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何十年先の未来で、私の言葉がいつかお前の胸の内を照らす光となればいい

気づけば、琉宝は壽星の腕の中でぽかんと口を開けていた。


それも仕方ないこと、琉宝の大きな瞳がパチリと一つ瞬くたびに、自分の目の前で祖母の姿が若返っていったのだ。


絹のような白髪が眩く艶のある豊かな黒髪へと変わると同時に、年を重ねてできた深い皺が張りを持ち直していく。

 祖母の笑う様に下がっていた目尻が凛と持ち上がり、今まで耳になじんでいた声色が甲高くうら若い女性の声へと変っていった。

 

目の前で見ていなければ、この美しい女性が自分の祖母だとは絶対に気づけなかっただろう。



「おばあ、綺麗さぁ。」


「琉宝?なにぃ急に、このこは。」


「だって、だって、綺麗なんだもの!」



腕の中で目を輝かせてそう言う孫を見て、壽星は「もしや」と思い琉宝に尋ねた。



「お前の目に映る私が違って見えてるのかい?」



壽星がそう問うと琉宝は「おばあが綺麗な女の人になった!アンマーより若いさぁ!」と目を輝かせて何度も頷いている。


壽星は琉宝の腕の中にいるブーイに目をやると、「ワンの力と琉宝の力が混じっているんだね。」と言って口元を緩めた。

ブーイは壽星の身体から溢れる気の流れと、琉宝の人神としての温かく柔らかい神気に包まれて気持ちよさそうに目をつぶっていた。

生まれた時代が違っていれば、人神に選ばれたのは壽星かもしれない。

それほどに、壽星の力は強かったといえる。

その二人の力が混じった今、壽星は己の身が過去の記憶の中にある自分の姿へと引っ張られているのだと気づいた。


この時、壽星は思い返していたのだ。

まだユタとしては年齢も経験も未熟だった頃の自分のことを。



「琉宝」


「なに、おばあ?」


「今から話すことは大切な話。」


「大切な?」


「ああ、これは私と私のおばあの話さぁ。」


「おばあの、おばあ?」



琉宝の言葉に、彼女の瞳の中の壽星が柔らかく笑った。

その愛しさを含んだ瞳に、琉宝はドキリと胸が高鳴った。

壽星は、思い出すように大事に言葉を紡いでいく。



「…そう、わたしの大切な人。先を導く師であり、愛を教えてくれた祖母であり、そして…私の知る上で最も大気と植物、そして生き物に寄り添った人だった。」


「おばあもスゴイさぁ!」


流星の心からの言葉に、壽星は屈託なく笑って孫の頭を撫でた。

琉宝のさらさらとした髪の毛を指先で感じながら、壽星はさらに昔の記憶を思い返していた。



「ふふふ、ありがとう。そう言ってくれる孫がいて私は本当に幸せ者だ。

でも、私は昔…本当はユタになどなりたくなかったのさぁ。」


「ええ!おばあが!?」


「ああ、いつも祈りの時間になると家から逃げ出さして、友達と海に行ったり遊んでばかりいたさぁ。」


「信じられん…おばあが、祈らないなんて」



琉宝が信じられないものを見るような目で若い姿の壽星を見た。

それもまた理由があり、琉宝にとって祖母は気づけば何かに祈っている人だったからだ。

祖母にとって祈りとは呼吸をするのと同じくらい大切なことなのだと、琉宝の母であり壽星の娘である悦子は口癖のように言っていた。


ー そんな、おばあが祈らない!?


