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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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衝撃の事実!

「あははは~♪…ほら、たっちゃんも(こう)ちゃんも、小一郎ちゃんも、もっと凛々しくこっちを見て!」


 いよいよ信長様よりお呼びがかかり、永禄3年5月18日、俺達は明日に控えた桶狭間の戦いの為、清洲城に出立しようとしていた!それを記念してか、今俺達は藤吉郎様を交え記念写真を撮っている最中である。


「ぶっすぅぅぅ~~……」


 何故か俺達が甲冑を着た姿になったとたん、藤吉郎様はかなり不機嫌だった!。


「何スネてんだい!この表六玉、たっちゃんらのめでたい初陣の門出だというのに、笑いなよ!」


「だ、だって…巽殿(どの)らは、殿(との)から立派な甲冑と馬を頂いたというに、わしは…」


 俺と浩一、小一郎様は武者姿で愛馬に乗っているが、藤吉郎様だけは時代劇にも出ている足軽ルックで陣笠と胴、そして長槍を手にしているだけだった。


「あははは~♪でも、あんたには足軽が似合ってるじゃない~♪まるでたっちゃんらの従者だねぇ~!」


(おねちゃん、それはあまりにも酷いんじゃ…)


「うぅ、いいのぉ~…いきなり甲冑に陣羽織…それに…名馬まで…わし泣きたい…」


「だったら、あんたも武功を立てればいいだけだろ!…しっかりしな!」


 まぁ木下家の頭首が足軽ルックじゃそんな気持ちになるのは当然だ…さすがに小一郎様も藤吉郎様に対しバツが悪そうな顔をしている…。

 将来は誰が見ても絢爛豪華な武具を身に纏う藤吉郎様だ、今はただ耐え忍んでもらうしかない…。


「そんなに落ち込まないで下さい、藤吉郎様!間もなく藤吉郎様にも日の目が訪れる日がやって来ますから、志を大きく持っていてください!」


「なんだか最近、巽殿(どの)の話が疑わしく思える…いいもん、わしよりも、もっとお(ぬし)らが出世すればいいんだもん!」


(やれやれ…そんなんだから、おねちゃんは……)


「えぇい、この表六玉はほっといてチェキするよ!…はい、[う~~み!]の口して~♪…」


(どっかで見た事あるセリフだな…)


 記念写真を撮り終えた俺達は、おねちゃんと仲様に火打石で厄除けの切り火をしてもらい、スネている藤吉郎様達に見送られながら清洲城へと出立した!。


(そういえば…(かえで)さんが居なかったな…)


 今でもしっかり(かえで)さんの柔らかい唇の感触が残っている…俺はそっと自分の唇を噛み締め脳裏に彼女の姿を浮かばせていた…。


(出来れば…(かえで)さんにも見送って欲しかった…)


 いや、それはあまりに虫のいい考えだ…彼女の同行を断ったのは俺自身…きっと彼女もそんな俺を見たくないのかも知れない…そんな俺の心境は、何故か切ない息苦しさを感じていた。


(かえで)さん…大丈夫、きっと帰ってくるから……ん?…!!…あ、(かえで)さん!)


 何気なく右側の小高い丘に目をやると、大きな(くすのき)の下で(かえで)さんは、小さく右手を振り俺達を見送っていた!そんな彼女の瞳は、きっと俺を見てくれているのだろう…。


「なぁ、淳一…まぁ何が切っ掛けかは分からんが、鈍感なお前もようやく気が付いたみたいだな!…」


 愛馬の[不知火(しらぬい)]を跨ぎ、浩一は俺に話しかけてくる…どうやら浩一は以前から(かえで)さんの気持ちを知っていたようだ…。


「な、何の事だよ?…」


「あの木の下で手を振っているあの子の事だよ♪…俺達に手を振っているように見えるが、視線はずっとお前を見ている…あんな純真で健気な子、他には居ないぜ…それに、嫁さんはすぐあの子がお前に恋をしていると見抜いていたようだけどな♪」


「た、たった三日間令和で過ごしただけでか?…」


「女の勘ってやつじゃないか?…あいつはお前とあの子が夫婦(めおと)になる事を望んでいるみたいだし…そろそろお前も独身貴族を卒業したらどうだ?」


「そ…それは…」


 そりゃ、俺だって武力では負けるが、あれほどの美女に好かれるのは悪い気がしない…しかし、浩一はまだおねちゃんの裏の姿を知らないからそう言えるのだ…。

 いずれは天下人の妻になる人と、あの電光石火のような大和飛燕流(やまとひえんりゅう)の伝承者、普段は水と油の関係だが、いざという時は最強ペアになったりもする…そんな二人に俺は囲まれているのだ…浩一の提案を[はいそうですね♪]と簡単に言えるわけが無い!。


