妹!
「森川さん! 私と付き合ってください!!」
というわけで俺は隣のクラスの名前も知らない女子に告白されている最中だ。
――はあ……またこのパターンか。
女の子は見た目清楚で黒髪ストレートでとても可愛いと思う。
そうクラスで一番人気のアイドルって奴だ。
俺が何か言おうとする前に影が俺たちの間に入って来た。
「おい森川! 残念だったな!! これは俺たちのドッキリだぜ!!」
なぜか男泣きをしている男子生徒。
女の子はびっくりしていた。
「ちょっとあんた誰!? わ、わたしの邪魔をするなんて……絶対許さないもん! あ、ちょっと森川くん!!」
――さて、今日はお家に帰って『豆太』の散歩しなきゃ!
俺は面倒事に巻き込まれるのはごめんなので、とっとと帰ることにした。
ていうか本当に俺って男子から嫌われてんな……趣味の悪いイタズラだ! 今度やったらとっちめてやる!!
俺の背後で男子の盛大な悲鳴が聞こえてきた!
柴犬の豆太は俺の大切な友達だ。
舌を出しながら俺のリードを待っている姿に癒やされる。
「さて、行くぞ!」
「わん、わん!!」
豆太は力強くリードを引っ張る。
豆太が通るとそこら辺にいるわんこが大騒ぎする。
――まあ、豆太はかっこいいからな! ふふ、俺も鼻が高いぜ!
「きゃ、きゃん……」
「わん、わん!?」
「ばうばう、ばうばう」
「はっはっはっは!!」
ほらみんな豆太にメロメロだ!
「……わん!!」
豆太が一声鳴くと、雌わんこ達は豆太に熱い視線を送りながらおとなしくなってしまった。
――俺も豆太みたいにモテてみたいな……まあ、俺ごときじゃ無理か……
商店街を歩くと、街のみんなは俺に気さくに声をかけてくれる。
「よお直樹! 大根安いぞ!」
「あらあら〜、そろそろうちの子とお見合いどう?」
「あ、お兄ちゃんだ! 一緒に遊ぼう!」
「も、森川さん……先日はありがとうござました。もし良かったら今度お食事でも……」
「ちーす! 直樹さん、勉強教えてね!」
ここは学校と違って俺を騙す女の人なんていない。
そう、なぜかこの商店街で俺と出会うのは女性ばかりなんだよな……
「なんでだろうな? 豆太」
「わん? わん!」
キリッとした馬鹿面がとても素敵な豆太。
俺も豆太の真似をしてキリっとした顔を試してみる。
カフェにいた女の子と目があってしまった。
女の子がコーヒーを吹き出した!!
――くそ、俺の顔がそんなに面白いのか!! 悔しい!!
女の子が俺の方に歩いて来たけど、恥ずかしいから俺は小走りでその場を立ち去ることにした。
「――――あ、ちょっと待って……ヤバいって……イケ……超カッコ……一目惚……」
豆太が競争と勘違いして本気の走りを見せてくれた。
俺と豆太は楽しい放課後を過ごした!
朝になるといつも妹が起こしてくれる。
「おにいちゃん、おはよ!!」
可愛らしい声で俺を起こす妹の友梨。
俺はもう着替え終わって準備万端だけど、俺は妹の頭を撫でてあげた。
「友梨はえらいな〜。毎日俺を起こしてくれてありがとな!」
「へへへ、お兄ちゃんの役に立てて嬉しいの!」
うん、もう起きてるけどね!
「ほら、早くご飯食べるよ。今日は学校一緒に行くんでしょ?」
妹は俺の腕に抱きついて来た。
ちなみに妹は準備が全然できていない。
いまだ薄手のパジャマを着ている。
――やっぱり友梨は可愛いな〜。こいつと結婚する奴は八つ裂きにしなきゃな……
「お兄ちゃん……」
「なんだ友梨?」
「呼んでみただけ! へへっ!」
俺は友梨の頭を軽く小突いた。
「――ほら早く着替えろよ。今日の放課後は一緒にDVDみたいんだろ?」
「うん! ……お、お兄ちゃんと一緒に絶対観たいの」
確かラノベが原作の『俺の妹がこんなに可愛いはずだ!』を観る予定だ。
妹とお兄ちゃんが紆余曲折の末、恋人同士になる物語だ。
まあ、兄から言わせてもらえば、妹を性的対象に見ている時点で、妹道に反する!
妹は妹だ! 恋愛じゃない。これは家族愛だ!!
俺は妹の頭を優しく撫でた。
「楽しみにしてな!」
「――うん!!」
結局、妹は朝の準備に間に合わず、学校を遅刻してしまった。
俺は先行っちゃったけどね。
大丈夫、バカな妹ほど可愛い!!
というわけで、俺は妹とDVDを観るために早く帰ろうとした放課後。
俺は最後のHRが終わり、寝ていた身体を起こした。
……四人の影が俺の机を囲う。
俺は顔をあげると、そこには……俺を騙くらかした女子達が勢揃いしていた!!




