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僕の運動靴~砂金の湧き出る運動靴~

作者: ちょこっと

 ぼくはアキラ、小学一年生。


 好きな時間は体育と図工と休み時間と……絶対に給食の時間!


 小学生になって、新しい運動靴を買ってもらったんだ。


 赤と黒のカッコイイ靴。

 少しテカテカ光ってて、触るとツルツルしてる。


 一番のお気に入りで、毎日学校へ履いて行ってるんだ。


 休み時間はいっつもサトシと校庭でおいかけっこしたり鉄棒したり、思いっきり遊んでるから、運動靴の中にはいつの間にか砂が入っちゃう。




「わー!アキラ、また靴砂だらけだね。

 ひゃー、砂がいくらでも出てくるわ」


 玄関の外で砂を払って、お母さんは靴を洗いにいく。

 土曜日のお休みの日になると、いつも僕の靴の砂チェックだ。

 おかしいなぁ、もう、幼稚園の時みたいに砂を入れて遊んだりはしてないのにな。



 夜になって、お布団の中で、僕は考える。


 どうして、いつの間にか靴に砂が入っちゃうんだろう?


 お母さんは少しがっかりした顔で靴の砂を捨てて、洗ってくれる。


 どうせ勝手に入っちゃうんなら、もっと嬉しいものだったらイイのに。


 そうだ!

 絵本で読んだ、砂金が出てきたらイイのにな。

 金銀財宝や砂金の山だっけ、アラビアンナイトかシンドバッドか、どっちだったかなぁ。


 そんな事を考えながらぼくは寝ちゃった。





 おや、おやおや?


 玄関から、小さな小さな声がします。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


  ★ねぇ きょうは どこへいったの?


     ☆ワタシは いつものしごとば かえりに スーパーへ よってきたわ


  ★ボクは しょうがっこう! でも すこしだけ よりみち


  ★かえりみちの とちゅうのおみせ イヌがいるところ みてきたよ


     ☆いいわね アキラくんのぼうけんに いっしょにいけて


     ☆おかあさんは あまり あるきまわらないから もっといろんな けしきもみたいわ


  ★しごとだから しかたないよね


  ★そうだ! ぼくたちで すこしだけ おんがえしをしない?


     ☆おんがえし?


  ★うん! だいじにはいてくれて だいすきなおきにいりだって まいにち はいてくれて


  ★ぼくたちに すこしずつ ちからがたまってきたよ


     ☆ツクモガミのちからね?


  ★そうだよ ボクとキミのちからで やってみよう!


     ☆いいわ!


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



 次の土曜日、また、玄関からお母さんの声がした。


 でも、今日はいつもとちょっと違うみたい。


「ひゃー!あ、アキラ、ちょっと来てー!

 この運動靴に何か入れちゃった?」


 お母さんに呼ばれて、慌てて玄関へ行くと、お母さんの手にはキラキラした金色の砂があった。


「ううん、ぼく何にもしてないよ。

 もう、幼稚園の時みたいに、靴に砂場の砂をいっぱい入れたりもしてないよ」


 僕の返事に、お母さんはびっくりした顔のまま、僕の運動靴を逆さまにして振り続けてる。


「これ、え、うそでしょ?でもまさか……」


 スーパーの袋を持ってくると、お母さんは砂をいっぱいいれて、ちょっとお出かけするよと自転車に乗った。

 僕も、ヘルメットをして自転車に乗った。


 家のすぐ近くの子ども服のお店に、丁度カンテイシさんという人が来てて、宝石や金とかの鑑定っていうのをしてくれるんだって。

 その人にスーパーの袋を見せたら、その人もびっくりしてた。




 そうして、僕ん家は凄いお金持ちになったらしい。


 お金持ちになった僕には、お母さんが新しい靴をいっぱい買ってくれた。


 でも、僕はあの運動靴を履きたかった。


 だけど、あの運動靴はお母さんが持ってて返してくれなくなったんだ。




 あーぁ、どうしてキンキラの金の砂が出てくるようになったんだろう?


 僕がお願いしたから?

 お母さんはガッカリ顔からいつもニコニコになったけど、僕はあの運動靴が履けなくなってガッカリだ。


 こんな事なら、僕の運動靴から砂金なんて出てこなくなればいいのに。


 また、僕の、僕だけの運動靴になればいいのに。


 誰かやみんなの特別じゃなくて、僕だけの特別な運動靴だったのにな。


 そう思いながら、僕は寝た。



++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


  ★あれ? あれれ? おかしいな


  ★アキラくんに はいてもらえなくなっちゃった


     ☆ワタシも おかあさん くつばこにいれたまま ほかのあたらしいくつばかり


     ☆ワタシ まだまだ はけるよ こわれてもないし サイズだってあってるよ


  ★どうしてかな 


     ☆なんでかな


  ★ツクモガミのちからも きえてきちゃったね


     ☆そうね


  ★しかたないね うまくいかない ときもあるさ


     ☆そうね


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



「うそーーー!」


 お母さんの叫び声で、僕は目を覚ました。


 慌ててお母さんを探すと、玄関で手にただの砂を乗せて座り込んでいた。


「お母さん、どうしたの?」


「靴が、靴が、ただの靴に戻っちゃった……どうしてぇ、砂金が出てこなくなっちゃったぁ」


 お母さんはガックリして手の砂をパッパッて払うと、手を洗って朝ごはんの用意をしに行った。


 玄関には、あの運動靴がぽいって適当に置かれていた。


 やった!

 僕の運動靴がかえってきた!


 学校へ行く用意をして、僕は、僕の、僕だけの特別な運動靴を履いた。


「いってきまーす!」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  冒頭の二行目、 >好きな時間は体育と図工と休み時間と……絶対に給食の時間!  とても子供らしさに満ち溢れた文章だと感じました。  小学一年生を一人称とした文体で、こうした子供らしさを…
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