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なにまお!(リメイク前旧作Rotstufen!!)  作者: 水都まる
第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と
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15話4Part 対面オンパレード④

ここまで読んでくれてる方ありがとうございます!!

まだまだ付き合うよっ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!


 ......帝亜羅がコンビニに寄って手土産用のプリンを購入し、足早に望桜宅に向かっていた時のこと。望桜宅も目前......という所で帝亜羅は右肩から後ろに勢いよく引かれ後ろをばっと振り返った。


 そこには茶髪のロングヘアを横で1つにまとめた全身白色コーデの男と、蒼銀の肩上丈の髪を優美に揺らしながら帝亜羅の方をがっしり掴んでいる真っ黒のロングコートの人物が立っていた。え?え?と慌てふためく帝亜羅を蒼銀の髪の人物は冷たい視線で射抜いた。その瞬間、帝亜羅はプリンを持つ手に力が入らなくなって袋ごと落としてしまった。



「っ......あ、の............なん、ですか......?」


「......見つけた」


「......え......?」


「......"ユグドラシルの果実"」


「......え......」



 そう口にした蒼銀の髪の人物は帝亜羅の方を握る力を強めた。


 ......宇宙樹ユグドラシル。帝亜羅も存在と大まかな詳細だけは知っている、天界の力の源の大部分を占める物。それの"果実"......目の前の人物の言葉に、帝亜羅は真っ先にフレアリカを思い浮かべた。


 ......大昔に死んだ"フレアリカ"に"果実"が寄生してできた生命体である彼女は、今朝、唐突な急成長を遂げた。とりあえず用事があるから......と休日を返上して学校に行くのに急いでいたため帝亜羅はとりあえずそれを後にして用事を済ませ、また確認しよう......と思っていたのも望桜宅に足を運んだ理由の1つだった。


 未だ動揺している帝亜羅を蒼銀の髪の人物は視線で射抜いたまま言葉を紡いだ。



「"果実"はやがて芽を出し成長する。そして成熟して"樹"となる......」


「......?」


「......"樹"は1つでいい......神は1人、"神の証明"は1つだけでいい......!!」



 そして帝亜羅の肩を握りしめる手が蒼色の光を発し始める。じんじんと温かくなっていく感覚......これはまずい、そう帝亜羅の頭の中で警鐘が鳴り響き目の前がチカチカした。


 人ってパニックになるとこんなにも無力なんだ......と場に合わない考え事は"もはや何をやったところで助からない"と思い込んだ脳が無自覚に走馬灯を流すのはやめて、せめて痛みを感じないままに帝亜羅が息絶えるようにという配慮をしてくれたのか。



「っえ、まって、待っ......!!」


「......神の"正義"に仇なす者は、神の名のもとに(わっち)が断罪するっ!!」


「はーいはいはい、ちょっち落ち着こうね〜」



 そして蒼色の光がやがてとてつもなく強い神気波となりはじめ、帝亜羅がぎゅっと目を瞑った時に茶髪の人間がようやく蒼銀の髪の人物を止めるための声を発した。帝亜羅はその瞬間に身体中から力が抜け、その場に崩れ落ちた。ありったけの安堵、久しぶりに肺が空気を取り込み始めたような気がした。


 蒼銀の髪の人物は茶髪の人間の静止に不機嫌そうな表情を浮かべ、



「......邪魔をせんでくりゃれ、カエレスイェス。(わっち)は己の役目を果たさんがため、この大和嬢を魂だけにしてアズライールの元に送らにゃならん」


「いやぁ、そーれは僕も重々承知してるんだけど、今は別にやる事あるでしょ?別段急いでる訳でもないんだから〜」



 茶髪の人間の人間の事を睨みつけた。しかし彼はそれを気にせず、相変わらずにへらっと笑ったまんま茶髪の人間......カエレスイェスは帝亜羅の方を向き直った。



「それに、彼女は今仕留めなくても大丈夫だよ」


「......天使に舐めたマネを......」


「そーゆーことじゃないから!!......この子に関しては既に手が打ってあるってこと」


「天登をし損なった聖職者如きの指示を聞き入れるなど、天使の恥じゃ」


「まーまーそう怒りなさんなって!!」



 自身が置いてけぼりにされたまま進んでいく会話に帝亜羅は頭痛がしてくる。......"カエレスイェス"というどこかで聞いたことのある名前、ぷてるくす......?騎士団の人、だったかな......と頭の中で呑気に考え事をしている帝亜羅はもはや無自覚のうちに現実逃避していた。そんな帝亜羅のことなんか気にしないといったふうに未だ2人は口論を続けていた。


 ......その2人の後ろに1つの影が忍び寄って来ていたことに、2人も、帝亜羅も気がつかなかった。



「......それでも(わっち)は役割を果たさねばならない......貴様の言うことを聞く必要などないと思いんす」


「いやでもね?ヘルメス様への命令ってことは間接的にミカエル様かガブリエル様からの指示ってことになるし、逆らうわけにはいかんでしよ?」


「......お2人の命令なら、致し方ない「おい、そこの2人組」


「は......?」


「......あ」



 その人物は、茶髪の人間と蒼銀の髪の人物のちょうど間に割り込むように距離を詰めてきた。話しかけられた途端に2人は顔を顰め、まるで猫に威嚇している時の犬のような般若の面へと表情を変えた。そしてその2人の間に割り込んだ人物は、腰を抜かしたままの帝亜羅の腕をがっと掴みそのまま引き上げた。



