5話4Part (元)魔王の休日は大荒れです(?)④
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怪しい魔力反応を追っている最中、目の前に少年の顔が飛び出してきた。しかしそれも束の間、その少年は、飛び出してきた勢いそのままにルイーズの顔に蹴りを入れた。
少し短い嘆声を上げて、1トントラックに弾かれたかのような勢いで吹っ飛んだルイーズは、そのまま後方の壁にぶち当たる。
「がっ!?」
ドガッ!!ガラガラガラ......
「ちょ......」
大人しく顔面で蹴りを食らった点で何も反応出来ていないようだが、瑠凪を抱えていた腕は吹き飛ぶ直前で離している。
少年の特徴的な紅い瞳の色が、その刹那にもルイーズの視界に焼き付いていた。
その場に残された瑠凪は、重力のまま下に落ちていく最中でルイーズの方を確認した。......仮にただの日本人に身を落としていても、勇者だし、あの程度で死なないだろう、いやでも......或いはと、確認の意も込めて名を叫んだ。
「ルイーズ!!」
「おー!!あれでもたおれないとは、さすが"ゆーしゃ"だな!!」
「ルイーズっ......ちっ......」
少年はふわりと着地し、はためくコートの汚れを落とすように、軽く数回撫で付けた。一方の瑠凪は、返事がない事に腑に落ちない感情の反面、あろうことか......と吹っ飛んだ先の抉れた壁を凝視した。そして少年の方へと向き直り、思いつく名かと尋ねた。
「お前......アスモデウスか?」
「......はっはっはー!!そのとおり!まおうぐんさいこうかりょくにして"そらのはしゃ"アスモデウスだぞー!!」
......少し舌足らずな日本語で話す少年......ことに、7罪の一角、魔王軍最高火力にして"空天の覇者"·アスモデウスは、その肩書きの通りの火力·機動力を誇るれっきとした大悪魔だ。
今、彼は空に大きな翼を広げて飛んでいる。翼は根元のみが生物的で、それ以外は金属と歯車で形成されている。角も真ん中をボルトで固定してあって、しっぽに至っては半分ほどでなくなっており、時たまに鮮血が滴り落ちている。
「ってて......」
「おおー!!」
「お前、大丈夫なの!?」
「平気だ......つっ......」
「そのようすじゃ、あばらがすうほんいったなー!!」
口から垂れる血を拭いながら、自身の衝突により抉れた、壁近くの床から立ち上がるルイーズ。立ち上がり数歩踏み出す度に、全身の骨が軋む。
「ああ......みたいだ。だが気にするほどの傷ではない」
「そっか......まだなにかするつもり?」
「......」
「......?」
自身の体の状態を確かめるルイーズを後目に、アスモデウスの様子も確かめつつ問いかける瑠凪。しかしその相手は、飛んだまま目をつぶっている。
......何かの術式の用意をしているのかもしれない、そうだとしたら止めなくては。しかし今無理やり止めて余計悪化でもしたら......という自身の中で肥大していく不安に、意識せずとも不安とその他の感情が拮抗し、2人共その場から動くことができない。
寸刻おいて、相手が目を開けたようだ。......紫色の瞳、漆黒の髪に妖な紫がよく映える。
「......下から誰か来るね......」
「!?」
「え......?」
先程までの舌足らずと幼さは何処へやら。ひたすらに幼元気だった雰囲気が、威風混じえた雰囲気へと変わった。
「......はは、ルシファーもこっちで会うのは久方ぶりかな?覚えてないのも納得いくね」
「......は、ルシファー、これは一体......」
「......えっと、簡単に言うと......多重人格?」
「多重人格......?」
「そこにちょっと付け足すと、事件に関与してるのは今目の前にいる方の人格......あらかた、爆弾......魔力弾道プラズマの作成·配置の指示とかは先導してたって感じ?」
「......ほお、まさか今までの数分間の様子だけで、そこまで割り出せるのかー......これは失敬、君の頭脳を侮っちゃってた......」
手を前方に差し出して、魔力をその指先に集める......アスモデウスは指先で簡易の魔法陣展開をし、眩い紫色の陣を背面に大量コピーした。......その全てが、攻撃魔法展開陣。その数、ざっと40数個。
「それだけ頭良いなら、ここからでてくる弾幕を、全て防ぎきることはできるよね?下界でも硬さ(防御力)には定評のある君のことだし、余裕だよね?」
薄ら笑いを浮かべてなおも飛び続ける少年悪魔は、魔法陣をさらに煌めかせ、瞬く間に展開陣から、さらに多量の弾幕を直線的に撃ちだした。
......やばい。
「いくよ!どうか生き残ってね!!」
「......あ"ーもーめんどくさいっ!!防護陣展開術式、《クラッシュバリア》」
「攻撃陣展開術式 《インフェルノ・バレット》」
ビュンッ、ドガッ、ドガガガガガ!!!ドーンッ!!
