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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第5章 桶狭間

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軍議が始まった

 ようやく家臣一同を静まらせた信長様は、堂々と座布団に座ると同時に俺達の紹介を始めた。


「よいか、あの一番左に座っておるのは木下小一郎!…藤吉郎の弟じゃ、欄丸!あれを皆に配れ!」


 [ははっ!]


 欄丸様は用意していたA4用紙を家臣一同に配り始める、それは桶狭間の地形を詳細に記した標高図であり、小一郎様が丁寧に作り上げたものだった!。


(プリンターって予想以上に消費電力が必要だったな…浩一が令和から高性能ポータブルソーラー充電器を持って来てくれて助かったぜ…確か販売価格は22万だったかな…これも当然売れ残りだったが…)


「おぉ、殿(との)、これはまた見事な地形図ですな…この勝家、これほどの図は見た事がございません!」


「じゃろ、これはあの小一郎が作成した標高図というものじゃ!…」


「となると、殿(との)は桶狭間で今川を迎え撃つと?…」


「いかにも!軍勢の差が歴然としておるのじゃ、地の利だけでも活かさねばこの(いくさ)は負ける!その為に、わしは小一郎に命じ桶狭間の標高図を詳細に作らせていたのじゃ!…小一郎、この図の見方(みかた)を皆に説明いたせ!」


「ははっ!」


 小一郎様は、地図から高さを読み取る等高線や標高数値などの利用方法と、等高線から最初に知りたい位置の高い方と低い方の等高線の調べ方についても誰一人落ちこぼれさす事無く講義を行った。

 ま、その間、他の家臣達も足を崩し講義を受けていたので、俺達の正座苦行も解放されたのは言うまでも無い♪。


「皆の者!小一郎の話は理解できたか?」


 [ははぁ~~~~~!](家臣一同)


「では次に、巽淳一!前へ!」


「は、ははっ…」


 まるで転校生になったような緊張した気分で、俺は家臣団の冷ややかな視線を感じながら信長様が座っている[一の段]の前に立った!。

 俺とこれまで拘わった事のない者は(誰?こいつ?)と、きつい視線を俺に向けている。


「皆よく聞け!こたびの(いくさ)にて、織田家の参謀の筆頭はこの巽淳一とする!」


 当然ながら、この信長様の一声(ひとこえ)で広間内がざわついたのは極普通の現象だ…というか、当の俺もその話は聞いてなかったのだが!。


「の、信長様…そのような話は聞いておりませんが…」


「今朝決めたのじゃ!…知らんで当然じゃろ、巽よ、しかとこの織田家を勝利に導け!」


「えぇーーー!!」


「と!殿(との)、御乱心なされたのですか!…そ、その様な新参者(しんざんもの)を参謀などと!…殿(との)は織田家を滅ぼすおつもりですか!」


「くどいぞ、成政(なりまさ)、わしが決めたのじゃ!」


成政(なりまさ)殿(との)の御決断にまだ異を唱えるか?ならば、この勝家が受けてもよいのだぞ!」


「う…ま、まさか…勝家殿(どの)が…そこまで……ははっ、か、畏まりました…」


 どうやら勝家様は俺達側に付いてくれている事を皆理解したのか、それからは誰も反論を出す事はなかった、ただ…間違いなく失敗すれば問答無用で俺に斬りかかるのはこの男だろう…。


(あ、足軽頭の俺が参謀?…と、トンでもない事になってしまった……あぁ、もっと孫子や三国志の本を読んでおけば良かった…)


「では、次に!…藤本浩一!前へ!…巽は下がれ!」


 俺とすれ違った浩一は一瞬だけ俺の顔を見た、きっと俺の顔が蒼白になっている事に気が付いたからだろう。


「皆の者、この男は摂津の国から来た[藤本浩一]、こたびの(いくさ)において当家の与力となり参戦してもらう!」


 さすがに佐々成政(ささなりまさ)も二度勝家様から恫喝された事で、浩一の紹介の時は異を唱える事はなかった、それにしても浩一を紹介している信長様は、何だかウキウキと楽しそうな表情を浮かべているのが気になる…。


「よいか、この藤本は南蛮の道具に長けておる!…今からお(ぬし)らにその証拠を見せてやる♪…藤本、欄丸と共にあれを用意いたせ♪」


「ははっ!」(浩一&欄丸様)


(あ、なるほど…そういうわけか…)


 浩一と欄丸様はそれぞれ段ボール箱を抱えてこの広間に戻ってきた、それを信長様の前に置くと浩一だけ静かにその場から退いた。


「今から名を呼ぶ者はわしの前に出よ!…柴田勝家!」


「ははっ!」


 勝家様が信長様の前に出ると同時に、欄丸様は箱から中身を取り出しそれを信長様に手渡した。


「これを持て、勝家!」


「は?…この小さき箱のような物はなんですか?」


「それは後で伝える♪…次、丹羽長秀!」


「ははっ!」


 こうして次々と信長様は欄丸様から手渡された道具を、家臣の中でも重臣と言える者にだけそれを与えていく。

 で、その道具とは、時間のかかる伝令役の必要が無いトランシーバーだ!。


「よし、重臣達に手渡ったな♪」


 「殿(との)、これは…何の箱でございますか?…」


「ふふ、よいか、しばし待っておれ♪」


 信長様は自分用のトランシーバーを手にしたままこの広間から出て行ってしまう、何が何だか分からない家臣団は信長様の奇妙な行動にざわつき始めたのだが、俺と浩一だけは当然ながら冷静だった。


[ザ、ザ…皆の者!…わしは、織田上総介(かずさのすけ)信長である!…皆、わしの声を聞こえておるか!]


「うおっ、こ、この箱の中から殿(との)のお声が!…い、いつの間に殿(との)はこの箱の中に入られたのじゃ!」


 重臣達のトランシーバーから信長様の声が響き、さすがの柴田勝家様もビックリ仰天したようだ♪そんな中、笑いながら信長様がまたこの広間に戻って来た!。


「わははは!どうじゃ、すごかろう!…これは[とらんし~ば~]と言ってな、ここに居る藤本が遥か南蛮の国から仕入れてきたのじゃ!…この道具は、瞬時に遠く離れている相手に言葉を届ける事が出来るのじゃ♪」


「ほう…瞬時に離れている相手に言葉を……!!…な、なら殿(との)!…これを使えば伝令の者を出さずとも、殿(との)からの下知が瞬時に届くという事ですな!」


「いかにも勝家!…(いくさ)(とき)との勝負じゃ!…すでに我らはそれを手にしておるのじゃ!今川義元など恐れるに足らぬわ!…藤本、この[とらんし~ば~]の扱いを皆の者に伝授いたせ!」


「ははっ!」


 浩一が重臣達にトランシーバーの扱いを教えている間に、小一郎様は他の家臣を相手に桶狭間の地形を講習していた、それを嬉しそうに見詰める信長様、この俺達の行動で織田軍、今川軍、双方の犠牲者が減ればいいのだが…。


(俺達…これから戦争に参加するんだよな…ミサイルや機関銃は無いけど…国同士の命運を賭けた戦争に…)


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