20話3Part ヴァルハラ滞在最終日の過ごし方③
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......昔の事、とは言ってもほんの2年前の事よ。私が勇者選考トーナメントでTOP5に入って、おまけに5唯聖武器との相性も良かった。それがあって"勇者"の職につけてすぐの頃の事。
南方の中央農道を地方視察の為に馬車で移動していた時に、とある1軒の古ぼけた家を見つけたの。まあ、周りにも貧民部落がずーっと広がっていたんだけど、その家が特に目についたというか......とにかく、なんでかは分からないけどその家に目を惹かれたの。
生活感は無かったけど、人が住んでいると一目見て分かったわ。人が住んでいない家の廃れ方ではなかった、どちらかというと南方の砂地に吹く熱風に晒されて廃れた、という感じの家。
「......酷い......何よこれ」
その時一緒に居た無口な付き人と共にその家の中に入ったのよ。そしたら、中は酷い有様だった。
壁に飛び散った血が付着していたの。新しいものも古いものもあって、壁もボロボロで、床も数カ所抜け落ちていたわ。鋭い爪痕のようなものも大量についていた。
大きな部屋の中央に傷だらけの男女の遺体が倒れてて、家中物色されたかのように荒らされていた。......そしてその家の奥の部屋で、幼い兄弟がガタガタ震えながらこっちを見ていたの。
下2人の子供達は怯えてるだけだったけど、1番上の子だけは怯えて震えながらも私達の事を必死で睨みつけて、自分の弟達を守ろうとしていた。......ええ、あの光景は特によく覚えてるわ。その子供は頭に角が生えた、悪魔の子供だったんだもの。
「この子達が......悪の芽は、幼いうちに刈り取るのが筋よね」
チャキ......
「っまって!!せめて弟達だけは生かしてください!!お父さんもお母さんも殺されて、それでも何とか生き残ったんです!!」
......もしかしたら、......いや、確かに私はあの時、驕っていたのよ。今までしっかりと守ってきた一族の誇りと自分の戒めを、常に心の中心にあったそれをあの時は、あの時だけは片隅に追いやってしまっていたの。
皇国政府が"国民の平和"ではなく"自分達の利益"を優先的に制作を立てている事、汚職過多で荒みに荒みまくっている事を目の当たりにして"自分はああはなるものか"と決めたはずなのに、結局は同じだった。
心から怯えて震えている子供......たとえそれが悪魔であったとしても、何かしらの事例の"被害者"である以上は勇者として守らなきゃいけないのに、私は鉄剣を向けた。
「無理よ、悪魔は悪魔。人間を堕落道に引きずり込み悪意を振りまき、悪事の限りを尽くすだけの生物など生かすだけ平和が乱れるんだから」
......彼らの命乞いと懇願を、ものの数秒で無下にしたの。......許されざる事よね、本当に。
「っ、やめて!!なんで!?なんでこんな事するの!?」
「それはあなた達が「悪魔だから、悪魔だから何もしてなくても殺されるんですか!?」
涙を振り撒きながら声を荒らげて命懸けで2人の弟達を守ろうとするその姿は、ひょっとすると世界の誰よりも"勇者"だったかもしれない。
......なにも、世界を変えたり何千、何億人の命を抱えて戦わなくても、勇気を振り絞って何かをした、しようとしただけで立派な"勇者"だもの。少なくとも私はそう思ってるわ。
「固定観念と偏見でしか物を見ない、そんな人が世界の英雄でいいんですか!?もっと弱い人達にも目を向けっ」
ザクッ、
「っ!!」
「お兄ちゃんっ!!!」
「......弟達だけは逃がしてって言ってたけれど、人間だものね。殺す必要はないわ」
......ええ、容赦なく心臓を一突きしたわ。そして直ぐにその家を出た。その後は普通に視察をして皇都に戻ったわ。
今思い返してみても、我ながら胸糞悪い事したと思う。悪魔の姿に縋って泣く兄弟の姿を見た時、私は初めて自分がしたことに気づいたの。......でも、もう戻る事は出来なかった。
