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なにまお!(リメイク前旧作Rotstufen!!)  作者: 水都まる
第5章 堕天使は聖教徒教会の
174/180

31話8Part 晴耕雨読⑧

ここまで読んでくれてる方ありがとうございます!!

まだまだ付き合うよっ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!


「センパイ、終わってるんならオレ達先に戻るっすよ」


「分かりました。僕はもう少ししてから帰りますね」


「ほな、また後でな」


「会議までには戻ってきてねぇ〜♪」


「ぱふぇはまた今度食べに行くであります。なので、今日はお土産にちょこれーと、なるものを買ってきて下さい......!では、また後で〜!」



 すると、アズライールは丁度NeutralGriffのメンバーを帰している所だったので、聖火崎は彼らの見送りが終わってアズライールが自分の方を見るまでの数十秒程、今日の出来事を頭の中で軽く整理していた。



「あ、あとベルさん、さっきあすたろの異才について知りたがってましたよね?」



 すると、終わったのかアズライールから先程の聖火崎からの問についてそう言ってきたので、



「あ、ええ、まあ。味方だし、効果と発動形式......あとは、代償?ってのについて知っておきたいわね」


「分かりました。軽〜く説明しますね」


「お願いするわ」



 聖火崎は首を縦に振って、アズライールから或斗の異才について教えてもらう事にした。



「あすたろ〜、あすたろもベルさんに自身の異才について話せる所は話してくださいね〜♪」


「ああ、分かった」



 それとほぼ同時にアズライールが或斗を呼び付け、呼ばれた或斗は手に騎士の遺体の1つから剣を取って歩いてくる。


 そして、



「俺の異才は......」



 自身の腕に剣を宛てて、



「え、ちょっ......!」



 手首から先を斬り落とす勢いで、思い切り刃を突き刺した。


 それを見ていた聖火崎は慌てて駆け寄ろうとする......が、



「って、え......?」



 聖火崎が足を一歩踏み出すか否かの、ほんの一瞬で或斗の腕の傷は跡形もなく消滅していた。



「............こんな風に、怪我をしてもすぐ治る」



 骨は切れずとも、筋肉やら血管、神経等は根こそぎ持っていかれてそうな程に深く刃が沈んでいたはずなのに、回復魔法(ヒール)等を使っているような魔力も神気も感知できなかったのに、腕は元々傷なんてなかったように綺麗な状態だ。


 血の1滴すらも垂れる前に治った傷にあっけらかんとする聖火崎をそのままに、アズライールは続ける。



「あすたろの異才は傷の即時回復......怪我を治したいって強く念じれば、怪我を治すことができます。その際に異才の出力を調整できて、それによって怪我の回復速度が変化するんですが......上手く調整しないと、代償でぶっ倒れるんですよ」


「え、何、そういう代償なの......?」



 聖火崎はそう言いながら、或斗の方に視線を移す。



「ああ。個人的には、異才を本気で使う......出力を限界って所まで上げれば、普通の人ならすぐに死ぬような傷でも0.1秒あれば治せるんだが、その代わりに小一時間位経つとどっと疲れが来て、異才が使えなくなって動けなくなるんだ」



 そんな聖火崎の視線に反応して、或斗は異才を発動した時の個人的な感想を述べる。



「初期代償はなし、継続代償は異才発動時の激痛と体がどっぷり疲れる、ですかね」


「初期代償......は、異才を獲得した時の代償で、継続代償は異才を発動する度に発生する代償......で、合ってる?」


「合ってますよ」


「なら......」



 補足の説明をアズライールが付け足した後、専門用語的な言葉の確認をしてから、



「異才を使った時の疲労、については分かったけど、激痛って......?」



 聖火崎は2人に自分が純粋に疑問に思った事を質問した。すると、



「あず、頼む」


「了解です〜♪」



 或斗は困り顔でアズライールに目線を送って、アズライールは笑みを浮かべながら何かを快諾する。



「あすたろは異才とか色々関係なく、生まれつき痛みを感じない無痛病なんです」


「あ、そうだったのね!?通りでやけに涼しい顔して腕斬ったなって思ってたのよ」


「まあ、痛くも痒くもありませんからね〜......そのおかげで、あすたろはこの異才を使えてるんです」


「そうなのね」



 聖火崎はさらっと判明した衝撃の事実に驚きつつも、さっきのはそういう事だったのかと納得した。



「この即時回復の異才って継続代償の激痛のせいで、異才模倣(コピー)の能力者が模倣してすぐ壊れちゃったくらいですからねぇ。本来だったら相当きついみたいです」


「え、怖っ......」


「例えるなら、全身が()った時の100倍痛む、みたいな?感じですかね〜」


「なんか、()った痛みは想像しやすいけど、それの100倍ってなると分かんないわね......ん?」



 アズライールの例え話の"全身が()った時の100倍痛む"を必死で想像しようとしていると、聖火崎の頭の中にふいっととある疑問が湧いて出てきた。



「アズライール......あんた、何でそんなに異才に詳しいの?」


「どういうことです?」



 聖火崎の問に対して、アズライールは間髪入れずに聞き返してくる。



「能力の詳細とか出力の調整、疲労感についてとかが分かるのはなんとなく納得がいく。でも、或斗(異才保持者)本人も自覚できてない......自覚し得ない代償についても、あんた知ってたじゃない」