琉宝の顔にでかでかとそう書いてあるのが見えた壽星は、その焼けた肌とは対照的な白い歯を見せて面白そうに笑った。



「ふふふ、どこかの誰かさんみたいだろう?」


「わんは!…たまには祈るよ。」



日頃の自分を思い返し気まずそうに目線を下す琉宝に、壽星は気にすることなくまた優しく頭を撫で始めた。



「良いのさ、琉宝もいずれ分かる。焦らなくても良い、なぜなら…祈りはね、ちゃんと向き合うものだから。己がちゃんと向き合ってこそ気持ちは届くものだからね。」



ちゃんと気持ちを込めないと意味がないのさぁ、と小さく頷く祖母の顔を琉宝は覗き込んだ。



「…じゃあ、おばあはどうして、ユタになってずっと祈ってるの?」



琉宝のその問いに、壽星は目元を緩めて柔らかく笑った。

それは琉宝から見て、また一つ祖母が力の輝きを増したようにも見えた。



「わんの、おばあが私に言ってくれたのさ。」


「なんて?」


「私の生まれた日のことを。」


「生まれた、日?」


「そう、昔、まだ私が悦子よりも若かったころに話してくれたのさ。」


「アンマーより?」


「そう、もうその頃にはおじいと出会っていてお腹の中には悦子が宿っていた。」



壽星はそっと目を閉じた。

彼女の長く束となった睫毛の先がキラキラと輝いているのを琉宝は静かに見つめていた。

壽星はこれまでの己の軌跡を思い返していた。ユタとしてちゃんと向き合えなかった日々もあった。

その中にある、眩い日々の思い出が壽星の胸を明るく照らしていた。



「私は自分の体に新しい命を宿した時、その命が成長していく中で自分の体が変わっていくのを感じていたの。」


「どんなふうに?」


「呼吸がきこえたのさ。」


「呼吸?誰の?」


「すべての」


「すべての…呼吸」



不思議そうに自分を見つめる孫に、壽星は優しく話し続けた。



「そう、あらゆるものの呼吸。家の前に生えている木や、広い海原を泳ぐ魚や森の中いる生き物の…そしてお腹の子供の息遣いまで分かっていた。」



呼吸、いわば命の息吹、そのものの存在。

それを耳で、肌で、体のすべて感じ取った壽星。

間違いなくユタとしての力の開花だった。



「その時、今まで自分が見ていた世界と全てが違って見えたのさ。」


「すごいね、」


「でも、私は怖くてしょうがなかった。だって急に世界がかわったのだもの。

でも、その時アンマーが言ったの。」



自分を見守ってくれた母がそっと壽星の背中を支えてくれた記憶がある。

それを思い返すたびに思い出されるのは、いつもあの母の温かい掌だった。



「アンマーは…それは、おまえの力だけじゃない。

お腹の子供と二人分の力で見えている世界だから安心なさいと。」



きっと、母も同じ体験をしたことがあったのかもしれない。

壽星の家は代々ユタが生まれる家系だったから。

しかし、それでも母よりもその力が強かった壽星は戸惑いの日々だった。



「アンマーが励ましてくれたのに、それでも不安がる私に、ユタだったおばあが言ってくれた言葉がある。」



妊娠し、新たな命を自分の体の中に宿した不安。

そしてユタとして目覚めた自分のあまりにも大きい力への戸惑い。

そんな時だった、それまで祈りを捧げていた祖母が自分に向けた言葉。

その言葉に壽星は救われたのだ。



「私はその言葉の意味を知りたかった。だからユタとなり祈りを捧げ過ごしていたの。」


「言葉の意味って?おばあは、おばあになんて言われたの?」


「これは、私のための言葉だから教えてあげられない。でも、琉宝。私はお前のおばあとしての言葉を贈るよ。」


「え、」


「琉宝。これはお前が生まれてきた日のことを。

そしてその日は、私がおばあに言われた言葉をようやく理解できた日でもあるのさ。」


「私が生まれてきた日…」


「琉宝、今からお前に贈る言葉は忘れても良いし、大事に心にしまっておいても良い。それはお前の自由だからね。」


「うん、」



小さく息をのむ琉宝に、壽星はくすりと笑うとその小さな肩を撫でた。



「力まなくて良いさぁ。ほら、力を抜いて。…悦子がね、お前の命を宿して10月10日経つ頃、わんは声が聞こえたのさ。」


「声?」


「そう、悦子を生んだ時とはまた違う空気だった。」



壽星がそう口にした時、琉宝はぞくりと背中が震えた。

嫌な気持ちではなかったが、自分や祖母の周りの空気が一瞬で変わったのが分かった。

無意識にブーイを抱きしめる腕にぎゅっと力をこめながら、琉宝は祖母の言葉に耳を傾けた。



