友達!
おっと、みんな俺を騙しているなんて言って失礼。
クラスメイトの仙道晴子は俺の事を騙したりしてなかったな!
でもコイツもボディタッチが激しかったり、妙に突っかかって来るんだよな……面倒だ。
――よし、逃げよう。
俺の前にいる幼馴染と昨日の後輩、今朝俺を騙した隣のクラスの女子。
そして仙道さんを無視して速攻帰宅しようとした。
昨日の後輩がいち早く俺の退路に立ちふさがる。
「せ、先輩!! 私は中島萌って言いましゅ! ……昨日は突然ごめんなさい……まずは友達からお願いします!!」
クラスメイトの仙道さんが大きなお尻で中島さんを突き飛ばした!
「はむぅ!?」
「このハムスター娘め……今日も私と直樹君は楽しい日直ですわ……邪魔したら呪い殺すわよ……さあ、二人であの黒板を消し炭にしましょう!! ひゃい!?」
幼馴染の理恵が後ろから仙道さんの大きな胸を揉みしだいた!!
「はぁ……ちっさいちっさい……私の方が大きいわよ! 直樹! ほらほら!!」
へたり込んだ仙道さんを踏んづけて、理恵が俺の手を自分の胸に持っていく。
「な、直樹……ど、どうかしら……」
「いや、別に……」
確かに柔らかい。確かに素晴らしい物だろう。顔が赤くなりそうだ!
――だけどコイツはいつもそんな事をしてからかってくる。
人をバカにするのもいい加減にしな!
「犯罪者になりたくないんで……俺帰るわ。じゃあな、また明日! あ、そうだ……」
「え、え!? ……な、直樹」
理恵は、この世の果てを見たような絶望の顔をしていた。
「おほほほほっ!! ざまぁですわ!! 日頃の行いが悪いからですわ!! ここは私が……」
「きーー!! ムカつく! ぶち殺してやる!!」
「望む所ですわ!!」
俺は二人のキャットファイトを無視して、後輩の元へ……名前なんだっけ? えーと……
俺はお尻で倒された後輩の目をじっと見つめた。
「うひゃっ!? そんな見つめちゃ……、萌、困ります!」
――ああ、中島萌だ! ――友達になりたいって言っていたな? もしかしてそんな事いわれたの初めてかもな。友達になるだけだったら変な勘違いのしようがない……はずだ!
俺は中島さんに聞いてみた。
「友達になりたいの?」
中島さんの目が輝いた。
小動物みたいにくりくりとした顔立ちはとても可愛らしい。
うん、きっと善人だろう。
あそこにいるドス黒いオーラを出している二人とは毛色が違う……
「はい!! 萌は先輩と仲良くなりたいです!!」
「そっか、そんなんで良ければ構わないぞ! じゃあね!!」
「え!? せ、先輩ーー!! あ、でもやった! これからお願いしましゅ!!」
俺は荷物を持って颯爽と教室を飛び出そうとした!
隣のクラスのなんとかさんが呆然と立っている。
「ちょっと……みんなキャラ濃すぎじゃない? 私……一応クラスで一番の美少女なのに……」
ぶつぶつ何か呟いていたけど、俺は無視して通り過ぎた!
俺は商店街のみんなに挨拶しながら今日の事を考えていた。
「はぁ……みんな、なんで人を勘違いさせるような行動をするんだろうね? あんな事されたら俺の事を好き、って勘違いしちゃうじゃん」
俺は人の純粋な好意を受けたことがない。
何かしら裏があったり、利益を求めていたり、悪ふざけだったりする。
言葉で言われても、身体で迫られても、そこに悪意があると思ってしまう。
だって心を許した瞬間に裏切られた時の気持ち……分かる?
虚無感が胸の奥底から生まれ落ちる。
決して鈍感なわけじゃない。
本当は好意を持たれているかもって思う時もある。
自分に自信がないんだ。
――傷付くのが怖い。
何度悲しい思いをしたか………
だからこそ、俺は……絶対勘違いしない!!!
それが幼馴染であっても、可愛い同級生であっても、隣のクラスの地味なアイドルであっても……
でもさ、友達くらい作ってもいいよね?
あの子は俺を騙した後でも、ちゃんと謝って、友達になりたいって言ってくれた。
これは勘違いじゃない……はず。
だから俺は豆太以外に友達を作ってみようと思う!
「と、言うわけなんだ! お兄ちゃん初めて友達ができたかも知れない!」
俺は妹の部屋(リビングでは見たくないって言われた)でDVD鑑賞会をしていた。
妹の友梨は、俺の膝の上でお菓子をボリボリ食べながらくつろいでいた。
「ふーん、どんな人? お兄ちゃんぐらいカッコいいの?」
「いや可愛らしい後輩の女の子だ!」
妹が固まってしまった。
首をギシギシ音を立たせ振り返る。
「お、お兄ちゃん……え、彼女ができたの?」
「は? 何言ってんだ? ただの友達だ。それ以上でも……それ以下しかねえな」
俺はハムスター顔の後輩を思い浮かべた。
――ふふ、愛嬌がある顔じゃないか!
「わわわ!? た、大変……既成事実を……早く……」
俺は妹の身体を優しく撫でてあげた。
髪、肩、背中。
「ほら落ち着け。……俺はお前のお兄ちゃんだぞ? 世界で一人だけだ。どこにも行かないから安心しな」
妹の鼻息が落ち着いて来た。
「ふしゅー、ふしゅー、……うん、少し落ち着いたよ。……うん、そうだよね、唯の友達だしね!!」
「ああ、いつもみたいに、いたずら告白して来てな……その後、友達になったぞ!」
「いや!! ぎゃーーーー!!」
妹が壊れて服を脱ぎ始めた!?
おパンティ丸見えだ! はしたない!
俺はお風呂かと思って、妹をお姫様抱っこして浴室に運んであげた!