✨32話1Part "あまい"約束...?
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「てぃあ!とべるねっち......って、学校来てないのか」
「うん......」
......未だに寒風が勢力を衰えそうにない、肌がぴりっと痛む程寒い1月7日。
私立聖ヶ丘學園は本日、3学期の始業式で年が明けてから最初の登校日である。
そのため、冬休み気分の抜けきらない生徒達は登校しても尚そわそわしていたり、机に突っ伏して寝ていたり、はたまた、友達とクリスマスやお正月等についての思い出話で盛り上がっていたりと學園全体がどことなく浮き足立った雰囲気を纏っていた。
それは件の聖火崎暗殺未遂事件に巻き込まれていた所為でなんとなく年を越したという実感の薄い奈津生 帝亜羅と、雅 梓の教室も例外ではなかった。
2人の同級生であり、仲の良い友達でもあり......異世界の悪魔でもある早乙女 鐘音こと、ベルゼブブはどうやら学校に来ていないらしく、彼の席は現在クラスの他の男子が仲の良い友達と駄弁る為のベンチ代わりとして使われている。
そちらの方に視線を向けながら、梓は小さく唸る。
「なんで学校、来てないんだろう?べるねっち、あの時のことそんなに気にしてる感じでもなかったのに」
「確かに......」
あの時......とは、鐘音がガルダと共謀して聖火崎と共に望桜や帝亜羅達を殺そうとした時の事だ。
あの時、鐘音は半ば裏切るような行動を取って、望桜や聖火崎と共に帝亜羅と梓の事も殺そうとした割には、その数日後には共にお泊まりをしたりする位にはそんなに気にしていなかったように見えた。
それは帝亜羅の"鐘音くんのこと好きなままでいる"という言葉や、梓があんな経験をしたにも関わらず以前と同じように接した(下界の色々について問い詰める所以外は)からかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
どちらにせよ、鐘音本人があの出来事から帝亜羅達と距離を取るような行動を取ったり、そういった旨を伝えたがったりするような事もなかったはずだ。
それなのに、学校的には大事な登校日と思しき"始業式の日"に学校に来ていないというのが、2人には少しだけ引っかかった。
「......やっぱり、いつものサボりかな?」
「多分......そう、だと思う」
がしかし、鐘音は以前から割と学校をサボりがち(家では勉強していたらしいが)だったので、2人は本日不登校なのも恐らくいつものサボりだろうと結論付けて、
「え、どんな子なんだろ?めっちゃ気になる......!」
「噂じゃヤンキーとか不良とか言われてたけど、どうなんだろうね?」
「えー!?そうなのー!?」
「でも、かっこいいらしいよ?編入生の子!」
ひとまず、他のクラスメイト達がひっきりなしに話している"編入生"について意識を向ける事にした。
「編入生、って......梓ちゃん知ってた?」
「あ、そうそうそれね、2-Eの山田が話してるのは聞いたんだ。山田曰く、カッコ可愛い系のやんちゃっ子......って感じの、ちょっと派手めの子だったって!!楽しみだなぁ〜」
「そうなんだ......」
わくわくする事案ではあるが、鐘音の事がどうしても引っかかって小さく肩を落とす帝亜羅に、梓は喝を入れるように明るい声で話しかけた。
「もー、大丈夫だって!!事情とか本人が来るまでわかんないんだからさ!!それより、クラスの新しい仲間の話でもしようよ!」
「......うん、そうだね」
「ほら、元気出しなよ!!」
そう言われながら梓にバンッ、と強めに背中を叩かれて、帝亜羅は少しだけ胸の内がすっきりするような感じがした。分からない事でいつまでもくよくよしていてはいけない、そう考えて軽く深呼吸をする。
「朝のHRの時に先生が連れてくるはずだから、それまで皆そわそわしてそうwwあたしもだけどww」
