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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第1章 えらくリアルな夢なんですけど(汗)

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令和の時代に!

 昨日から歩き尽くめ+(プラス)睡眠不足と命の危機が俺の疲れをピークにさせ、中村に向かっている道中も俺は藤吉郎様からかなり離れて足を引きずりながら歩いていた。


(はぁ~、はぁ~…次この時代に来る時はオフロードバイクも持参したい…50ccでいいから…)


「ね、ねぇ?……た、たっちゃん?…」


「はぁ~、はぁ~、はい~~?……」


「足、痛いのかい?」


「ま、まぁ…昨日から一睡もせず歩きっぱなしなもので……」


 こんな俺の状態を心配してくれる<おねちゃん>は、ずっと歩調を合わせ歩いてくれていた。


「そう、休みたかったらすぐに言うんだよ…」


「ありがとうございます……いつもお優しいですね<おねちゃん>は…それを伝える為に声をかけてくれたんですね?」


「ま、まぁ…それもあるんだけどさ……」


「他にも何かあるのですか?」


「うん……」


 珍しくあのイケイケパリピの<おねちゃん>が話し難そうにしている…そんな<おねちゃん>にどう対応すればいいのか分からない俺は黙ったまま歩き続けていた。


「あ、あのさ!さっき、うちの人にこの時代に戻る<証>を預けるって言ってたじゃない?……」


「はい、それがどうかしましたか?」


「そ、そのね………何だかたっちゃんに無理させてる気がしてさ…本当は元の時代に戻れたんなら、もうこの時代の事を忘れて生きるべきだと思うけど……で、でもね……う、うちも……たっちゃんに帰って来て欲しい…」


「おねちゃん…」


「い、今…ちょうどうちの人と距離が離れてるから言うけどさ………お、おなごの口からこんな事を言うのは恥かも知れないけど……たっちゃんがうちの人に約束の証を渡すのなら、うちはたっちゃんがこの時代に帰りたくなるような御褒美をあげたい……ま、それはたっちゃんの気持ち次第なんだけど…」


「御褒美…ですか?」


「う、うん……もし、ちゃんとこの時代に戻って来てくれたら……あの人が居ない時に…う…うちの身体を…す、好きにしていいよ……あ、あの人の使い古しの…か、身体だけどね……」


「えっ!!!」


「そ、その………う…うちは、たっちゃんが求めてくれたら……い、いつでもいいから!」


「い!!!…お、おねちゃん?…」


「あ、あははは♪う、うち…な、何言ってるんだろね!……あ、あははは~!!」


 そう俺に<もの凄い御褒美>を伝えた<おねちゃん>は、頬を赤らめ笑いながら足早に先へと歩き出したが、俺は今にも恐怖で卒倒しそうになっていた!!。


(ぜ、絶対…俺の未来の人生は処刑で終わってしまう!!)


 本来、女性にそんな事を言われれば男として喜ばしい事なのだが、そのお相手は<天下人>の奥さんなのだ!俺に好意を持ってくれたのは素直に嬉しい…しかし!それ以上に自分の命の方が大事である!。


(またやっかいの種が出て来たじゃないか……この時代は俺に安らぎを与えてくれないのか!)


 だが、やはり俺も男だった…<おねちゃん>からの衝撃な告白で、つい先を歩く彼女の後ろ姿に視線を向けてしまうのは男の本能がそうさせてしまうのだろう…。


(アホか俺は!…まだ未来に戻れるかどうかも分からないんだ!今は信長からの主命に全てを集中しなければ!)


 それから一刻ほど歩き<中村>に到着した俺達一行は、藤吉郎様の生家で小一郎様の着物を返却し、更に彼を交えこれからの行動を協議していた。


「なるほど…あの<ぺんらいと>を100本ですか……それはこの時代では厳しい主命ですね…」


「そうなのじゃ小一郎……ついわしが調子に乗ってしまい安請け合いをしてしもうたのじゃ…とほほ…」


「兄上、今さら過ぎた事を後悔しても元には戻りませぬ、今一番大事なのは巽殿が未来に戻れる方法を思案するのが先決です!」


「うむ、でだ…おねの案でな、巽殿がここに来た状況を再度作ってみてはどうかと言っておるのじゃ!」


「…巽殿をこの茅葺屋根から落とすのですか?」


「いや、それはあまりにも危険すぎるのでな、わしの家の近くにある川の橋から飛び込んでもらう算段をしておる!」


「あの庄内川からですか?…あぁ、そういえば少し橋桁の高い橋がありましたね…あの川なら深さもあり安全と言えば安全ですね…うん、いいお考えだと思いますよ!やりましょう!」


