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なにまお!(リメイク前旧作Rotstufen!!)  作者: 水都まる
第2章 Alea iacta est !
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10話2Part Der verhasste Heilige②

ここまで読んでくれてる方ありがとうございます!!

まだまだ付き合うよっ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!


 カチャ、カチャ......



「......で、主様は昨晩、どうしてあんな遅くに帰ってきたんですか?」


「......カラオケ行ってた」


「え〜、1人で?ナンパとかされなかった?」


「いや、されたら普通に殴ってるし」


「訴えられるからやめてくださいね......でも、本当に1人で行かれたのですか?」


「いーや?ちょっと知り合いと」


「珍しい......あ、変なやつに声掛けられたらボクに言ってね?切り落とすから」


「物騒なこと言うな沙流川......あ、一応俺にも言ってください。刈り取りますから」


「お前ら2人とも物騒な事言ってんぞー......よう、瑠凪」


「あ、望桜。おはよう」



 ......大都会·東京滞在4日目、爽やかな朝だ〜って朝の新鮮な空気を肺いっぱいに取り込んで清々しい目覚めの流れで、そのままリビングキッチンまで歩いてきたのに......朝から物騒な会話してんだもんこいつら。尊いからいいけど。



 ドタドタッ、バタッ、ドタドタドタッ



「ちょっと、ねえ〜!!」


「起きるのが遅い即ち夜更かしをしていたということ、ってことで2日はこれを没収するのだよ」


「もー!!ずっと使ってたわけじゃないのに、的李のケチ!!っていうか鐘音だってまだ起きてないじゃん!!」


「鐘音は別なのだよ、たいてい勉強しかしてないから。でも葵はたいていパソコン弄ってるのだよ」


「偏見だ!!こいつ偏見でしかものを見ないタイプのやつだ!!」



 廊下の奥からドタバタ音がする。それと並行して言い争っている、葵と的李の声も聞こえてきた。恐らく的李が葵からパソコンを没収したのだろう。まだ鐘音は寝ているようだ。



「もー!!あ、望桜!!おはよう!!」


「おはよう葵、すっかり元気になったんだな!」


「仮病じゃ......」


「おい」


「仮病なんてそんなのしないもん!!」


「はいはい......あ、ところでお前人間の死に方の研究とかしてなかったか?」


「そんな趣味悪いことしてたのかい!?」


「してないよ!!......けど、人の死に方の判別くらいなら、体の状態とかから割り出せるよ、なんで?」


「や、あの幼女......フレアリカって、死因はなんなのかな〜って思ってな。あの後聖火崎に少し聞いたんだが、フレアリカは聖銃を所持してるらしいからな」



 ......昨日フレアリカと大天使2人組の襲撃?についての会議、最終的に明日またしようということになった会議、皆は忘れているが。


 それに関連してはいるが如何せん記憶の彼方にあり忘れているため、ただ望桜が気になったことを率直に質問した。



「あー、いいよ?フレアリカー!!」


「......あおいどーしたの?」


「ちょっとここに、おでこ当ててくれる?」



 そう言って前髪をかきあげ、自身の額を指さす葵。フレアリカはそれわしげしげと見つめた後に、



「んー?いいよー!!」



 こつん、



 自身の額を葵の額にくっつけた。すこし勢いが強かったのかこつんと音がしたが、2人は気にせずそのままだ。



「......あー、なるほどなるほど」


「わかったか?」


「うん!この子は......銃の暴発で死んでるね!!」


「「......え?」」


「えって......この子は銃の暴発で死んでるよ?」


「聖銃の暴発でか?」


「出鱈目なことを言わないでくれ給え」


「出鱈目じゃないもん!!」


「でも聖銃の暴発なんて聞いたことが......」


「確かにねえな」



 望桜と的李は顔を合わせて、その直後にゆっくりと葵の方に向き直った。



「っ、なんで信じてくれないの「あー、フレアリカこっちおいで」


「?」


「どした?瑠凪?」



 葵があわあわとしだす横で、瑠凪がフレアリカを呼んだ。スマホを片手に、指で魔法陣を描き始めた。......え、何してんの?



