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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第1章 えらくリアルな夢なんですけど(汗)

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浩一と再会

 その日の深夜…俺は藤吉郎様、おねちゃん、小一郎様に見守られながら庄内川の橋の上に立っていた。


(な、何!この川の幅の広さ…そ、それに…ちょっとこの橋の高さ、二階の屋根よりも高い気がするんですけどぉ~…マジ失敗したら土佐衛門決定じゃないか!!本当にこの橋で子供が飛び込んで遊んでいたのか?冗談だろ!!)


 今はまだ橋の<欄干(らんかん)>には立っていないが、そこからの高さだと恐らく5メートルはあると思われ、正直俺は命の危険を感じていた!。


(戦国時代でもこんな高さの橋が作れる技術があったんだな…にしても…こ、怖い…)


「そろそろ準備は出来たか?巽殿?」


「へ?…」


「御武運をお祈りしております、巽殿!!」


「へ?…こ、小一郎様?…」


「ひゅぅ~~♪たっちゃんは男の子~~!!ど~~ん!と武士らしく飛び込んじゃいな~♪」


「お、おねちゃん?…わ、私…武士じゃないし……」


「あははは~♪ほら、ほら、早くその欄干の上に乗った乗った♪」


「お、おねちゃん?…ま、まだ心の準備が……」


 よく高所恐怖症のタレントがバンジージャンプに挑戦させられるバラエティー番組を観て笑っていたが、今の俺はそのタレントの気持ちが痛いほど分かるし、その様な企画を考え出した制作会社の担当を呪いたくもなっていた!。


「さ、巽殿!お主も武士なら腹を斬る覚悟で欄干に乗るのじゃ!手伝え小一郎!おね!」


「いや、あの、藤吉郎様!わ、私はまだ武士では……あっ!……ちょっと!!……ちょっと待って!」


 男子二名、女子一名に担ぎ上げられた俺はとうとう欄干の上に立たされてしまった!!。


(お、わ!わ!…た、高い~~!…バ、バランスが取れない~~!!)


「また近いうちに会おうぞ!巽殿!!」


「無事、本懐を遂げてくださいませ!巽殿!」


「あははは♪行ってらっしゃ~~い!!…えい!!」


 ♪ドン!!


 まだ覚悟が出来ていない俺の背中を<おねちゃん>は嬉しそうに押した!!。


「わぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 ♪ドボン!!!


(うわっ、水面で腹を打って痛い!!水が冷たい…………俺、死んだかも………でも、死んだらこれで借金とかの心配は無くなるか………)


 ……………………

 …………………

 ………………

 …………

 ………


「う……うぅ~~~ん……」


(何だ?………白い天井に……白い蛍光灯………それに…薬品の臭い……)


「淳一!!おい!!淳一!…目が覚めたか?」


「ん?……あ、あぁ…浩一……久しぶりだな………」


 俺の左耳辺りから浩一の声が聞こえる……まだ意識が朦朧としている俺はこの場面も夢なのだと思っていた…。


「何言ってるんだ?お前が山本さん宅の屋根から落ちて6時間しか経ってないぞ!」


「そっか…6時間か………ちなみに…今は西暦1500年代だよな?…」


「はぁ?確か検査では頭に異常はないとドクターが言ってたけど、転落による一時的な記憶障害が起こっているのか?あのな、ちなみに今は西暦2023年、年号は令和5年だ!」


「そうなんだ…令和5年……………令和?……う!…うぉぉぉぉーーーー!!!戻って来たぁーーー♪やりましたよ、藤吉郎様!!」


「藤吉郎様?…おい、淳一!本当に大丈夫か?…俺の顔をよく見ろ、淳一!!」


 浩一は真剣な表情で自分の両手を俺の頬に固定し睨めっこを始めた!出来れば男同士でこんなシーンは見たく無いのだが…。


「おぉ!俺の親友浩一だろ?見飽きるほどその顔は見てるから……あれ?…じゃ、やっぱり俺は…ずっと眠っていたのか?……」


「まぁ…そうなんだが…それがな、妙な事が起こっていたんだ…」


「妙な事?」


「あぁ、検査後…まだお前が眠っていたので、俺は銀行と話をつけるために病院を離れたんだが、戻って来てみるとお前が病室から居なくなったと大騒ぎでさ、俺も心配になって探していたらいつの間にかお前がこのベッドで寝ていたんだよ…」


「へぇ~~…それってどの位だ?」


「さぁ?よく分からんが…恐らく1時間半位だろうか?…検査で異常がなかったので、看護士もそう頻繁に病室を覗きには来なかったみたいだ…ま、結果的にお前は傷一つ無く無事だったんだ!本当に幸運なヤツだよ!」


「すまないな…迷惑をかけて……え?傷一つも無いって?…屋根から落ちたのに?…」


「あぁ、それも奇跡だよ…」


 俺は屋根から落ちた後の経緯を浩一から聞いた、どうやら転落した俺は運よく庭の松の木の枝に当たり、更に地面の芝生の上に背中から落ちたお陰で頭にもダメージがなかったそうだ!。


「なかなか淳一は強運の持ち主のようだな♪」


「それは有り難いが、出来れば運は運でも金運の方が…!!…やば、浩一!今日融資の返済日だった!!まずいな、もう営業時間も終わってるだろうし!」


「それは何とか俺が嫁さんに金を借りて払っておいたから、今は経営の事は忘れてゆっくり養生しろよ!今後の検査で異常がなければ明後日には退院出来そうだしな!あ、医療費も気にするなよ!ちゃんと嫁さんから貰ってきてるからな!」