「あー......それは、"本"に書いてあったからです」


「本?」



 ......そういえば、さっきも"本"がどうたらこうたら......とか言ってたような気が......


 そう、聖火崎は頭の中で少し考えてから、目の前のアズライールが腰に着けているウエストポーチからずる......と、どう見ても入りきるサイズではない古びた本を取り出すのを見ていた。


 その本の表紙には、絵も題名らしき文字も何も書かれていない。


 ただ、分厚くて表面が少しくすんで劣化している総革(フルレザー)装丁本(バインディング)からは高級そうな雰囲気だけが感じられた。



「この本は、世界に存在する異才に関する情報が全て(つまび)らかにされている、魔法書の1つです」


「魔法書?」


「はい。......実は、下界に捨てられた宇宙樹(ユグドラシル)の"種子"の殆どが、一定期間下界で誰にも見つけられずに再び天界にある宇宙樹(ユグドラシル)の元へと戻ってきているんですが......」


「は......?」



 "本"の説明を聞いていたのに急に話に入ってきた宇宙樹·ユグドラシルの"種子"に、聖火崎は眉を(しか)める。



「下界、天界の2つの世界に存在する"種子"の数って、元々決まってるんです。そして、"種子"はそれぞれ異才を持っています。意思や命を持たぬ"種子"は、生命体の中に入り込むことで異才を成長させて、芽吹き、そこから完全な姿......"樹"になる......」


「......それが、その"本"と何の関係があるのよ」



 そう言った聖火崎を後目に、アズライールは或斗の方を見遣る。



「......あすたろの即時回復の異才、最初は本気を出しても重傷を治すのに3日かかる、さほど強力ではない異才だったんです。それが今や、真っ二つにされようが溶かされようが直ぐ治りますし、サブ能力も発現しました」


「サブ能力?」


「自身の体液が相手の体内に入ると猛毒と化す、でしたっけ?」


「猛毒......」


「まあ、そんなかんじの異才です。......って、それは置いといて......」



 ん゛ん゛っ、というアズライールの咳払いに、2人の会話を大人しく聞いていた或斗がぴくりと反応した。


 そして同時に、タイミング良く吹き込んで北風がザワザワと木々を騒がせた。


 ......南方領主の館がでんと構えるこの場所のやけに乾燥した地面は、此処が土地として貧弱な事をありありと示している。


 なら何故、そんな場所に木々が鬱蒼と生い茂る立派な森が、領主の敷地内の大部分を占める程しっかりと存在できているのか。


 ......理由は簡単で、領主が痩せた土地に森を作り、それをすぐになくさないようにするべく手入れを欠かさず、育成魔法と環境保護の魔法を魔導師にかけさせ、その他色々の"森のための努力"をちゃんと行っていたからだ。


 自然に人の手を加える事で、保護し、生息地を広げ、皇都の方で減っている森林の代わりに南方に新たな森を作る。



「......宇宙樹(ユグドラシル)は、元々人工的に作られた樹なんだそうです。まあ、自然じゃなんでも、人工的とは言え神が創ったとか何とか言われているらしいですが......そんな宇宙樹(ユグドラシル)が新たな樹を......子孫を残す為には、どうにも自然の力だけじゃ駄目らしくて......それで、人の体内に取り込んでもらうことで、"種子"の助長を助けて貰うんです」


「それって、人の体に"種子"が寄生してるってこと......?」


「まぁ、ざっくり言えばそういうことですね」


「............それで?」


「それで、大昔に天界の奴らがそんな"種子"の性質を調べていく中で、種子は宿主となってくれる生命体に異才を授けるということが分かりまして......神とやらの指示で、当時"種子"の研究に携わっていた研究者の1人が異才について纏めた文献......それが、この魔法書なんです」


