初陣!
歴史上では先走りし討ち死にする佐々政次、千秋四郎が生きていた!。
本来なら歴史の神が許すわけもないのだが、神の審判は俺の願い通り彼らを助けたのだ、その意図はまだはっきりと分からないが、神様としてはこの殺戮が続く悲しい時代を早く終わらせる為、今は俺が始めた歴史を変える行動を認めてくれたと思いたい…。
「巽、藤本、小一郎!準備はよいな?」
「ははっ!」(巽ら一同)
「ではわしに着いて参れ!」
俺達は各々、自分が担当するアイテムを持ち、信長様の後を追う…仮設テントから出ると、まるで映画のワンシーンのように甲冑姿の男達が槍や弓を手にし走り回っている…。
(映画のロケじゃないんだよな…本物の戦の準備をしているんだよな…)
「淳一、これが戦前の様子なんだな…あの連中はエキストラじゃなく、これから命をかけて戦場に向かう侍達なんだよな?…」
「あぁそうだ…あの人達の本来失う命を、歴史の文献より減らす為には、俺達の働きにかかっている…」
「巽殿、藤本殿…此度の戦は、疾風迅雷が肝となるって事ですね?」
「えぇ、小一郎様の素早い計算処理が必要になると思いますので、よろしくお願いします!」
「分かりました!」
信長様に連れてこられた場所、そこは重臣さん達しか入る事が許されない正真正銘の陣幕内だった、信長様が登場すると、小さい折り畳み椅子に座っていた重臣達は素早く頭を下げる。
が、頭を下げ終えた皆さんは、俺達に対してだけかなり冷ややかな視線を向けていた。
(…だよな、初陣の俺達がいきなり侍大将に格上げされたんだから、嫉妬されて当然か…)
信長様が俺達をこの陣幕内に連れ込んだのだ、あの佐々成政でさえ何も文句は言わなかったが、俺を見る目は夜楽しみしていたプリンを、俺が勝手に食べてしまった時のような眼差しをしていた…。
(別に俺達、あの人に何もしていないんだけどな…藤吉郎一派だからか?…)
「では、軍儀に入る前に、まず小一郎!貴様はあの笠の下で準備をいたせ!」
信長様が指さしたのは、よく茶会で使われている大きな笠だった、すでにその笠の下には机と椅子まで用意されている。
無論、その言葉に重臣達が黙っているはずも無かった!。
「な、なんとおっしゃられる殿!…あれは殿の暑さ避けで用意した笠!…それも、このような身分も低く今日が初陣の男に与える等、もっての他でございます!」
「左様、あの者は木下藤吉郎の弟、聞く所によると体が弱く武芸はからっきしだと!…そんな者が何故殿が所有される笠の下に!無礼極まりない!」
(パソコンは水が弱点…歴史通りならもうすぐ雨が降るはず…その防護策として事前に信長様へ伝えておいて良かったけど…やはりここで家臣の反発が出たか!…)
「黙れ!成政、秀貞!…わしの考えに賛同できぬのなら、今すぐここから出て行け!…此度の戦、小一郎の算術が我らの勝敗を握っておるのじゃ!」
[も、申し訳ございませぬ…](成政、秀貞)
信長様の一喝に一同静まり返ると、小一郎様は何も言わず信長様に一礼をし、パソコンの準備を始める為あの笠の下に陣取った…。
これで俺達がどう動こうと他の武将は何も文句は言えない、それに…この戦いが終れば、少なからず彼らの俺達を見る目が変わるはずだから…。
「では次、藤本!貴様は巽と共にわしの横で待機いたせ!」
「ははっ!」
「最後に巽!今からは貴様の合図でわしが全軍に号令をかける!…その時期、見誤るでないぞ!」
「はっ!」
正直、列席から外れた小一郎様が羨ましかった…何故なら、新参者で身分も低い俺と浩一が、信長様の座っている真横でこれまで功績を上げていた重臣の皆さんを見詰めているのだから息苦しいのは当然だし、彼らの目が嫉妬の炎で燃えている事も感じていたので胃の奥がキリキリしていた。
[佐々政次、千秋四郎……た、ただいま戻りました……我らが勝手に勇んでしまい、殿からお預かりした兵を失い…面目次第もありませぬ……これより我ら、腹を切り……]
「もうよい政次!こうして戻って来ただけで大儀じゃ!…今は一人でも多く義元の首を狙う者が必要なのじゃ、まだ戦える身体であれば、傷の手当をし成政の隊に加わるがよい!」
「と……殿……は、ははぁーーー!」
初めて戦場で負傷した者を見た…兜の下、そして腕からも血を流し、身を守っている甲冑は傷だらけ…俺の時代では即救急車になるコースだが、信長様の一声でまた彼らの目に生気の輝きが戻った!。
恐らくあの二人は信長様の慈悲に応える為、傷付きながらも獅子奮迅でこの戦いに挑むだろう…。
「天晴れですぞ、殿!…この森可成、殿の家臣を想う心にいたく感服つかまつった!何卒、この可成に先鋒を命じてくだされ、我ら一同、殿に忠義をお見せいたしまする!」
「いいや、森殿よりも、この成政めに先鋒を御命じくだされ!…我が兄を傷つけた報い、決して許すわけにはいかぬ!どうか殿…先鋒は我らに!」
陣幕内に各武将の血気盛んな声が響き渡る、これも織田信長という男のカリスマが呼び込んだのか、重臣達の士気はMAXにまで跳ね上がっていた!。
部隊長の士気は文句無いほど上がった…これの熱気をどう兵達に伝えるかだ…令和の時代でも管理職だけがテンションを上げ、部下はそっぽを向いているなんて当然のようにある…それを信長様は理解しているかどうか…俺はただ隣に居る信長様を見詰めるしかなかった…。
しかし、そんな俺の考えを感じたかのように、いきなり信長様は椅子から立ち上がる!。
「よいか!この戦いに小さな先鋒など無い!…そなたら全員がすでに先鋒じゃ!…それをよく肝に銘ぜよ!」
「お…おぉ…我ら全員が、先鋒……」(成政)
「すでに、そなたら全員の褒美も決めておる!…よいか、兵達に伝えよ!各自の恩賞も清洲にて用意が済んでおる!万が一、命を落としても、その勇者の家族は織田家が責任を持って守るとな!」
「お、おぉーーーーーーーー!!!」(家臣一同)
やはり、織田信長という男は歴史に名を残すほどの大人物だった…そして今から、新しい歴史のページが書き換えられていく…電気屋の俺達が織田家に加わった新説の歴史が…。
「皆の者!直ちに隊の編成を整えておけ!…わしからの命があればすぐに動けるようにな!」
「ははぁーーーー!」(重臣一同)