「ちょっと瑠凪!!梓ちゃん起きてきたらどうするの!!」


「ちょっと静かにしてて!!......ほら、これで証明できるだろ」


「これ、は......」


「ちょっとルシファー、朝っぱらから何し......ちょっとフレアリカに何するつもり!?頭パーになっちゃうじゃない!!」


「黙って見てろ!!......Mein arroganter Dämon. Gib mir die Kraft, dem Herrn, der die Wurzel des Heiligen ist, zu widerstehen, in das Ende der Welt zu fallen und sie zu versiegeln, um nicht wieder von der Erde aufzustehen. (......我が傲慢たる暁の鬼よ。聖の根源たる主に抗い、世を終焉にて陥れ、地から二度と上がれぬよう封印する力を我に与えたまえ)」


「これは......詠唱......?」


「主様、なんで詠唱を......?っていうか死にますよ!!!」


「瑠凪!?」


「......Erweckte Erinnerung」



 瑠凪は突如詠唱し、その直後に謎の咒文を唱えた。その場にいた望桜、的李、或斗、太鳳、聖火崎、葵......そして密かに起きてきていた帝亜羅は何がしたいのか理解が追いつかなかったがそこから寸刻おいて、部屋中に蒼色の光が瞬く間に拡がった。



「は?ちょ、眩しっ......」


「ほんと何してんの......」


「おー......」



 その直後に、リビングに居た全員が意識を失った。




 ───────────────Now Loading───────────────




 下界西暦、12861年。



 カチ、カチャ......



「......よし、これでまだ使えるな」



 とある小さな家の中で、自身の手いっぱい程の大きさになる大きめの銃のメンテナンスを行っている男が居た。のちに伝説となった第壱弦聖邪戦争、その戦争に勇者として出兵する男がその男だ。名前はカレブ·K·レヴグリア、1代目聖銃勇者であり、聖銃を最後に扱った勇者である。



「あなた......大丈夫なの?魔王との最終決戦、勇者としてあなたが選抜されたのはとても誇らしいけれど......」


「大丈夫、絶対に帰ってくるから安心しろ!」



 男の妻......カフィは聖銃を大事そうに撫でるカレブの元に近寄り、不安げにそう呟いた。その不安をまるで杞憂だというふうに男は大袈裟に笑ってみせた。男は西方で軍を率いて戦うことになっていて、魔王軍5天皇の1人、レヴィアタンと対戦する作戦だ。



 この男が参戦する聖邪戦争の数年前、1代目魔王による人間界進行が本格化してからはや1年強の頃、人間達は自分達が生き残るための打開策を必死に探し回っていた。対抗できるなら、なんでもいい......その思いで世界中を探し回り続けて、ようやく見つけた"打開策"になりうるであろう物......天界にある宇宙樹·ユグドラシルの枝。


 そしてそのユグドラシルの枝を国中から集めた腕の良い技師達に、武器に加工させたものが5唯聖武器。それぞれに特別な効果がある訳でもない、ただ素材が特別なために性能が良い5つの武器だ。


 そしてその5つの武器に技師達と皇帝、元帥はこう名付けた。


 聖剣 リジル、聖槍 ゲイボルグ、聖弓 ミストルティン、聖盾 アイギス、聖銃 ケリュケイオン。

 

 その武器を使うために国中の武士、騎士、砲兵etc......を集めて戦わせ、5人の勇者を選出した。聖剣勇者 ラディオール·N·セインハルト、聖弓勇者 アフィル·J·フィヨルド、聖槍勇者 ノア·M·エウリコット、聖盾勇者 フォルドーラ·F·リリエル、そして聖銃勇者 カレブ·K·レヴグリア。



「......にしても、こいつも随分使い古したな、壊れないといいが......ほんとに天使様の恩恵だよな、俺たち人間が悪魔相手に生き残ってられるのも」


「そうね......」



 そう言って彼らは家の小窓から外を見た。空はおどろおどろしく紅に染まっており、それが晴れた蒼色の空を見たことは数年前......空が紅く染まったあの時から1度もない。その紅い空の下で、何も知らない幼子達が今日も元気に遊んでいる。その幼子達の中に2人の娘......フレアリカも混じって、笑いながら駆け回っている。