「へぇ〜............」



 アズライールの話が一段落着いたのを見計らって、聖火崎は深く深く頷いてから、改めて口を開く。



「で、あんたがその本を纏めた研究者ってオチ?」


「いや?違いますよ?」



 聖火崎の問にきょとん、とした顔で返してきたアズライールに、聖火崎は分かりやすく呆れて見せた。



「なら何で、めちゃくちゃ大事そうな本を著者でもないあんたが持ってんのよ......」


「8000年ぐらい前ですかね......天軍の(かしら)をミカエルに譲った後くらいに、天界の禁書庫から拝借したんです。なんか面白そうだったので」


「要するに、超機密文献を興味本位で借りパクしたのね」


「そうとも言いますね」



 にこりと笑って、何でもない事のようにあっさり肯首したアズライールに、聖火崎は「天使も悪魔もないわね、ほんと......」と小さくぼやいた。



「まあ、そんな感じで、僕はこの本を読んだことで弱点だったり出力だったり、そういう異才に関する情報を全てわかってるって訳です」


「成程ね......」



 こくん......と深く頷いた聖火崎を後目に、アズライールは或斗の方に駆け寄っていく。


 それに気付いた或斗が不思議そうにしつつアズライールを見ると、



「あすたろあすたろ〜っ♪」


「わっ、と......どうした?」



 また先程のように勢いよく抱き着かれて、思わず尻もちを着いてしまった。


 アズライールはぺたんとお尻を着けて座る体勢になった或斗をぎゅっと抱き締めては、ふにふにとほっぺたをつついてみたり、さらさらした髪の毛を優しく撫でつけてみたりしている。



「僕、ウィズオートではカイル·C·フランチェスカっていう偽名で、東方の翠彗暁宮の近くに拠点構えて会社やってるんですよ♪なので、いつでも都合がいい時に遊びに来て下さい!マモンさんと一緒におもてなししますから〜♪」


「ま、マモン、さん......?」


「はい♪皇国とは別に、個人的な縁で取引させて頂いてるんです〜♪」


「そ、そうなのか?」


「そうなんです〜!」



 ご飯時や散歩時の大型犬を彷彿とさせる勢いとテンションで或斗に引っ付くアズライール......カイルを見ながら、聖火崎はふと思った事を口にした。



「そういえば、あんた大天使で審判天使よね?現役......なんでしょ?」



 殆どカイルに訊ねかける形になったその呟きに、カイルは一瞬だけ表情を曇らせた。



「......もうとっくの昔にクビになって辞めてますよ。なので、天界にもずぅっと帰ってません」


「......、」


「あっ、そ......」



 カイルの返答に、或斗が小さく胸を撫で下ろしているのが、聖火崎には分かった。



「じゃあ、そろそろ僕は行きますね〜!あすたろ、近いうちにぜったい遊びましょうね♪っていうか、遊ぶんです♪」


「分かった」


「では、また〜......」



 自身の組織事務所へと向けて移動を開始しようとしたカイルが中途半端に振り返ったのは、聖火崎のいる方向だった。



「あ、勘違いなさらないで欲しいので、一言だけ言っておきます」



 ぼやきは、そこそこ小さめの声だったのに、何故か乾いた風にも流されずに聖火崎の耳へとしっかり飛び込んでくる。



「僕は、天使ですが無神論者です」



「はい?」と口から飛び出そうになったのを寸での所で飲み込んで、聖火崎はカイルを真っ直ぐと見据える。今はなんとなく、そういう空気じゃない。



「......この世の全ての生き物は、多能であれど全能ではない。天界にいる人間共が崇め奉る神様とやらは、所詮神を自称する可哀想なお(つむ)の持ち主なんです」


「つまり?」


「......」



 聖火崎が咄嗟に言い返すと、逡巡(しゅんじゅん)するように軽く目を伏せて暫し黙り込んだ後、



「......やっぱり、なんでもないです」



 そうぽつりと言い残してから踵を返して、背中越しにひらひらと手を振って、カイルはゆっくりと歩き出した。



「......、何?」


「......」



 そして、聖火崎がその背中を見つめたまま呆然と立ち尽くしていると、肩に或斗がぽんと手を置いて、「もう帰ろう」と言わんばかりの視線を送ってきていたので、



「......とりあえず、帰るとしますか」



 そう一言だけ言ってから、"派手(?)な宣戦布告"という当初の目的を達成したようなしてないような感じのまま或斗の自宅へと戻ったのだった。



「え、せいかたん!?って、わ、ちょ、ちょっとあるきゅん血だらけじゃん今すぐお風呂入ってきてそんなんで作ったご飯とかボク絶対食べないかんね!!」



 1度に与えられた情報量の多さと、一応とはいえ敵方に着いている人物の強さにキャパオーバーを起こしそうな2人には、あまりの血生臭さに2人のいるリビングに駆け込んできた太鳳(たお)の文句は2人の耳を右から左へと抜けていった。




 ──────────────To Be Continued─────────────




ご精読ありがとうございました!!

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感想を書いてくれると嬉しいです!! 長編ですが、最後までどうぞお付き合い下さい! cont_access.php?citi_cont_id=311314775&s
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