 俺はまた元の時代の作業着姿に戻ると、天下に名を残す木下兄弟の会話を囲炉裏の前で座りつつ、ぼんやり彼らのトンでもない結論を聞きながら火箸を見詰めていた。


「あははは♪へぇ~~、その着物がたっちゃんの時代の着物なんだぁ~♪やっぱ珍妙だねぇ~!」


 あの道中の告白姿とは打って変り、彼女はいつもの<おねちゃん>に戻っていた、まぁすぐ前に旦那様が居るのだから当然と言えば当然の振る舞いだ。


「さぁ、さぁ、話しが済んだのなら、この<草餅>でも食べなされ♪」


 優しい笑顔の仲様(おばちゃん)とパリピの<おねちゃん>はお茶と草餅を俺達男衆に出してくれた。


「あ、ありがとうございます…お、おばちゃん…」

(やっぱこのお方を<おばちゃん>と呼ぶのは寿命が縮む!…)


「おぉ♪母ちゃんと<おね>の草餅か!遠慮なくいただこう♪」


 今俺は<豊臣ファミリー>に囲まれ<草餅>食していた!関白・大納言・大政所・北大政所と<歴オタ>が知れば涎が出るほど羨ましがるオールスター達とだ!…。


(こんな凄い経験をしたんだ…もし、俺が川に飛び込んで未来に戻れず死んだとしても…あ、そうだ!)


「あの、藤吉郎様!」


 俺は昨夜信長から頂いた100両を藤吉郎様に差し出した。


「な、何じゃ?それは殿が巽殿にお与えした100両ではないか!」


「これを藤吉郎様に納めて頂きたく!」


「な、何を言っておる!それはお主の功ではないか!」


「そうだよ、たっちゃん!そんな水臭い事は無しだよ!」


「いえ、こうしてまだ私がこの時代で命を落とす事も無く生きていられるのは、藤吉郎様と出会えたからでございます!万が一、この時代に戻れない場合は…これを私の形見に……」


「ならぬ!!わしも、おねも、母ちゃんや小一郎も、巽殿が戻って来る事を信じておるのだ!<万が一>等と考えず、必ずわしらの元へ戻って来ると信念を持って欲しい!」


「藤吉郎様…」


 いつも飄々としている藤吉郎様がいつにも増して真面目になっている、つい俺も藤吉郎様の気持ちを肌で感じ取ったのか、真剣な表情で彼の顔を見詰めた。


「わしは戦場で何人もの友を失った……わしは友の巽殿を失いたくはない……そうじゃ!確か巽殿は約束の証をわしに渡すと申していたな…よし、なら90両わしが預かっておく!なので、必ず残りの金を取りに来るのじゃ!」


「たっちゃん…あんたが戻って来なかったら、うちらもどうなるか分からない…あのね、たっちゃん…うちはたっちゃんと旦那が信長様の元で大出世していく姿を夢見てる…だから、うちの夢も叶えて欲しいんだよ…」


「おねちゃん…」


「私もです、私は兄上と巽殿の立身の支えになりたく思っております!それに、もっと巽殿から未来の勉学を学びとうございます!」


「小一郎様…」


「ほっ、ほっ、ほ!こりゃ戻って来るしかないね、巽様…人として生まれてきて、一番誇れる事は誰かのお役に立つ事…人は一人で生きてはいけん…誰かを支えながら、自分も支えられていると自覚する中で、互いの信頼が深まる…おばちゃんも巽様がこの時代で人様のお役に立つ事を願っているよ…」


「お、おばちゃん…」


 歴史上これほど<豊臣家>の信頼を勝ち取った武将いえば、俺の記憶の中では徳川軍の<島津忠恒(ただつね)>が<日の本一の(つわもの)>と賞賛した<真田幸村>しか浮かばない…そんな大人物と町の電気屋でしかない俺が肩を並べるなんて、時代が時代ならSNSの炎上は確実だ!!。


「必ずや帰って来てくれ!巽殿!!」


「は、はい!!な、何が何でも皆様の前に戻ってきます!!」


「よし、ならば決行は今夜にいたす!!昼間は人の目があるのでな!」


「兄上、私も同行いたします!」


「うむ!それでよいな?巽殿?」


「はい!!必ずや藤吉郎様のご期待に応えまする!!」


「おぉ、頼もしい限りじゃ!信じているぞ、巽殿!!」


 真田幸村の名前が浮かんだからか、俺は大河ドラマの主人公になった錯覚に襲われ、恥ずかしながら<大阪夏の陣>に向かう幸村のような気持ちになっていた!。


「あははは~♪うちもたっちゃんがドボ~~ン!!と、川に飛び込む所が見たい~~♪」


「へ?」


<おねちゃん>の軽い言葉で、俺の勇ましく出陣していく<幸村モード>が一気に吹っ飛んだ!それもそのはず、本物の真田幸村は何万の兵士を率い戦場へ向かうのだが、俺は「やぁーー!!」と言って単身橋から川に飛び込むだけ!そんな彼女の一言は十分俺を現実に戻してくれた…。


「ど、どうぞ…御自由に…おねちゃん…」


「あははは~♪やったぁ~~~♪見事にドボ~~ン!と飛び込んでねぇ~~!!」


 この時!俺は再度この時代に戻って来たら、マジで<おねちゃん>からの御褒美を強引に頂こうかと思ってしまった!!。



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