 カレブに似た空色の瞳、カフィに似たセピア色の綺麗な長髪。この子と自分達が生きているうちにもう一度蒼色の空を見せてやりたい。その空に浮かぶ白い雲を、時に灰色が覆って透明の雨がきらきらと降ってくる空を、そしてセピア色に世界が染められて後から沢山の星が煌めく空を。


 その思いで男は戦場に、女は家で娘と共に無事に終戦する事をただ願いながら待つのだ。



「......あ、今のうちに水汲んどかないと」


「私はちょっと村に行ってこようかしら......フレアリカ!」


「きゃはは!ん?なあに?おかあさん」


「お母さんはちょっと街に行ってくるから、家の周りで遊んでおきなさい。遠い所に行っちゃ駄目よ」


「はあい!!」



 娘に家から離れないよう伝え、カフィは街へと向かった。


 フレアリカは先程まで遊んでいた子供達のところに戻るでもなく、ただ1人家の中で立ち尽くしていた。......家に今は1人きり、両親がいると触れない、どうしても近くで見て、触れてみたいものがあったからだ。


 幼女はまっすぐ机の方へと歩みを進めた。先程まで父親であるカレブが聖銃のメンテナンスをしていた机だ。案の定、カレブは机の上に聖銃と小型の工具が置きっぱなしになっていた。



「......せいじゅう、けりゅけいおん......」



 ガラスと黒曜石、鋼鉄をベースとして作られた聖銃には、銃身にきらきらとしたガラスがあしらわれており、1つだけ、ひときわ輝きを放っている宝石......魔石ヴァッフェ·フェアベルゲンだ。幼女はその魔石の事がずっと気になっていたのだ。


 ヴァッフェ·フェアベルゲンは人間界西方·メロウフォレスト内にある大きな池の奥底でしか取れないかなり貴重なもので、勇者と技師、あとはごく少数の宝石商しか見たことがないと言われる程の伝説の魔石。


 "貴重"や"伝説"とか言われてもまだ幼いフレアリカには分からない。ただ銃身の中央部にたいそう煌びやかに鎮座する紫色の魔石を綺麗だと感じ、そんなにも綺麗なものだからこそ触ってみたい、そうずっと心の中で思っていたのだ。


 両親がいなくなった隙に、ほんの好奇心でフレアリカは聖銃に手を伸ばした。魔石が取り外せることは昔、見たことがあったためフレアリカは知っていた。取り方は知らないが。だから撮り方を模索しながら聖銃の色んな部分を操作してみたり、魔石を引っ張ってみたりした。



「......ちょっとだけ、ちょっとだけ......」



 ガタ、カチッ......



「......ん?なんかおとがしたよ?でもきにしなーい......」



 両親はずっと聖銃にフレアリカが触れないようにしていた。無論、触れないようにしていた理由は......



 カタッ、コロコロ......



「あっとれた!!」



 カタッ、トトト......ゴトッ、バンッ!!



 ......暴発や誤発を防ぐためなのだが。



「あ、れ......?」



 ポタ、ポタポタ......ドサッ!!



 聖銃は暴発を起こし、幼女の頭を撃ち貫いた。フレアリカは地面に倒れ込み、頭から延々と血を流しながら空同様家の床を紅に染めていき、やがて海ができる頃にはようやく何が起こったかを理解して事切れた。



 ガチャ、



「......フレアリカ〜?っ!!」



 その後帰ってきたカフィは、血の海の中心で倒れるフレアリカの姿を捉えた直後駆け寄って、



「フレアリカ!!フレアリカ!!!あなた!!フレアリカが、フレアリカが!!」



 パタ、パタ......



 騒ぎ立てる妻の元に数分後に帰ってきたカレブは、カフィ同様慌てふためきながら医者を呼んだが、結局フレアリカは助からなかった。



 その後の顛末は、父親·カレブはレヴィアタンとの対決で戦死、惨殺された。一方母親·カフィは禁術である蘇生魔法を使おうと躍起になって、街の人と自分を生贄にして蘇生しようと殺人事件を起こし、審議会の神判のもと、火あぶりの刑に処された。




 ───────────────To Be Continued──────────────





ご精読ありがとうございました!!

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