信長様よりプレゼントが届いた
数名の使用人達がこの家の中に武具とやらの箱一式を運び込んでいく、それはまるで引越しセンターの人みたいに、次々と手際よく漆塗りの木箱を並べ始めた。
「なぁ淳一、武具って何だ?」
「さぁ…お、恐らく…戦の出発セットの事じゃないか?…」
「な、なんたる殿のお心遣い!…この小一郎、感激の極みでございます!」
よく見ると箱にはそれぞれの名前が墨で書かれており、どうやら信長様は俺達一人一人に[侍ハッピーセット]を与えてくれたようだった。
「どうやら無事到着したみたいですね!」
「欄丸様!」
「この武具一式は、殿から皆様へ、日ごろの礼にと用意していただいたものです♪」
「と、殿!あ、ありがたき幸せーーー!…この木下小一郎、身命を賭して励みまするーー!」
感極まった小一郎様は清洲城の方向に土下座をし、目に涙を浮かべてひれ伏していたが、俺と浩一は武具なんて一度も手にした事がないし、どう扱えばいいかも分からないので呆然と立ち尽している…これこそ正に[豚に真珠]である…。
(取り説なんてあるわけないよな…どうすんだ、これ?…)
「では、荷物が全部運び終えたようですので、皆の者!…巽殿達に出陣の身支度を!」
[ははっ!]
「え?…え?…欄丸様、これから出陣ですか!」
「いえ、念の為、甲冑の試着をしてもらいます、大きさが合わねば命取りにもなりかねませんので…」
「は…はぁ…」
「あははは~♪じゃ、うち、たっちゃんの着替えを手伝ってあげる~♪」
(いっ、それはそれで怖いんですけど…)
俺達は各々侍コスプレに身を包んでいく…いや、コスプレではなく、リアの甲冑を身に着けるのだ…まず[もんぺルック]のような衣装を着させられ、片方の肩から腕にかけては鷹狩りの人が着けているような生地を着用した…。
「それにしても、おねちゃんは甲冑の着せ方を御存知だったのですね…」
「え?…武家に生まれたらそのくらいは教え込まれるよ、まぁうちは藤吉郎の母上から習ったんだけどねぇ~♪」
笑顔で俺に着付けをしてくれるおねちゃんだが、着付けの影響かそれともワザとなのか、やけに自分の胸を俺の身体に当てているような気がする…。
当然今は薄い生地の着物を着けている状態なので、彼女の胸の感触は直撃で俺に伝わっていた…。
「そ、そんなにしっかりと着物は身に着けないといけないのですか?…」
「ん?…そりゃそうだよ…こうして……えい!…おなごが全身を使ってしっかり着付けなきゃ、戦場で動き回れないでしょ!…」
「なるほど、それもそうですね…」
どうやらあの衝撃シーンで俺の神経はかなり敏感になっていたようだ、今のおねちゃんは出陣する男に恥をかかせないよう、懸命に着付けをしてくれているのだ!。
なのに俺は、変な風に彼女を見ていたのが男として恥ずかしい!。
(男の煩悩とは、かくも情けないものだな…)
「ねぇ?…たっちゃんが見たい時には…いつでも見せてあげるからね❤…もし、たっちゃんが望むなら…うち、それ以上の事もおっけいだよ❤…」
そう小さな声で、おねちゃんは[ここの事だよ❤]と教えるように、また自分の胸を俺の背中に押し付けた。
(て、やっぱそっちの事かいーーー!!)
烏帽子から始まり、何やら各部を守るパーツを着けられた俺達は、生まれて初めて鎧兜の姿になった!。
ま!男として生まれたのなら、一度は武将の姿に憧れたものである♪それに、これはコスプレなどではなく、ガチ戦用なのだ!。
「ほう、淳一もそれらしく見えるじゃないか!」
「浩一もな!…それに小一郎様も!」
「と、殿から頂いた甲冑…な、なんたる勿体無き事…」
俺達全員、同じ甲冑かと思っていたのだが、信長様は各自それぞれの甲冑を用意してくれていた。
小一郎様は緑が主体で兜の[前立]には金箔のそろばんが施されており、いかにも小一郎様らしい兜だった。
浩一は黒が主体で、兜のメインとも言えるあのV形の[鍬形]は彼の名前らしく藤の花になっていた。
そして俺は、浩一と同じく黒が主体なのだが、[前立]は巽の[たつ]から取ったのか、黄金の龍になっており、[鍬形]は三日月のデザインだった。
「皆様、とても御立派ですよ!陣羽織もよく似合っておりまする!」
「ありがとうございます、欄丸様!」
やはり日本男児たるもの、甲冑姿になると男の血が昂ぶってしまう♪俺も浩一も[なんちゃって侍]だが、気持ちだけは戦国映画の主人公のようだった♪。
当然ながら浩一は自分の勇ましい姿を瞳ちゃんに見せる為、何枚も俺に写真を撮らせた…。
「では、皆様、次は表に出てもらえますか?」
欄丸様の指示通り俺達は甲冑姿のまま家の外に出ると、そこには2頭の馬が使用人に手綱を引かれ俺達の前に現れる!。
「ら、欄丸様?…この馬達は?」
「巽殿はすでに愛馬をお持ちですが、小一郎殿と藤本殿はまだお持ちでないとの事ですので、殿よりこの[不知火]と[霧雨]をお二人にとお預かりして参りました♪…どちらも名馬ですよ♪」
「し、不知火と…き、霧雨でござりますか!…な、なんたる勿体無き事…きょ、今日ほどこの木下小一郎、殿にお使え出来た事を嬉しく思った日はございません!」
不知火は栗毛、霧雨は黒鹿毛で、どちらも名馬にふさわしい立派な風格を備えていた…ま、飼い主の欲目で俺は松風の方がワンランク上だと思うが♪。
「淳一、どえらいもんを貰ってしまったが、こうなると信長様の期待以上の働きをしなきゃ、俺達の面目丸潰れになるぞ…」
「…分かってる…もう一度小一郎様と作戦の組み直しをするぞ…」
[おい、そこの甲冑武士ら!この家に何か用があるのか!…]
「え?…」