「なんなら、俺と瞳で媒酌人になってもいいぞ♪…いやぁ~、あの子のウエディングドレスはさぞかし綺麗だろうな!」


「なぁ?浩一…その話は、織田家が美濃を取るまで待っててくれないか?…今度は信長様ではなく、藤吉郎様の立身を支えたいから…あの人はあんな風でも、俺にとっては命の恩人だから…」


「そうか…そうだな、まずは本当に勝てるかどうか分からない桶狭間の戦いに集中する事としよう…」


「…どういう事だ!浩一!」


「お前達がこの時代に戻る前、俺の言葉を覚えているか?…偽りの戦国時代をこの目で確かめたいと…」


「偽り?…な、何だよそれ!…!!…そ、そう言えば…浩一、お前…あの時、気になる事があるからと図書館に行ったよな?…」


「そうだ…その時に…ある事に気が付いたんだ……」


 浩一の推測はこうだった、俺がタイムスリップをしたのは史実上の戦国時代ではなく、何らかの力で時空に(ゆが)みが生じ、異次元の戦国時代に俺は現れたらしい、それがきっかけで令和とこの時代に繋がるトンネルが出来上がり、誰でも俺と手を繋ぎ高い所からダイブをした者は、この異次元世界へ飛ぶ事が可能になるという仮説だ…。


「別の次元の戦国時代?…」


「あぁ、まず、お前がこの時代に現れ、偶然その時代に生きる人間とコンタクトをとった事で、いきなり次元の流れが変わり、目には見えない力が働いて新しい歴史の道を歩み始めたんだ…それも、厄介な事に年号も歴史に登場する人物も史実と同じままでな…」


「なぜ浩一にはそれが異次元だと分かるんだ?」


「まずは(かえで)さんだ、剣術の歴史を紐解いて見ても、大和飛燕流(やまとひえんりゅう)なんて流派は存在しなかった…それに、この時代の人は大して気にはしていないと思うが、出生の記録に関しても俺達の次元にある書物と比べ、所々に誤差が出ているのも確かだ…」


「て事は何?…この時代は俺達が学んだ歴史とは別物で、何かしらの変化が起これば別の方向に歴史が進む可能性もあるって事か?」


「そうだ、すでにお前はここへやって来た時、未来の道具を藤吉郎様に見せた…460年先の道具をな…それだけでもう歴史が変わったんだ…となれば、織田信長の人生もこの先どうなるか知れたもんじゃない…」


「そうなると…藤吉郎様も[太閤秀吉]となる事実が消えてしまう可能性だってある?…」


「あぁ、それもゼロではない…流れによっては、明智光秀の時代になる事だって有り得るかもな…」


 いくら俺でも未来の道具をこの時代に出した事で歴史が変わったくらいは承知している、しかし、浩一の異次元仮説が正解だとしたら、本当に俺達の運命はどう転がるか予測不能になってしまう…。

 桶狭間の戦いで織田軍壊滅…その瞬間に歴史の力は暴走を始めるかも知れない…そして、俺達はその時代に存在していた形跡すら歴史によって消滅させられるだろう…。


「俺は、異次元にある日本の歴史を好き勝手に書き換えてしまったのか…ただの…電気屋の俺が…」


「だからこそだ、淳一!…俺達の力で、まず織田信長を桶狭間の戦いに勝利させ、美濃攻略、浅井長政との同盟、京上洛などを成功に導くんだ!…出来る限り、俺達の時代にある歴史と沿うように!そうすればこの世界でも大きな歴史の変化は防げると思う…」


「…浩一…」


「俺もこの世界の人が気に入ってるし、嫁さんの友人である[おねさん]の本来歩むべき人生を変えたくはない…それに、この先の織田家は殺戮の続く道が待っている、歴史書に残るような事件を変える事は出来ないが、犠牲者の数を減らす事なら異次元の未来から来た俺達にでも出来ると思わないか?」


「電気屋の俺達が?…敵国の大名を招いて、みかんを食べながら平和的に[こたつ会談]でもさせるつもりか?」


「ふふ♪二十世紀の電気屋技術を舐めてもらっちゃ困るぜ♪100年後、200年後、この世界の人達が安心して暮らせる為に、俺達が今から歴史の流れに一石を投じ平和な未来の(いしずえ)を作る!…はは、きっとこの世界の未来は、すげぇ~時代になってるかもな♪」


 電気屋二人がこの国の未来を導く…浩一の想像力はデカすぎて全く理解出来ないが、彼の説が正しければ(いくさ)で悲しい犠牲となる(たみ)は減るかも知れない…。


(しかし、そんな大それた事が電気屋の俺達に出来るのか?…いや、今は余り深く考えないでおこう…まずは、何が何でもこの戦いに勝たねば俺達の未来も消えてしまうのだから…)


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