「あの日は、あまりに世界が…いや大気が震えていた。

お前が生まれたのは夜明けの頃だったから、私は海が見える小高い丘の上で祈っていた。

私のおばあがそうしてくれていたように、どうか、無事に生まれてくるように…そうこの自然とご先祖様にと祈っていた。」



壽星の瞳に映る琉宝は気づいた。

今、自分たちを包み込んでくれる空気の匂いが変わったことを。

家の中にいるはずなのにそれは間違いなく海の香りであり、朝日を待つ夜明け前の空気だった。


そのひんやりとした静けさ中に突然、壽星の声と共に色んなものが飛び込んできたのだ。



「その時、忘れもしない。声が聞こえてきた。」



おめでとう、おめでとうと、嬉しい嬉しいと、ーその言葉に反響するように壽星の瞳が色濃く色んな光の輝きを手にしていった。


なんと驚くことにその声が琉宝の耳にも届いたのだ。

戸惑う琉宝をよそに壽星は言葉を続けていく。



「その言葉の多さに思わず顔を上げたら、星が幾重にも重なるように光り降り注いでいた。

驚いているうちに、また声が聞こえてきた。それは海の波から伝わってきた言葉だった。」


「っ!?おばあ、波、これ、う、うみが。」



琉宝は信じられないものをまた目にした。

自分たちの足元に海が広がっていたのだ。

自分たちは波打ち際に置かれた椅子に座っている状態で、壽星や琉宝の足には波が優しく寄せては返してくる。

足先がくすぐったいのは、波のせいだけではなかった。

小さな小魚や貝…いや、大きな魚の魚影までこちらに向かってくるのが見えた。

そのどれもが琉宝達に祝福の言葉を送っている。


ぎゅっと、壽星にしがみ付く琉宝を安心させるように、壽星は「大丈夫」と言いながら飛び跳ねるように近づいてきた小さなエイのヒレを指先で撫でた。

小さなエイの子供は、嬉しそうに楽しそうに壽星の手のひらの周りをくるくると泳ぎ、琉宝からも見える様に高くジャンプした。

それを見て思わず笑う琉宝に、壽星は目尻を下げた。



「ほらね、こうやって命の海が祝ってくれたのさ。」



それを見て口元を緩めた琉宝だったが、視線を上げた海の先に大きな体を波に打ち付ける白鯨の姿を見て固まってしまった。

あまりにも自分を取り巻く自然の大きさに驚きを隠せない琉宝だったが、そうかこれが祖母が見ている世界なのだと気づけくことができた。



「おばあ、」


「うん?」


「森も…木や花も言葉を持っているの?」


「そう、この世界のすべてに命があるんだよ、琉宝。」



壽星の…祖母の言葉に琉宝は自分の胸の内から、何かが湧き上がってくるのがくるのが分かった。

それはかつて壽星も感じたものに違いなかったが、それを上手く言葉にできず琉宝はただただ目頭を熱くさせていた。


瞳に涙の膜を作る孫の姿を見て、壽星はぎゅっと力強く琉宝を抱きしめた。

自分の大切な孫のこれからの未来を見つめ続ける壽星のその言葉は、琉宝にじんわりと染み込んでいくようだった。



「・・・琉宝、星降る夜に祝福と共に生まれてきた子。

お前が生まれてきたとき・・・お前の命という宝物をこの腕に抱いた時、私はお前にこの名前を授けた。」


「おばあ、」


「これだけは、これだけは忘れないでいて、琉宝。」



壽星の言葉に、琉宝の澄んだ瞳からポロリと涙がこぼれた。

それをすくように壽星の優しい指先が、まろい琉宝の頬を撫でる。



「お前は愛されて生まれてきた。

命の生まれてくる日、私の見たものはとても素晴らしいものだった。

おばあが言ったとおりだった。

このために生きてきたのだと思ったさぁ。」



壽星の記憶の中に自分が琉宝にしてあげたように語り微笑む祖母の顔が過った。

祖母もこんな気持ちだったのだろうか。

愛しい子の未来を願う気持ちは、どこまでも尽きることがない。



「琉宝、」


「なに、おばあ?」


「どこでどんな場所で生きようとも、おまえのこの命が燃え続ける限り、おまえの希望の星は消えない。

たとえ失敗しようとも、立ち上がれずもがき苦しもうとも、おまえの進んだ先、おまえの見つめる先は全て人の生きる道となる。」


「生きる、みち。」


「無駄なものはなに一つだってない。それは海が雲を作り雨が降り、その雨が山の木々に降り注ぐ。その木の根を伝い広い大地にしみ込んだ雨は豊かな川となり、そしてそれがまた海へ戻っていくように。」



沖縄の自然の中で、数多の生命の息吹を感じてきた壽星の瞳はどこまでも澄み、どこまでも清らかで琉宝は目が離せなかった。

 そんな壽星から急にこんな問いが出された。



「琉宝、雨はどこにふってる?」


ーあ、雨!?



