31話6Part 晴耕雨読⑥
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「そ、それに関しては、隊長の私に責任があります故、どんな罰でも甘んじて受けまっ......「そうですねー、本来なら不敬罪で火炙りの刑にでも処して頂きたい所ですが......」
「っ、」
隊長はアズライールに向けて下げた頭を上げられず、言葉の続きを静かに待つ事しかできなかった。
「......大部分の責任は、自分の気の赴くままに勢いだけで彼らを葬ってしまった僕にあります。なので、気になさらなくて結構......いえ、寧ろ何かしらのお詫びをさせてもらいたいくらいです」
「......え?」
彼ら、そうアズライールに呼ばれたのは、アズライールの異才によって先程殺された騎兵達だ。
......いかに無礼を働いたとはいえ、一瞬で何の猶予も予告もなしに殺されてしまった彼らに対して、アズライールにも多少は感じるところがあったのだろう。
かなり遠回しながら謝罪の意を述べ、アズライールは未だに土下座している隊長と副隊長に向けて深々と頭を下げて、「命が金で買える訳ではない、というのは重々承知しているのですが......」とぼやきながら自身のウエストポーチを漁っている。
......そんな、アズライールの言動は、隊長達にとってはかなり衝撃的だった。
「な、なんで、そんな......」
「わっ、我々は、不敬な態度については不問......という、ことですか?」
「ええ、そういうことです。......今の貴方方の言動、態度も全てなかったことにしましょう。皇帝殿にも報告は致しません。これからも、何卒ご自愛専一になさって下さいな」
「「は、はい......?」」
訳はよく分からないが、とりあえず命拾いをした隊長と副隊長は、
「は、は、早くかっ、帰りましょう隊長!!」
「あ、そ、そうだな!!」
部下達の遺体の間を馬で器用に通ってから、森を突っ切って大慌てで南方地方騎士団の基地へと向かっていった。
「............あ、帰っちゃいましたか......」
丁度2人の姿が見えなくなった頃に、アズライールはウエストポーチから手を離して、ちらりと辺りを見回した。
周囲には騎士達の遺体とちらほら見える馬、遠くで膝を立てて座っている或斗が居るだけ。
風が少し吹きつけて砂塵が舞う中、アズライールはくるりと踵を返して、
「あすたろ〜っ!!」
「うわっ、」
砂が入った目をくしくしと擦っていた或斗の方にすたたたた......と勢いよく走っていき、がばっ!!と抱きついた。
「あ、目擦っちゃだめですよ!!傷がついちゃいますから!!」
そして擦っていた手をばっと掴んで、そのまま顔から引き離す。
「別に、すぐ治るんだから関係なくないか......?」
それに軽くむっとした或斗が少し苛立ちながら言い返すも、
「だーめーでーすーっ!!一瞬でも傷がつくのが僕は解せないんですから!!」
どうでもよさげにまた手を目に持っていこうとする或斗をがくがくと揺らして喚くアズライールは、先程までの底の知れないどこかミステリアスで大人びた雰囲気とは打って変わって、子離れできなくて子の往く先々に現れてはウザがられる親のようだ。
そんなアズライールと或斗の元に、
「......ねえ、すぐ治るってどういうこと......?ってかあいつらほんとに死んだの......?」
色々腑に落ちてなさそうに頭上に疑問符を乱立させた聖火崎が、周囲の警戒も解いてアズライールに諸々を問い詰めるべく近づいてきていた。
......当たり前だが、聖火崎は"別に今更何かしらが来る気配もなさそう......"という最後に周囲を遠方まで確認した時の憶測と直感に則って、警戒態勢を解いていた。
「あー、ベルさん......ええ、彼らは死んでいますよ」
「それは分かってるけど......一応、ちょっと1人1人確認させてもらうわ」
「構いませんけど、面倒では?」
「別に急いでる用とかもないし、敵の能力の詳細を探るための手間なら無駄だろうが惜しまずにかけてなんぼよ。不幸付与の異才を使われて死んだとしても、何が直接的な原因になって死んだのかを調べておいて損はないでしょ」
「それなら聖火崎、俺も手伝おう」
「じゃあ、あっちをお願いするわね」
「分かった」
「あ、あすたろが行くなら僕も手伝います〜♪」
......先刻、1万人いたとはいえ南方地方騎士団騎兵部隊の来訪を察知したように、魔力·神気抜きでの気配の察知もある程度は可能な聖火崎。
「......んー、やっぱり死因が分からないわ......」
「そうなんすよねー、センパイの異才って訳分かんないんすよねー」
「何?何かしらの不幸を付与されて死んだのなら、もしかしたら急性心不全とか知ってる現象が直接的な原因で死んでるかもと思ったんだけど......」
「センパイ曰く、死因は分からないそうっすよ」
「......見た感じ、特に外傷とか変に目が充血してたりとかもないし......って、え?」
臨戦態勢ではないにしろ、まだそこそこ気を張った状態で騎士達の遺体を確認していた聖火崎の後ろに、
「あ、どうもっす」
「......」
聖火崎(身長169cm)が普通に立った状態よりも2周りほど小さな、頭の上に垂れた犬の耳のようなものを携えた少年がちょこんと佇んで、聖火崎と同じように遺体を眺めていた。
「............NeutralGriff、の、誰......?」
最早驚くというよりただ唖然としたまま、とりあえず少年の着ている隊服がアズライールの物と同じだったのでNeutralGriffの隊員だろうと目星はつけつつ、聖火崎はぽろり、と少年にそう訊ねた。
「副代表、って言えばいいんすかね、センパイが代表なら。......オレは民間軍事組織NeutralGriff副代表の、ルース·ロヴァーグリーナっす」
「あ、ど、どうも......」
(......やばい、もしかしてこれ、NeutralGriffの全隊員来てるんじゃ......)
......敵兵に囲まれている。それも弱っちい雑兵などではなく、"6人で一国の軍をも壊滅させてしまう"と噂されるほど強いとされる、敵の精鋭部隊に。
大々的に宣戦布告した訳ではないが、皇国政府に命を狙われている立場の聖火崎にとっては、今すぐにでも逃げてしまいたいような状況。
少しずつ「じゃ、私はこれで......」とぼやきながらゆっくり急いでその場を離れようとしたが、
「あ、ルース!お前も来てたんだ〜......ん、ベルさん、何処へ行くんです?急ぎの用はないと先程お聞きしましたが......」
「え、ああ、いや......向こうの死体も確認しようかなーと思って......あはは、そうよね、あっちのはもうあんた達が確認したんだものねー......」
アズライールが少年......ルースに気付いて近付いてきたので、聖火崎は慌てて足を止めて取り繕おうとしたが怪しさ全開の答弁となってしまった。
─────────────To Be Continued──────────────
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