浩一がこの時代にやって来た!
小雪を柴田勝家に譲ってから数週間が経った頃、俺は約束の日に浩一をこの時代に連れて来ていた、本当は浩一を心配した瞳ちゃんも同行を願い出たのだが、今回は戦関連なので浩一の安全を彼女と約束し遠慮してもらった。
そして今、俺は浩一を織田信長に紹介し終え、二人で帰路についている最中だ。
「淳一、あれが織田信長か!…大河ドラマとは違い、マジで威風堂々な男だったな!…俺さ、こんなビビッたのは初めてだったぜ…」
「俺も最初会った時は殺されるかと思ったよ…でも、浩一が準備してくれたアイテムのお陰で、ここまで織田家から信頼してもらえるまでになったから、本当にサンキューな浩一!」
「いや、お前の話術と努力の成果だよ♪銀行の言い訳スキルが大いに役に立ったな!…しかし、缶コーヒーを飲みながら話をする織田信長はちょっと笑えたな♪」
「ははは、俺はもう慣れたけど…それに…なるほどな[銀行言い訳スキル]か…恥ずかしながら、全くその通りだな…」
「にしても…城下町はともかく…郊外に出ると、ほんと村と畑しかないんだな…戦国時代って…ま、時代が時代なだけに当たり前だけど…何だかこの風景を見ていると毎日が日曜みたいにのどかだな…」
「あぁ、でも…これからはどの国も天下を狙い動き始める…そうなれば国の民衆こそいい迷惑だ…」
俺達が住む都会では殆ど見る事が出来ない澄み渡った青空を眺めながら、徐々に忍び寄る戦の影を感じ始めていた…。
そんな俺とは裏腹に、浩一はまだこの時代に来て間もないからか、いたる所で写真を撮りまっくている。
「なぁ浩一…このくらい風景なら令和の時代でもあるだろ?…何が珍しいんだ?」
「馬鹿だな、あの農作業をしている人を見てみろよ、あの姿で作業している人は令和に居ないぜ!」
「あ、なるほど…よく観察しているな…」
同じ令和の時代で過ごした者がこの戦国時代に居てくれるだけで俺は心強かった♪。
一人の知識より二人の知識が重なれば効果も倍増する!信長様も浩一の知識に関心を持たれたし、後は織田家の重臣達が俺達をどう受け入れるかが次の問題だろう…。
(すでに今川の軍勢が三河付近にまで押し寄せている情報が来ている…間もなく信長様も今川勢を迎え撃つ為に動き始めるだろう…)
「ただいま戻りました!」
「おぉ、巽殿、藤本殿、お帰りなさい!」
真っ先に出迎えてくれたのはおねちゃんでも仲様でもなく、小一郎様だった!まぁ、彼の目的は俺ではなく…。
「あの、藤本殿!…この桶狭間の地形を立体化なる図にするには、どうすればよろしいのか御指南をお願い致します!」
浩一が木下家に来てからは、小一郎様は更にパソコンのスキルを上達させていき、浩一を[師]と仰ぐほどであった。
「あぁ、これですか、これはまずツールから、次に…」
「あははは~♪浩ちゃんが来てから、たっちゃんは用済みになったねぇ~♪」
「まぁ私も浩一にパソコンを教わったくちですので…はは…」
「主…いよいよ今川勢が三河に……」
「えぇ、今日清洲城で信長様より聞きました…」
「…どうあっても、私は主と共に出陣出来ないのですか?」
淋しそうな瞳で彼女は俺を見詰めていたが、やはりこれからの未来は彼女に人斬りをさせたくない!これまで手にかけた人々を供養し、健全なる剣術としての大和飛燕流を継承して欲しいのだ…。
「主、私に策がございます…私が近くの村娘に化け、踊り子と称し今川勢の宴に紛れます、きっとそこには必ず今川義元も居るはず…そこで私は隙を見て義元の首を取ります!これなら織田家も今川勢にも義元以外、死者は出る事がないでしょう…主、私の大和飛燕流なら可能です!」
「……いえ、必ず死者が出ます……」
「私が義元以外、死者は出しませぬ!」
「出ます!…それは、楓さん…あなたです!…義元の首を取った後、どうその場から逃げるのですか?…いくら大和飛燕流とはいえ、数百の兵に囲まれれば無理ですし、そのような策は主として認めるわけにはいきません!」
「…あ…主……くっ……」
両手を握り締め、下唇を噛んで彼女は悔しそうな表情を浮かべていた…きっと彼女は女性に生まれて来た事を後悔しているのかも知れない…だからこそ、俺は血生臭い戦場に彼女を立たせるわけにはいかなかった…。
「楓、たっちゃんの言う通りだよ、もし楓が居なくなったら…うち、誰と喧嘩すればいいのよ?…そりゃ、うちだって武士に生まれていれば戦で一旗あげたかったよ、でもうちらはおなごなんだし、主人の帰りを待つのも立派な役目だと思う…」
「おね殿…」
いつもは超が付くほど能天気なおねちゃんだが、こんな時の彼女は本当に頼りになる♪出来ればいつもこうあって欲しいのだが…。
「ほれ、楓、今夜の食材を買出しに行くから、うちと一緒においで!」
「はぁ…しかし…主から離れるわけには…」
まだ納得出来ない楓さんは、また淋しそうに目を潤ませ俺を見詰めていた。
そんな色気のある瞳で俺を見詰めたのだから、やはりおねちゃんが黙ってるはずがない!。
「いいから!ここには大勢居るし安心だ!…ほら、あんたの好きな団子も買ってあげるから、さっさと行くよ!」
「行っておいでよ、楓さん、たまにはおねちゃんと買い物するのもいい気分転換になるよ!」
「は、はい…主がそう言われるなら…」
ほぼおねちゃんに手を引かれた状態で彼女は買い物へと出かけて行った、そんな彼女らとすれ違うかのように、しばらくすると藤吉郎様が帰宅し一人で昼食を始めている。
(さて、浩一はパソコン教室中だし、俺は機材の調整とドローンの点検を始めるか…)
俺達の働きでこの戦の命運が決まる…失敗すれば当然命は無い!。
俺に出来る事はどんな機材トラブルが起こっても、すぐに対処できるスキルを身に着けておく事だ!。
「よし、始めるか!」
俺は充電済みのドローンを箱から取り出し、この時代にあった偽装を紙で作り始めた…。