「何から何まですまん……俺がもっとしっかりしていれば………」


「俺達親友だろ?気にするなよ!」


「あぁ…なぁ?浩一?……俺さ、もの凄いリアルな夢を見ていた………」


「リアルな夢?」


「あぁ…実は……」


 どうせ明後日まで俺は入院コース確定で仕事は出来ない、となると時間は腐るほどある!俺は尾張の峠で木下藤吉郎と出会い、庄内川で<おねちゃん>から川に突き落とされたまでを浩一に話した。


「ははは、中々愉快な夢じゃないか!人が心配しているってのに、悠長に戦国時代を歩くロープレゲームの夢を見てるなんてな♪」


「でもな、マジで足は痛かったし、お茶や餅の味までリアルに感じて………ん?……」


「どうした?淳一?…」


「いや、俺……今、気が付いたけど…右手に何か掴んでる……」


「はぁ?…靴下か何かか?」


「違う…もっと硬いやつ……」


 俺は浩一の見ている前で右手を開いて見せた!。


「じゅ、淳一!!!こ、これは小判じゃないか!!それも……お、帯び付きの!!」


「え?…え?…お、俺…何でこんなを持ってたんだ?俺、山本さん宅に不法侵入してなかったよな?」


「アンテナ工事するのに家の中入るわけないだろ!!ちょ、ちょっと待て!!落ち着いてゆっくりもう一度小判を確かめよう!」


 俺と浩一はまるで珍しい昆虫を捕まえたかのように手の平に乗っている小判を見詰めた!純白の和紙で出来た帯…その帯にはしっかり織田家の家紋が印されており、眩いほど小金色の光沢が小判から放たれていた!。


「ま、まさか俺を騙してるなんて事は無いよな?淳一?…メッキのおもちゃなんだろ?」


「親友のお前にそんなアホな事をするかよ……」


「じゃ、なぜ…織田家の家紋が小判に?………どうしてそれをお前が持ってる?」


「分からん!ただ言える事は…そんな夢を見ていたという事だけだが……」


「ま、まぁとりあえずこの続きの話は後にしよう!まずはこの小判が本物かどうかで話は変わってくる!今の時間は………よし、まだ近くにある買い取り専門の貴金属店は開いてるな!淳一、少しこの小判を借りていいか?鑑定してもらってくる!」


「別にいいけど、浩一!もし買い取ってくれるならそのまま売って現金に変えてくれ!その金でお前への借金を返せるし!」


「そうか、じゃその通りにしてくる!」


 こうして浩一は病室から飛び出し、一人残された俺はこの現状を冷静に考えた。


(あの小判…間違いなく俺が信長から頂いた小判だ…となると、本当に俺はタイムスリップしたって事が実証されたわけだ!……あれ?俺が病院に担ぎ込まれてまだ6時間弱…で、俺自身病院内で行方不明になった時間は約1時間半位…となると、落ちた瞬間にタイムスリップした訳じゃなかったのか…ん?…待てよ、戦国時代に居た時は3日は経っていた…え?…やば!…この時代の30分は戦国時代の一日か!…げっ!それだけタイムラグがあるって事か!!)


 これは非常にまずい事態になった!この後、病院食の夕飯を食べ、のん気に野球中継を見てから就寝し、明後日の退院まで養生したとなれば、藤吉郎様の時代ではかなりの日数が経ってしまっている!。


(絶対、木下家は信長の逆鱗に触れてしまうぞ…これは何とか早く戦国時代に戻らないと!!)


 俺は藤吉郎様との約束を守る為、急いでベッド周りにあった自分の持ち物を片付け、即日退院の準備を始めた!。


「おいっ!おいっ!…淳一、凄い事になったぞ!!………て、お前……何してるんだ?…」


一時間ほどで浩一は血相を変えて病室に戻って来たが、退院準備をしている俺を見て入口前で固まっている。


「今すぐ退院する!!俺は藤吉郎様との約束を守る!!」


「え?…そ、そう…なのか…また戻りたいのか?」


「何だ?浩一…俺の言葉を鵜呑みにして?…また頭がおかしくなったとか言わないのか?」


「い、言える訳ないよ!…あ、あのな…淳一!…か、鑑定の結果…本物の小判だった!…状態も最高級で…1枚…27万円…合計270万で買ってくれた……こ、これが…その金!!…」


 浩一は手を震わせながらポーチを開きその中に押し込まれている札束を俺に見せた!。


「マ、マジ…かよ!……1本300円で売ってた在庫のペンライトが……270万円!!」


「あ…あぁ……正直…こんなにビビッたのは初めてだよ……淳一、もう俺はお前から何を打ち明けられても疑ったりしない!…お前さ、本当に戦国時代にタイムスリップしていたんだよ!」


「そ、そうだと思う……浩一以外の人に言えば100%大笑いされるけど…俺、マジで戦国時代に行ってたんだよな…」


「そうだよ!お前…トンでもない経験をしたな!これで暫くは借金に悩まなくて済むじゃないか!良かったな!」


 浩一はポーチから金を出そうとしたが、彼から売値を聞いた瞬間、俺の心はすでに決まっていたのでそれを制した。


「どうした?これは淳一の金だぞ…」


「悪いが浩一…俺、もう一度戦国時代に戻らなければならない…もしかすると、もうこの令和には戻れないかも…だから、その金の半分は浩一が受け取ってくれ…もう半分は毎月の借金返済に……」


「お前…やはり、またあの時代に戻るつもりか?…殺し合いが当たり前の時代だぞ!」


「分かってる…でも、俺は木下藤吉郎を助けたい!そして…(のち)の太閤秀吉になって欲しい…」


「でも…どうやって戻るつもりだ?」


「それはもう実証済みだ!だから、少し俺に力を貸してくれ!浩一!!」


 浩一は俺の顔を見ればどれだけ本気かどうかすぐ理解してくれる!そして彼は何も言わずポーチの口を閉めた…。


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