✨18話1Part ヴァルハラ滞在1日目のみんな
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カタカタカタカタ......
......ウィズオート皇国の東方に位置する大豪邸·ヴァルハラ=グラン·ギニョルの1室。外の赤い日差しに照らされて仄赤い部屋に、晴瑠陽が操作するパソコンのタイプ音が響く。......日光を暑いやぎらぎらしているという意味を"赤"という言葉で表したという訳ではなく、本当に赤いのだ、日差しが。
ウィズオート皇国全体のみならず、下界中に広がる日本とは違い赤々とした空には薄紅色の雲がふわーっと拡がっている。その景色が覗く窓を時折眺めては、困ったように溜息を着く。
「......ダメ......解析、終わらない......」
......土にまみれたUSBメモリ。いくら"国最高峰のハッカー"とブラックネット界隈で密かに有名(望桜達は知らない)になっている晴瑠陽でも、USBメモリの解析ができない。それには深刻な理由があった。
「......パソコンの......性能が......」
......ノートパソコンのスペック不足。
いや、値段の面を気にしてめっちゃ旧型パソコンを買ってもらったとかとかいう訳ではないのだ。葵雲の事だから、きっとぶちぶち文句を言い続けて文句の多さに折れた望桜にそこそこ新型のものを買ってもらったはずだ。何より同じ機種の望桜達に出会う前......その頃何をしていたかはあまり覚えてないが時々覗いていた電気屋にも"新作だけど中古"のタグ付きで安く売られていたのを見た事がある。
それなのにスペック不足......"未知のファイルです"って画面に出る度に、何か苛々する。......おかしい、今使っているUSBと同じ時に拾った物を1代目魔王軍の時の電子機器管理部室にあった機械を使って、数秒で解析を済ませてデータベース入力をしていたはずなんだが......そう晴瑠陽は考えて、再び窓の方に視線を向けた時だった。
「......晴瑠陽殿、ちょっと来てくれぬか」
「......あ、マモン......どした、の......?」
「......汝ら、3人で1つの体は不便じゃないかの?」
扉が3回軽くノックされ、ここヴァルハラ=グラン·ギニョルの館主であるマモンが部屋の扉を開けた。そして晴瑠陽をこちらに来るよう呼んだ。
答えになってない......そうマモンの返答に対して思いながら、新たに返ってきた質問にいつもの小声のゆったりとした調で答える。
「......確かに......チェンジして、数日間の......自由と記憶が無くなるのは......少し困る」
「吾輩の館では、人体のクローンを作る研究もしておっての。そのクローンに病気でもう死が目の前で手の施しようがない患者や、天寿を全うしようとしているけれどまだ死にたくない......そう思っとるご老人らの魂をクローンに移して寿命を伸ばすっちゅう研究なんだが、もう人口で人間の肉体を作成するところまではできておるんじゃ」
「......うん、それで......?」
「残りは魂を移す作業を出来れば成功。じゃがな、いきなり実行に移すわけにもいかん。魂を1度抜き取れば人間の肉体は死に魂も天に昇る。1段階ずつ行っていく途中で失敗すれば、被験者は即死亡だからな。じゃから、汝に実験体になってもらおうと思ったのじゃ。ついでに言うと、汝らを此処へ呼んだ3つ目の理由でもある」
「......僕達なら実験体としてそれをやって......失敗しても死亡はしないから......?」
「そういうことじゃ」
マモンはどうやら、新しい医療、存命技術の実験体に晴瑠陽を使おうと思っているのだ。もし失敗したら被験者は即死亡、それを聞いて晴瑠陽も一瞬顔を引き攣らせたが、すぐにマモンの意図を察していつも通りの眠そうな表情に戻った。
......マモンの言う"寿命を伸ばす研究"とは、先の説明の通りあらゆる理由で死にかけている人物の魂を抜き取り、人口の人間の肉体に移して存命を行うというものだ。この実験は成功したら一躍億万長者間違いなしな程だ。しかしその分失敗のリスクも大きい。失敗したら被験者は即死亡、それがやはり痛い。
しかし、1つの体に1つの魂ではなく、1つの体に3つの魂を持つ晴瑠陽ならば、1度魂を抜き取っても別人格が表に出てきて肉体は死亡しない。そして仮に移すのに失敗しても肉体が生きている以上魂の帰る場所がある、つまり即死亡にはならない、失敗のリスクが小さいのだ。
それを踏まえてマモンは晴瑠陽を誘っている。そしてそれが分かった晴瑠陽はそういえば......と自身が思ったことをそのままマモンに伝えた。
「......でもそれなら......死刑囚を使えば......いいんじゃない......?」
......そう、マモンの館のルールである"戦闘禁止"を破った者は強制的に死刑か無期懲役だ。そしてそのルールがありながらやはり揉め事を起こす者は毎月のように出る。そうして何やかんやで集まる死刑囚を使うことも出来るはずだ。しかしマモンはそれを行わなかったらしい。
「いや、それはダメじゃ。クローンの生成にはそれなりの時間も労力も資材もかかる。それだけの犠牲を払ってまで造った物を、どうせ近いうちに殺すものになど使えようか」
「......あー......なるほど、わかった......」
「それで、協力はして貰えるかの?」
「......いいよ、どうせ解析......できないし......」
「......よし、ならば早速実験といこう」
そして晴瑠陽の言及に対してさらっと簡潔に返答を返したマモンは、早く実験体になってもらえるかどうかの合否が聞きたいらしい。それもなんとなく察した晴瑠陽はすぐに返事をした。
その返事を聞いて直ぐに行動に移そうとするマモンに慌ててパソコンの電源を落とし、のそのそと部屋の入口の方に向かう。
「......行動早い......あと、気になってたんだけど......」
「ああ、ファフニールの事か?」
「......うん......」
「なあに、心配ご無用と昨日伝えたであろう?彼奴は今、自室にて床に就いておる」
そう妖美な笑みを浮かべながら振りかえりざまに答えたマモンは、午前の異世界の光が落とす深い影をより意味深に見せつけた。目の前の少年もまたそれに悪寒を感じながらも、すたすたと廊下を歩いていく少年(?)の背を追った。
─────────────To Be Continued─────────────
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