「或斗さん......」


「大丈夫ですか?帝亜羅さん」



 ......帝亜羅同様、望桜宅に用があってヨシダパークハイムに足を運んできていた人物......餅月或斗は蒼銀の髪の髪の人物をまっすぐに見据え、自身と同様に()()()()()()()()と視線をかち合わせた。



「だいじょぶ、です......」


「なら良かったです。......で、貴様は何をしに来たんだ」


「......」


「あんれぇ?ひょっとしてカマエルさんの知り合い?」



 或斗は帝亜羅の無事を確認すると安堵の表情を浮かべた。しかしそれもすぐに崩して、凄然な眼差しで蒼銀の髪の人物の方を見やった。......帝亜羅はその視線に射止められているわけではないのに、なぜか心臓を握られているような心地がした。視線だけで何人か人を殺せそうなその視線に射止められたらどうなるのだろう、そう帝亜羅は思った。......怖い。


 或斗が発する殺気を受けて、2人は表情は崩さないものの若干気圧されているようで、それは下界の人間でもないしなにか特別な力を有しているわけでもない(謎の魔力耐性は除く)帝亜羅でもわかるほどであった。


 そして蒼銀の髪の人物......カマエルは、カエレスイェスの言葉も無視して帝亜羅のすぐ横から数歩後ずさり、



「......アスタロト、様......」



 自身の目の前に立つ薄紫頭の青年の名前をうわ言のようにひとつ呟くと、感情のない鉄仮面に微かな同様の念を見せた。



「上司の言うことには、たとえ間接的な指示だとしても逆らえないのだろう?......貴様の上司の1部である羽虫2匹は、少なくともここで帝亜羅さんを殺すよう指示は出していないはず。今はそこの騎士の言うことを聞いておいた方がいいのではないか?」


「っ、(わっち)の上司であるミカエル様とガブリエル様を、羽虫呼ばわり......不躾がすぎるかと............確かに2人は、"今は"殺すなと仰っていたのじゃ。お2人に逆らうと後が怖い、(わっち)らは今は引かせてもらいんす」



 途中口篭りながらも或斗の言葉に、鉄仮面に怒りもほんの少しちらつかせたカマエルは、また数歩後ずさってカエレスイェスの手を取った。



「およ?やっと帰る気になったんだぁ、良かった!」


「......いいからはやく歩いてくりゃれ」



 脳天気なことを口走りながらついてくるカエレスイェスに、再び完全無表情に戻ったカマエルはそのままどこかへと歩き去っていった。



「......あ、」



 帝亜羅は自身の右手に握られたビニール袋の中の、ほんの少し視界に入ったプリンの惨劇を見て小さく声を上げた。去っていく2人の背を眺めていた或斗はその声に反応し、同じようにプリンを見た。



「......これ、魔法で戻すようなものでもないですよね!やー、おっちょこちょいだなぁ、私〜......は、はは......」


「......」


「捨てたりはしないですから!これはうちの弟達にでもあげときます!あ、でも冷蔵庫だけはお借りしないとですね!さすがに腐ったものはあげられませんから!」


「......」


「......えーと......」



 帝亜羅の熱弁も聞いているのかいないのか、崩れて無惨な姿になったプリンを見つめたまま固まってしまった或斗に帝亜羅は思ったことを口にした。



「......ひょっとして、食べたいんですか......?」


「......え?あ、別にそういうわけでは......」


「そうなんですか?ならやっぱり弟達に......」


「や、そ、それは......!」



 帝亜羅の言葉に翻弄されて顔色をころころ変える或斗に、帝亜羅はくすりと笑みを零し、



「......ふふ、冗談ですよ。こんな崩れたので良ければ......どうぞ」


「......頂きます」



 崩れて無惨な姿になったプリン10個を或斗に差し出した。そしてそれを見るなり目を輝かせる或斗に、帝亜羅はやはり笑みを浮かべた。



「はむっ......ん、はむっ、はむっ......んん〜!!」


「美味しいですか?」


「んんっ!!」



 帝亜羅の問いかけに、或斗は思い切り首を縦に振った。プラスチック製のスプーンで小さいカップの中のプリンを一心不乱にかき込む様子が、帝亜羅にとってはとても先程までの人物と同じだとは思えなかった。



「......なんか、かわいい」


「んむ......帝亜羅さん?」


「いや、望桜さんや梓ちゃんがお2人(堕天使組)を見て呻くのもわかるなぁって......」


「え、それどういう意味ですか!?」


「......そのまんまの意味です、ふふっ......あははっwwだって、お2人って男性っぽくないですし、可愛いな〜って思わされたり、怖いなって思わされたり......そういうギャップも可愛いの範疇なのか......なんか変な時の梓ちゃんの気持ちがわかった気がしますww」


「俺は可愛くないです!!どちらかというとかっこいいって言われたいです!!」


「それもなんか聞いたことあるような気がします......ふふっww」


「うう〜......」



小さく呻きながらもプリンを食し続ける或斗が食べ終わった数分後に、ようやっと重い腰を上げて2人は望桜宅にお邪魔したのだ。




 ──────────────To Be Continued──────────────





ご精読ありがとうございました!!

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