壽星の言葉に琉宝は思わず目を見開き数秒固まってしまったが、両手をわさわさと動かしながら懸命に答えを絞りだ出した。



「え、えーと、雨は…どこに、ってどこにでもさ!色んなところに降ってる!」



琉宝の答えに、壽星は口元を緩めると小さく頷いた。



「そう、それは人も同じ。

たとえ、お前が意図しなかった道に進もうとも、たどり着くさきは一緒なのさ。

それはお前の未来へと続くもの。」


「わたしの、未来。」


「思った道とは違うからといって、失敗や間違いだったと悲しむのはちがう。

なぜなら、そこでしか出会えないものが確かにあるのだから。

そこで沢山のもの育みなさい。出会うすべてのものに感謝できる日がくる。

その時、心からおまえが進む道に間違いや失敗はないと気づけるから。」



失敗も、行き止まりも、他人に決められるものではない。

ましてや自分が生きるこの時間を、自分が否定するなんて…そんな悲しいことはない。



「全てはお前を育むものなの。

それはお前の未来に必要なもの、どこにも無駄なものなどない。

何一つ、ない。」


「おばあ、」



変わらないものなんて、この世のどこにもないのかもしれない。

長い人生の中で喜びや悲しみ、成功や失敗、温もりと裏切りを壽星は嫌というほど見てきたから知っている。

それでも彼女は誓う様に言葉を放った。


それは、壽星の心の中にある信念。

これこそ彼女の中にある、間違いなく変わることなどない思いー



「愛しているよ琉宝。

見知らぬ地で、新しい水に触れ、たとえその身が私の知らない形になろうとも、お前がお前であることに一切の変わりはない。

わんは、お前の未来を祈り続けている。

どこへ行っても…何になっても己の未来を生き続けなさい。

人神になったおまえには、必ず人神としてしか得れないものがあるはずだ。」



ユタとして、まだ幼い人神である琉宝に贈る言葉。

琉宝にはどんな形で受け取ったのかは彼女にしか分からないことだけれど、それでも琉宝の瞳には壽星と同じ輝きが生まれていた。



「それを、最後まで見つめなさい。」


「うん…。」


「あと、これはアンマーから言われているだろうけど。お前が傷つかないように生き、そして誰かを傷つけないようにね。」



急に出たその言葉は新しい学校に通う孫を心配する祖母の言葉だった。

急に自分が知るいつものおばあが垣間見れて、琉宝は思わず笑ってしまった。



「うん、自分がされて嫌なことは人にはしちゃいけないって!」


「そう、それは私が子供のころから言われてきた言葉だから。」


「おばあが?」


「おばあのおばあも、そのまたおばあも言われて言葉さ。」


「おばあのおばあの、おばあの、おばあ…なんか早口言葉みたいで面白いさぁ!」


「そうやって笑ってなさい。琉宝、笑うことはいいことだよ。」


「うん!」


「おまえがそうやって笑っていれば、マジムン(災い)は近づいてこないさぁ。」


「マジムン?」


「マジムンはどこにでもいる、気をつけなさい。」


「どこにでも?」



こてりと首を傾けた琉宝に、その時だけは壽星の瞳は鋭くなった。

壽星はまるでどんな災いからも守るかのように、そっと琉宝の肩を両手で振れた。



「ああ、気をつけなさい。それはあらゆるところに…人の心の中にだってね。」


「…怖いよ、おばあ。」


