かくれんぼ
清洲城の評定が終り、各自の役割も決まった…後は予定の日に信長様が動き始めれば、いよいよ桶狭間の戦の幕が開く…それまで俺のやる事は機材を入念にチェックしておくことだ。
浩一と小一郎様は桶狭間でいかに効率よく部隊を動かしていくか、天候・気温・兵の割り当てを入力し何度もパソコンでシュミレートを繰り返していた。
「たっちゃん、本当に戦が始まるんだね…」
「えぇ、これからこの日ノ本は戦に支配される国に突入します…どの国でも未亡人や孤児になる子供達が増えるでしょう…」
「なんでみんな令和の人みたいに楽しく出来ないんだろ…」
「まぁ、令和の時代でも大変な事は沢山ありますよ、物が高いとか、増税とか増税とか増税とか!…借金返済の利息とか!」
「時代が進んでも、色々悩みがあるんだね…ところで楓はどこに行ったの?」
「楓さんは森様の屋敷で欄丸様に剣術稽古をつけに行っています、夕刻までは戻らないそうで、何度も私に「勝手に一人で外に出ないでください!」と釘を刺されてしまいました…」
「そう…夕刻まで…ふひ♪」
「…ふひ?…」
何だかまたおねちゃんから不穏なオーラが漂い始めている…俺はあの日のおねちゃんの行動が頭に浮かんだのだが、今は小一郎様も浩一もこの家に居る、それに楓さんから一人行動は禁止されているのだから、彼女もそれは承知しているはず…。
しかし、おねちゃんの事だ、また何かしらの誘惑作戦を考えているやも知れない…。
「ねぇ?たっちゃん、あの覗き道具の[どろん]だけど…」
「べ、別に覗きに使う道具じゃありません!…それにドローンです!」
「そうそう、それ!ねぇ?その子、かなり遠くまで飛ぶ事が出来るんでしょ?」
「えぇ、半里ほどは…」
「あははは~♪凄いねぇ~、で、今!うち暇だからさ、その「どろーん]でうちとかくれんぼしよ♪」
「は?…かくれんぼ?…」
「そう♪たっちゃんが鬼役、うちが隠れる役、たっちゃんはこの家からうちを探すの、なら楓のムカつく命令を守ってる事になるでしょ♪」
「なるほど、これはいいドローンの練習になりますね!…よし、いっちょやりますか!」
どうやら思い過ごしだったようで、俺は彼女の要望を快く引き受けた♪今回のかくれんぼのルールはこうだ、必ずドローンが上空からおねちゃんを見つけられる場所に隠れる事、森や木の下、建物の中は禁止!それ以外ならどこにでも隠れてOKというルールだ!。
勝敗は互いに腕時計を着け、おねちゃんがこの家を出てから20分後に捜索開始、捜索時間は10分…それまでにおねちゃんを見付ければ俺の勝ち、時間オーバーなら俺の負け!と、極めてシンプルな判定である。
「あははは~♪…じゃ、行ってくるねぇ~!…果たしてうちを見つける事が出来るかなぁ~♪」
楽しそうにおねちゃんは家から出て行った、俺も子供の頃を思い出しながらファルコンを手にし裏庭へ出る、そんな俺達を晴天の空が迎えてくれた。
(最高の飛行日和だなファルコン♪)
常に整備しているのでファルコンのご機嫌も文句なし!これなら5分以内におねちゃんを見つける事も可能だろう♪。
(ふふん、おねちゃん!このファルコンは飛距離だけじゃないんだぜぇ~♪…かなりの高度まで飛翔出来るんだよ~♪…ワイルドだろ~?…今日のおねちゃんの着物は目立つ薄い桃色…俺の勝ちは確定だな!)
それから20分後、俺はファルコンとプロポに電源を入れる!。
(さぁ、飛び立て!ファルコン!おねちゃんを見付け出せ♪)
♪シュイィィィィィィーーーーーーーーン!!
高速でファルコンは上空に舞い上がる!とりあえず俺は50メートルの高度からおねちゃんを探し始める事にした。
(まずは東のエリアから行ってみるか…)
ちょうど東エリアの中心部あたりでファルコンをホバリングさせ、地上の様子をモニターで確認していく、しかしここは森があるエリアな為、おねちゃんの存在を見つける事は出来なかった。
(では、次、北のエリア…と)
正直、俺達の時代で[ドローンかくれんぼ]をすれば絶対つまらないだろうと思う…というか、規定が厳しく出来る場所もないだろう…。
(規定を気にしなくて飛ばせるのは気持ちいいな♪さて、このエリアにおねちゃんは……お!早速見つけた♪さすがはファルコンだな!)
どうやらおねちゃんは、徒歩10分程の小川に建ててある小さな水車小屋の裏に隠れていた、少し茅葺き屋根が邪魔だったが、彼女の着物が周りの地味な風景より目立っていたのですぐ発見する事が出来てしまった♪。
(さすが2022年製の性能だ♪今回はおねちゃんの負け!…さて、見付けた合図にファルコンをおねちゃんの前まで移動させるかな♪)
勝敗を決める合図はファルコンをおねちゃんの前に出現させる約束になっている、なので俺は上空からゆっくりとファルコンを降下させ、彼女を真正面からカメラのレンズに捉えた!。
(ふふ♪これが未来の技術ですよ、おねちゃん♪)
こんなに早く見付かった事に、少しバツが悪そうな顔をしているが、何故か彼女は辺りをキョロキョロ見渡している…。
(誰か近くに居るのかな?…いや、上空からは人の姿なんて見えなかったよな…)
どうやら周りを確かめて安心したのか、おねちゃんは少し口元を緩めファルコンを見詰めていた。
(降参したようだな……さ、ファルコンを帰還させ……いっっ!!…ちょ、ちょっと!…)
何故おねちゃんが辺りを気にしていたのかすぐ俺は理解した!。
それは彼女がいきなり着物の襟を広げ、その生地の下から二つの魅惑的でふくよかな果実を露にしたからだ!。
(な、何してるんですか、おねちゃん!…そ、そんな所で!…気が変になってしまったのですか!)
その後、慌ててファルコンを帰還させた俺は、帰宅したおねちゃんにこっそりとさっきの件を問い詰めると、彼女は八重さんの恥ずかしい姿の記憶を俺の頭から消す為に、この[かくれんぼ作戦]を計画したとの事だった…。
マジで女性の嫉妬は恐ろしいと思いながらも、日を追うごとに大胆な行動を始めていくおねちゃんに、俺は背筋から冷たい恐怖心を感じていた…。
(ほんと、色んな意味でファルコンのカメラを録画モードにしてなくて良かった…)
それからの俺はなるべく浩一の近くに居るようにし、小一郎様とのシュミレーションを見学していると、外から家の戸を叩く音が聞こえた。
[すみません、ここに居られる巽殿、藤本殿、木下小一郎殿に、殿から武具を預かってきました!]
(武具?…)