......え?ここで終わりじゃないのかって?......これにはね、続きがあるのよ。
高度に戻ってからもずっとあの子達の事が気がかりてならなくなった私は、数日後に、今度は1人であの家に向かったの。
......たった数日の間だけど、せめてもの救いがあの子達に訪れているといいなって思って。私もお金と食べ物と暖かいものを沢山持って行ったのよ。もちろんこの程度じゃ到底足りないし、あの子達の兄が帰ってくる訳でもないってことをしっかり理解した上でね。
でもその淡い期待は、家に入った瞬間に砕かれたわ。
......人骨が、大きいものが2人分くらい、小さいものも2人分くらいあったの。悪魔の子の遺体はその場から綺麗さっぱり無くなっちゃってて、他の遺体は全て肉も筋も皮も全て削がれて、綺麗に骨だけが残されていた。
「っ......」
明らかに人の手によるものだった、どう見てもね。......何となく想像はつくでしょ?あなたが無駄に察しが良くて助かったわ。
さっきも言った通り、その家の周りは貧民部落が広がっている。......使えるものはなんでも使う、食べられるものはなんだって食べる。正気の沙汰じゃない行為だって平気でするのよ。
......お金が政府の汚職のせいで地方には回らないし、何より南方は8000年前の1代目魔王軍襲来時のアスモデウス軍の猛攻によってことごとく破壊され、長い年月が経った今でも完全復興には至っていない。だからこそ特に貧困率が高い。
「......私が、私が......」
殺したんだ、そう心の中で強く思った。......いくらあの環境下でも人間は悪魔に対して手を出そうとはしない。報復が怖いからと、単純に悪魔の方が身体能力が高いから。
......そう考えながら1人唖然としていた中で、ふと人骨の下に文字を見つけたの。それは聖シーツリヒター語で書いてあるものだったのだけれど、私はその内容に酷く心を打たれてしまったわ。
『がりがり、にくすくない、ゆーしゃいない。』
『役立たず。』
......"役立たず"、そうあの子達や南方の人達に言われてるようでならなかった。もうあの時には私はフリーズ状態だったわね、何も考えずにただぼーっとしていた。
......今考えればあの悪魔の子が居たからこそ、下の子2人も生きられていたんだわ。それに先に亡くなってしまった両親の遺体こそがあの子達の心を正気のまま、人のままに保つための依代だった。
何にせよあの子達は色んな因果が巡りに巡って、最終的に私が殺した。殺してしまった。どう亡くなったかはわからない。ただ2人で自決をしたとしても、他の村人達に殺されたとしても、......浮かばれないわよね、あんな小さいままに亡くなってしまったなんて。
まだやりたい事が沢山あったはずだし、もっと長く生きられたはず。両親と苦しい環境下を乗り越えて仲睦まじく過ごしたはずだし、......いや、そもそもあんなに苦しい生活をしなくてもよかったはず。
今もあの場所で、満開の笑顔を咲かせながら遊んで、食べて、眠って、学んで、考えてって色んな事をしていたはずよ。
「......と、色々あって私は"悪魔と人間が手を取り合う平和な世界"を作るのを標としているの」
聖火崎はホログラムを消し、近くにあった畑横のベンチに腰掛けた。それに望桜もおとなしくついていき、少し隙間を開けて座った。
「......お前も大変なんだな」
「まあね。......でもま、しおらしくするのは私の性にあわないし、今まで通りやるだけよ」
そう言って腰掛けてまだ10数秒しか経っていないにもかかわらず、聖火崎は勢いよく立ち上がって結界を解いた。そして未だに搬入され続ける"魔王軍対策用の何か"の方に向き直り、
「待たせてごめんなさいね!みんな頑張って、魔王軍に勝つわよー!!」
と鼓舞の声を元気よく紅空に響かせたのであった。
──────────────To Be Continued──────────────
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