「確かに、何かいつもより騒がしいよね」
「ほんとにね〜」
2人が学校に来てから、教室の中は常に誰かの話し声が響いている。
ある人はどんな子だろうと仲のいい友達と共にあれやこれやと想像してみたり、また他のクラスメイトは仲良くなれるだろうかと何やらぶつぶつと呟きながら机に突っ伏してみたり......とにかく、クラスメイト達が普段と違う様子なのは明らかだった。
この空気に便乗して、帝亜羅と梓も噂の"編入生"とやらについてちょっと色々考えてみようかと思い立ったその時、
「ん、あれ?言われてた教室ってここじゃなかったっけ?」
ガラリ、という音と共に教室の扉が開いて、そこからひょこっと見慣れぬ顔が飛び出した。
10数名のクラスメイト達が各々に屯している教室内を一瞥してそうぼやいたその人物に、教室内はしー......んと静まり返ってしまった。
そんな中、
「............もしかして、編入生の子じゃ......」
はっと我に返ったクラスメイトの1人の呟きに、
「え、まじ......?」
「HRで来るんじゃないの......?」
クラス内はざわざわと騒々しさを取り戻した。
「こらっ、」
「いてっ......あ、二伊妻せんせーだぁ〜」
「先に行くなとあれほど言ったのに......」
そこに、帝亜羅達のクラスの担任教師である二伊妻 鶚がやって来て、チャイムが鳴る前ながら生徒達は席に着いた。
書類が入った黒いファイルを編入生の頭に軽くとすっ、と落としてから、教室にツカツカと軽快に靴音を鳴らしながら入ってきて、編入生も頭を擦りながらそれに続く。
「まず、雅の事だが......見ての通り、本人は元気だ。詳しい事情は皆には話せないが、大した事情でもなかったらしい。詮索はしないように」
教壇の向こうに仁王立ちしてから、年末の"梓が行方不明になった"という件についての報告を簡潔に済ませた。
クラスの皆も本人が元気なのは教室内で普段通りぴんぴんしている梓の姿を見て知ってはいたものの、一応ちゃんとした報告を受けて表面的じゃない部分も元気かどうか確かめたかったため、二伊妻の言葉に数名が分かりやすく胸を撫で下ろした。
"梓の行方不明"はウィズオート皇国絡みで起こった事だが、一応、一段落着いた所で瑠凪やマモン......こと、数土が各所に連絡を回したり野次馬の記憶の消去等をして大事にならないように上手く処理したため、行方不明の真相は"梓がちょっとした気の迷いで家出した"という事で落ち着いている。
しかし"ちょっとした気の迷い"が深刻な悩みであるかもしれない可能性を考慮して"大した事情ではない"と言ってくれる二伊妻を、帝亜羅と梓は改めていい教師だなと実感した。
「......で、既に學園中に知れ渡っているようだが、一応改めて言おう。こいつが、今回うちのクラスに来た編入生だ。......ほら、まずは自己紹介」
「はぁーい」
そうこうしているうちに、話は件の編入生についての色々に変わっており、二伊妻に手と視線で呼ばれた編入生は、扉の横から黒板の方に移動して、その場でくるりと皆に背を向けた。
そして、
カッ、カッカッカッ、カッ、カッカッ......
「......」
無言で、黒板に文字をさらさらと書いていった。
小気味よくチョークの弾ける音がしんとした教室の中で響いて、再び静寂が戻ったと同時に編入生は踵を返す。
ラフに羽織ったビビットカラーのパーカーと制服のブレザーを翻すように皆の方に向き直って、
「福岡の天神から来ましたぁ、編入生の町川 灰或で〜す!よく"まちがわ"って呼ばれんだけど、われは"まちがわ"じゃなくて"あずまがわなんでそこんとこよろしくお願いしまぁ〜す!!」
黄金と淡い勿忘草色の瞳を細め、満面の笑みで自身の簡潔なプロフィールを堂々と述べた。
──────────────To Be Continued─────────────
ご精読ありがとうございました!!