しゅき!
俺は森川直樹。
妙に女子に話しかけられる男だ。
男子はそのせいで俺を目の敵にしている。
くそっ!?
あいつら女子は俺をからかいたいだけなんだよ!!
「おはよーー!」
クラスの最強アイドル初芝恵理の登場だ。
可愛さのランクで言えば、アイドル並だろう。
しかも巨乳でスタイル抜群だ。
男子が放っておくわけない。
だけどコイツは男子に対して異常に塩対応で接する。
そして……俺に対しては、
「あ、もう! なんで先行っちゃったの? 行くなら一緒に行きたかったのに……ぶうぅ」
俺の肩に胸を押し付けながらあざとい顔をしてきた。
俺は可能な限り顔を手で押す。
「日直だから」
そこへクラスの委員長、仙道春子が俺と幼馴染の間に入ってきた。
近いぞ!
「ちょっと初芝さん? 今日はわたくしと直樹様との大切な日直の時間……邪魔しないでくれるかしら?」
高慢チキな態度で無い胸をそらす。
委員長もとても可愛らしくてクラスの人気者だ。
「うるさい女狐ね……けっ……殺すわよ」
クラスのみんなには聞こえない声で話す二人。
「悪魔には言われたくないわ……はぁ、風俗落ちしないかしら……」
二人が火花を散らす中、俺は教室から逃げ出した。
ここは屋上。
そして誰もいないはず。
あ、そういえば今日も下駄箱にラブレターが入っていたな。
どうせいたずらだろうけど。
放課後、理恵が来るんだろうな〜。
俺は屋上で寝っ転がりながらそんな事を考えていた。
というかこんな俺を好きになる女なんていないよ。
好かれていると思ったら、大体俺の勘違いだってパターンが多すぎるもん!
はぁ……眠くなってきたな……
目が覚めて時計を見たら放課後になっていた……
マジかよ。寝すぎた……
あ!? ラブレターの時間ってもう過ぎてるじゃん!
場所はこの屋上で良かったはず。
もう終わったのかな?
どうせいたずらだから気にしなくていっか!
俺は起き上がり、大きな伸びをした。
伸びをした瞬間、誰かが俺に抱きついて来た!!
「しゅ、しゅきです!!! 絶対的にしゅきです!!!」
小さな頭が俺の腹に埋まる。
その衝撃は俺を悶絶させるには十分であった。
「ぐほっ!? だ、誰だ……ていうかしゅきってなんだ?」
よく見るとそこには小さな女の子がいた。
見た目はまるで中学生。
大きなお目々が可愛らしくて、ほっぺたが真っ赤になっている。
手はブルブル震えていて、顔は決意の眼差しだ。
「しゅきじゃなくて……好きです!! 私先輩の事が好きです!」
「え、ああ、はいはい。じゃあね」
「ちょっと待ってくださいよ! お、乙女が勇気を出して告白したのに、その態度はひどいです!!」
「うん? どうせいたずらでしょ? ここから初芝恵理がラスボスの如く登場するんでしょ? ていうか俺と君ってあったことある?」
「せ、先輩? 何いってるんですか? 頭大丈夫ですか! 私は先輩の事が好きなんです! あの時助けてくれて一目惚れしゅま……」
後輩の言葉が幼馴染の高笑いに阻まれた!!
「ぷっくすくす!! あなたまた騙されたのね!! ざまぁね!! あなたが好かれるわけないでしょ!! ふふふ、とういわけで帰るわよ直樹」
――まあそんなもんだろうな。
後輩を見るとほっぺたを大きく膨らませて、幼馴染を威嚇していた!!
「ぷすー!! ちょっとあなた何なんですか!! 私の一世一代の告白の邪魔しやがって!! 先輩だからってゆるしゅませんよ!」
――うん? なんか雲行きが……
「ちょ、ちょっとあなた黙らっしゃい! ほ、ほら直樹帰るわよ!!」
「しゃーー!!」
「ひぃ!?」
後輩が俺と幼馴染の繋いだ手をチョップで引き離した。
「学園のアイドルだか支配者だか知らないわよ! あんたなんか関係ない! 私は先輩の事がしゅきなのーー!!!」
後輩の声が屋上で響き渡った。
はぁはぁ、っと荒い息を吐いている後輩。
俺は後輩に近づいた。
「なるほど、これは新しいパターンだ。――だがな……こんな事では俺は騙されないぞ!! 俺をなめるなよ!! はははっ!!」
「ふえぇぇぇぇーー!!!」
俺は颯爽と屋上を後にした!