「ふ、ぐっ!」
派手な煌。2人の位置に直線的に飛んでくる弾幕の速度を、ビュンビュンという音が現している。瑠凪は鬼気迫る表情で、防護陣を展開した。一瞬で展開された陣に轟速で進む弾幕が、まとめて瑠凪達目掛けて襲いかかったが、防護陣はそう易々とは壊れない。
轟速だが個々では小さい弾幕も、それに見合わず当たった時の衝撃が、少年悪魔の軽蔑を色濃く表してくる。
「ふ、ぐっ!」
「大丈夫か!?」
「だ、いじょぶ......!げほっ、ごほっ」
「煙った、けほっ......あ、彼奴が、アスモデウスが居ないっ!!」
「この砂煙、逃走のためのエフェクトかよっ!!けほっ、こほ」
階段に立ち込める砂煙が薄まってきた頃、少年悪魔の姿が見えないことに気がついた2人。反応は上部にある。3階建てのアオンモールの3階からみた上の階......屋上に移動したようだ。
「......何よ今の轟音っ、あ、ルイーズ!!げっ、ルシファー......」
「なんだよ!!俺がいちゃいけないっていいたいわけ!?」
「先程の轟音は、連続爆破事件と今回の爆発の犯人、アスモデウスの弾幕の音だ」
「はあ!?やっぱり犯人は悪魔じゃないの、望桜!!」
「なんで俺が悪いみたいになってんだよ!!俺はアスモデウスとは面識ねえ!!」
「アスモデウスは上に居るよ、さっさと対処しないと......被害が拡大する」
「なんでそう言いきれるのよ!!」
「人間界の方にも記録が残ってない?1代目魔王軍の時、人間界南方に攻め込んだアスモデウスとその配下の凶獣族数匹だけで、人口を壊滅的に減らしたってやつ......それだけの火力と機動力があるアスモデウスが仮にもここで本気で何かしらやってみたとしたら?それこそ計り知れない、甚大な被害がでるよ」
「......」
「だったらここで議論してる暇ねえんじゃねえか?さっさと行くぞ」
今度は望桜が先陣をきって階段をのぼる。屋上への扉の硝子からの光が当たるようになってきた頃、やはり屋上にいたようだ。真正面の上空に飛んでいる。
急いで階段を登ってきたからか、汗ばんできた。......気持ち悪い。大暑の斜陽はまだきつい。クーラーの入った室内も涼しいが、屋上へ出た瞬間から、吹き荒れる風にさらされるのも、また違った意味合いで涼しい。
......さて、日本に迷惑をかける悪魔に、13代目(元)魔王として制裁を下すとするか。......元ってつくとカッコ良さ半減するな。まあ、これからすることは先程述べたことと同じことなんだから、カッコ良さとか気にする必要は無いな。
「......やあ、意外と早かったね。客人も増えたようだし、無事僕達のターゲットも来てくれたみたいだし。......さて、君達の命運をかけて、いざ勝負といこうか」
夕暮れ空の赤と黒髪、そして紫色の瞳が映える和装。コートを翻しながら自嘲の笑みを浮かべるアスモデウスは、振り返りざまに宣戦布告した。
───────────────To Be Complete
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