に住む浩一の奥さん[瞳ちゃん]である、まずこの時代で浩一が水力発電に必要な部材リストをエクセルで作成し、俺がそのメモリースティックを持って令和に戻り、そのリストにある部材を全て瞳ちゃんに準備させていたのだ。


(正直、瞳ちゃんは浩一並みの秀才だと、あの時は思ったな…)


 俺やおねちゃん達がこの時代に戻ってから、彼女はずっと異次元ワープについて研究してくれていた、そこで導き出した方法は、これまで俺の身体に触れておかなければ、人も道具もワープ出来ないと思われていたのだが、この異次元の力が俺のDNAだと認識すれば、別に触れておかなくても戦国時代に飛ばせる事が可能では無いかとの理論だった。


(まぁそこで実験をしたのが俺の指をカッターで切って、その血を荷物に着けて屋根から落したんだけど、それが大成功したから驚きだ!…なら、髪の毛の(ほう)でもいいかと思ったんだけど、俺の体内を巡っている血が有効だとの事で、結局そこに落ち着いてしまった…)


 てなわけで、今、俺の指は絆創膏だらけになっている…。


(瞳ちゃんの理論のお陰で、大きな荷物も送る事が可能になったし、信長様も冷蔵庫を超気に入ってくれたから、まぁ指の怪我なんて安いもんだ…これで浩一も夢のマイホームが現実になりそうだしな♪)


 しかし、信長様の冷蔵庫一つで発電所建設やケーブルの地中埋設工事など、結局作業要員が300人ほどかかった…今後もこのような工事の依頼が入るかも知れない…となれば、もっと手際のいい手段も構築しないといけないだろう…。


(きっと信長様が稲葉山城に拠点を移すと、清洲城と同じように…いや、それ以上の要望を出してくるに違いない…その為にはまだまだ計画を考えなければ…)



 [それから更に月日が流れ]



「お帰りなさい、藤吉郎様!…今回の働き、本当に見事でございました!」


「いやいや、これも巽殿(どの)と藤本殿(どの)のお陰でござる♪…ようやくわしにも運が向いてきたようじゃ!…うひひ、もう殿(との)の喜ぶ顔を皆に見せてやりたかったぞ♪」


「これで兄上も百人組頭…大評定の席には参列出来まするな!…心よりお喜びを申し上げます!」


「何を言う、これも小一郎がわしの支えになってくれたからじゃ!…礼を言うのはわしであろう♪まぁ、まだまだ末席の位置ではあるがな♪」


 やはり歴史通り、藤吉郎様の出世街道の一歩が始まっていた!。

 信長様は俺との約束を守ってくれ、斉藤家の松倉城主である坪内利定や、鵜沼城主の大沢次郎左衛門らの誘降工作を藤吉郎様に命じ、その難題を見事に藤吉郎様は成功させたのだ!。


(これから先、更に織田家と斉藤家の争いは激しさを増す…藤吉郎様の試練も正念場を迎えるだろう…きっとこの次はすぐにでもあのイベントが来るはず…その前に浩一と対策を練らなくては…)



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