「大丈夫。飲み込まれなければいいのさ。だから笑ってなさい。どうしようもなくなったら…」


「ぶいぶいぶい!」



そこは私にお任せあれ!と言うかのように、二人の間でシャキリと立ち上がったブーイを見て、壽星は豪快に笑った。



「ははは!そうだね、琉宝にはぶーいがいるから安心さぁ。」



もうその時は、壽星の姿は琉宝のよく知るいつもの祖母の姿に戻っていた。

ブーイは嬉しそうに琉宝に撫でて撫でてと首元にすり寄っていく。



「ぶいぶいぶい!」


「くひひひ!くすぐったいさぁ!ぶーい!」



笑う琉宝を優しく見つめた壽星は、皺のよった掌で琉宝の頭を撫でる。



「琉宝、どうか元気で、」


「おばあ、」


「ぶーいも、琉宝をたのんだよ。」


「ぶいぶいぶい!」


「え!?あ、おばあ、ま、まって!」



壽星の手がどんどんと遠くに離れていく感覚に、琉宝はたまらず声を上げた。

でも、自分がどんなに腕を伸ばしても届くことができず、琉宝がもう一度大きく祖母を呼ぼうとした時だった。

 自分の耳元で大きく鳴くブーイの声が木霊したのだった。



「ぶいぶいぶいーー!!!!」


「はれ…?ぶーい?」


「ぶいぶいぶい!」



ぼさぼさの髪と半分しか目が明いていない琉宝は、自分が今まで夢をみていたんだとブーイの言葉に耳を傾けながら気づいた。

ブーイが明けたカーテンの隙間からさす日差しが琉宝に朝を知らせてくれる。

琉宝は、ほんの少しの眠気を含みながら自分をベッドから起こそうと必死になっているブーイに声をかけた。


「うんうん、朝だね。・・・ブーイ、いま、なんじ?」


「ぶぶぶぶぶい!!」


「ぬがー!?寝坊したさぁ!!!!」



寝巻から急いで着替えた琉宝は、ブーイと共に階段を飛び降りると謝罪の言葉を言いながら顔の前で両手を合わせた。



「わっさいびーん!寝坊して朝ご飯作り遅刻してしまったさぁ!」



チラリと視線を前に向けると、そこには要の姿があった。

彼女は琉宝の姿を見ると目じりを下げて近づいてきて朝の挨拶を始めた。



「あ、琉宝ちゃん、おはよう。いま、起こしにいこうと思ってたから大丈夫だよ…。」


「要ねーね、どうしたの?なんかボロボロだよ。」



琉宝の言葉通り、要の動きはどこかよろよろと力ないものだった。

そんな要が琉宝に苦笑いをしながら食卓のある部屋へと促す。



「…うん、ちょっとね。とりあえず朝ご飯たべようか?」


「うん!うち、お腹っぺこぺこさぁ!」



そう言って足早に部屋の中へと入ろうとする琉宝。要にむかって朝日のように明るく笑う彼女を見て要は「ま、眩しい。」と声を漏らすと申し訳なさそうに口を開いた。



「そっかぁ、うん、それなんだけど、なんかごめんね…。」


「え?要ねーね、どういう意味?なんで、謝るの…さぁ、」



自分に向かって謝罪をする要に、琉宝は不思議そうにその言葉の意味を聞き返した時だった。

何か焦げた匂いが彼女の鼻をくすぐったのだ。

その匂いにひかれて視線を食卓に目をやった琉宝は、朝から盛大に叫ぶこととなったのだ。



「アキサミヨーっっ!??」



琉宝の視線の先には、食卓のテーブルの上に力なく俯せる李人や応と甲の姿。

そして焼き焦げた朝食たちの数々が並んであったのだった。

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