最悪の再会
「涼に紹介したい女の子がいるんだ」
友人である糸野八雲に大学の学食でそう言われた俺は思わず身を乗り出した。
「え?何誰か紹介してくれんの?その子、彼氏募集中とか?」
「あ、いやそういうことじゃなくて」
八雲は少しもじもじした。少し顔が赤い。八雲は小柄で黒髪をマッシュヘアにしてることもあって後ろ姿は女子に見えることもあるが、正面から見ると当たり前だが、普通に男だ。男にもじもじされるというのはなんだか変な気持ちになる。
大人しく見えるが、いつもはっきり物を言う八雲がもじもじしているとなおのこと気持ち悪かった。
「…なんだよ。キッショいなぁー早く言えよ」
「ひどっ!…僕さ彼女ができたんだ」
「彼女?お前に?」
俺は驚いてしまった。
「他の人の彼女の話してどうすんだよ」
八雲は呆れたように言った。
「それもそうか」
「まあまだ付き合って2週間なんだけどね」
糸野八雲とは高校の時に同じクラスになったのがきっかけで知り合ったが、そのときはそこまで仲良くなく、経済学部に入ってから仲良くなった。親友と言ってもいいかもしれない。
八雲は、女嫌いというわけではないが、得意ではないのはなんとなく知っていた。そもそも八雲から恋愛系の話を聞いたことがない。精々、高校のときに他のの友人から八雲は隣のクラスの新崎さんが好きだ言っていたくらいだ。
新崎さんはポニーテールの髪をした長身のスポーツ少女だった。
そうすると八雲の彼女も案外可愛い子なのかもしれない。
「今日の4限後、彼女に友達を紹介するって言ってあるから」
「分かった」
4限後、大学の噴水の前で八雲と八雲の彼女を待ってると3人の女の子が歩いてくる。そのうちの焦げ茶の髪色のショートカットの女の子は他の二人に手を振って別れを告げ、俺達のもとに駆け寄ってきた。
「はじめまして!」
満面の笑みで挨拶してきた彼女を見て驚いてしまった。随分明るくなった感じがした彼女は俺の中学時代の想い人である青木棗だった。
彼女は俺のことが分からなかったらしい。そのことにショックを受けた。
「棗…」
俺が呟くと彼女は怪訝そうな顔をしてそれからハッとした顔をした。
「涼…!?」
「知り合いだったの?」
八雲もびっくりしていた。
「中学生のときの友達だよ!」
棗が笑顔で説明した。
俺はつい、八雲に笑いかける棗に嫉妬心のようなものを感じてしまい
「中学の時に俺ら、結構仲良かったんだぜ?ま、こいつは俺のこと忘れてたみたいだけど」
そんなことを言って仲のいいアピールをしてしまった。そして、忘れてた発言に自分で傷ついた。
「ごめん、ごめん。忘れたわけじゃなくて涼、背も伸びたし、茶髪になってて分からなかったんだよ〜」
と彼女は苦笑した。
彼女に再会できたことは純粋に嬉しい。でも親友の彼女なんて最悪の再会の仕方だなと俺は思った。