俺の想い人
中学生の時、好きな娘がいた。明るい茶髪のショートカットと同じ色の目が印象的な子でけれどけして派手な顔立ちではなくむしろ素朴な感じがした。
でも、可愛くて、じっと見つめてしまえば、見つめてしまったほど綺麗だと思ってしまう。そんな子だった。
もちろんそれは顔だけの話でもなくて、同じクラスになったばかりのときは少しだけ無愛想なところがあったものの打ち解けると色んな表情を見せてくれるーーつまり少し人見知りだけど本来は明るい性格なところとか。大人しいけれどしっかりもので困った人はほっておけず誰にでも平等に接するところとかとにかく全部好きだった。
「ね、針山ってなんかちょっと言いにくいしさ、涼って呼んでいい?そっちのほうが字数少ないし」
「字数少ないってなんだよ。別にいいけど、じゃあこれからはお前のこと青木じゃなく棗って呼ぶからな」
なんでもないようにそう答えながら、俺はすごく嬉しかった。
でも彼女に好きだと伝えることはなかった。彼女は恋愛ということに興味を示さなかったし、可愛くて優しいから告白されることは何度かあったみたいだけどそう言うことは彼女にとって嬉しいことでもなんでもなくありがたいけど申し訳ないというようなイベントだったみたいだから。
卒業式に告白することも考えたけど、友達としか思われてないのは明白だったし、思いを伝えたいからなどと言う理由で彼女に気まずい思いをさせるのは嫌だった。
卒業式のあと連絡を取ることもあったけどそんなやり取りも一年ほどしか続かなかった。
だがら彼女と再会するだなんて俺は思っていなかったんだ。…それもこんな形で。