31話4Part 晴耕雨読④
ここまで読んでくれてる方ありがとうございます!!
まだまだ付き合うよっ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!
『......13代目魔王やその側近らと交友関係にあって、ルイーズのように自分が何かやって犠牲になるような物がない、貴方なら可能なんです』
『............え......?』
(私は或斗以外に、望桜や的李達とも友達だってどうやって......)
困惑する聖火崎に、アズライールからそれ以上何かを言われる事はなかった。
「はぁ、全く......」
......その代わりに、盗聴器はアズライールの不機嫌そうなぼやきを聖火崎の耳に届けた。
「......」
それは、とりあえず沈黙を決め込む事にした聖火崎への、とある警告のようなものであった。
「......散々お世話になってる分際で、敵と味方の見分けもつけられないとは......可哀想なおつむを抱えてらっしゃるんですねぇ」
「っ、」
アズライールが騎兵隊に対して大声で煽るように声をかけた瞬間、辺りの空気がずんっ、と重たくなる。
と、同時に、
「動くな!!」
「それ以上近づくと斬るぞ!!」
アズライールが視線を向けている側の騎兵達が、皆一斉に厳戒態勢を敷き始めた。
3000人程が馬に乗ったまま武器を構えて警告の言葉を大声で述べながら威嚇するも、アズライールは動じない。
「はぁ......」
「っ!!」
「近づくなと言っているだろう!!」
「警告が聞こえないのか!?」
それどころか深々と溜息をついて、騎兵隊の中で一番地位が高いと思しき人物を面倒そうに睨みつけながら、其方にスタスタと歩き寄っていくではないか。
これには騎兵達も狼狽えて、忠告をものともしないアズライールから距離を取るようにざっ、ざっと後退りし、アズライールの目線の先にいる人物......南方地方騎士団騎兵部隊の隊長までの道が自然と形成されていく。
そんな中で、アズライールに睨まれたままの隊長は、
「............お前、どこかで......」
アズライールの顔を凝視したまま、何かを思い返すように右手に構えた剣をそのままに固まっていた。
......地方騎士団のただの騎兵の1人とはいえ一応は勇者軍兵の端くれという身分だった隊長が、飽きる程聞かされた8000年前の話。
伝説の勇者と謳われる1代目聖剣勇者......ラディオール·N·セインハルトの1代目魔王·サタンを討伐するまでの記録。
ホログラムによる記憶映像と文で残されたその記録の中に出てくるのは、ラディオールを初めとする五唯聖の勇者達、サタンとその部下達、勇者軍の元帥、ウィズオート皇国初代皇帝etc......勇者軍の兵士であったり、魔王軍であったり、広告政府の人間であったりする者が殆どだ。
......その中で、3人。ラディオールが勇者軍や政府関係者以外で個人的な縁で仲間として連れていた人物が居たのだ。
1人は、レイヴン·Q·ティヴォリ。神気需要量はまちまちだったが、その分いかに神気消費を抑えて魔法を使えるかの研究に日夜心血を注ぎながら、ラディオールの魔王討伐に最後まで付き添った友人想いの優しい魔導師。
1人は、リオール·S·ウェルシュタイン。魔法は使えないし腕っぷしも弱かったが、その分巧みな話術でラディオールの魔王討伐の為の資金調達やら色々を円滑に進めて魔王討伐に裏方として大きく貢献した元商人。
そして、残りの1人は......
「......っ、隊長に、近づくなぁぁぁぁ!!」
「あ゛?」
「っ、」
「ったく、上の命令も聞かないで感情的になってんじゃねーよ」
「、ぁっ......」
ドサッ......
「............そんなんだから、自分の運にすら見放されんだろ」
......今、自身に向かって剣を振り下ろそうとした1人の騎兵を、見ただけで殺してみせたアズライールのように、相手を目線だけで殺せるような、アッシェ·C·フランチェスカと名乗る頭が異常に切れて体術も魔法もできる、申し分のない才能を持った天才肌の......他人に対して1ミリも興味がなく平気で人を殺し、それでいて自身によく似た"鏡写しの兄弟"とやらに異常に執着する天使の青年だった。
「な、死んだ......だと......!?」
「そんな、あいつは見ただけだぞ!!」
アズライールが先程までとは明らかに態度を変えて、目線を隊長から外して自身に攻撃を仕掛けた騎兵に向けた瞬間、騎兵はふっ......と力なく顔から地面に落ちて動かなくなった。
その光景を目にした騎兵達はざわめき始め、遠くで眺めていた聖火崎や或斗もまた、
『ちょっとあれ......まさか、あれがあいつの異才、他人を不幸にするってやつ!?ヤバいじゃないあれ......!』
『話には聞いていたが、いざ目の前にすると恐ろしいな......』
と、各々アズライールの強力な異才に驚かされていた。
「......あ、すみません♪ちょっと血の気の多い蟻さんが邪魔だったので、退けちゃいました♪」
「......」
目の前で小さな虫を潰すように容易く殺された騎兵の遺体は、剣をアズライールに振り下ろそうとした時と変わらぬ表情のまま地面に転がっている。
......騎兵を殺した時にはスッとした鋭い視線にズンと重たくてピリピリとした、"関わってはいけない"と感じさせるような空気を纏っていたのに、今は或斗に抱きついていた時のような人懐こくて明るい、天真爛漫そうな雰囲気のままにこにこと笑っている。
「......お前、アッシェだな」
そんなアズライールに、隊長は恐る恐る問いかけた。
......アッシェは、ラディオールがとある村を尋ねた際に、村の人々の遺体の前で目をきらきらさせて血塗れのナイフを眺めている所を見つけ、保護してからラディオールの個人的な"仲間"になったらしい。
その時、"どうして村の人々を殺したんだ"と、ラディオールは村人達の遺体と村の惨状を一瞥した後、アッシェに訊ねかけた。
アッシェが持っていたのは刃渡り10cm程のよくあるフルーツナイフで、村人達は全員心臓を刃物で一突きされて殺された後、顔から股にかけて一筋線を入れられてそこを中心に左右にベラっと皮を剥がされてそのまま放置という有様だった。
一撃で殺したにしろその後が惨すぎるし、老若男女問わず皆殺しにされていた惨状を勇者としてラディオールは無視できずに声をかけた。
そんなラディオールの問に対して、アッシェはこう答えたのだ。
「......ここの家にある宝石を手に入れるのに邪魔だったから、退けただけ」
「......」
「今でこそアッシェ·C·フランチェスカという存在自体が生死不明となっているからこそ呼ばれることもないが、アッシェには"|Blind Bizar《盲目の》rer Mörder"っていうあだ名がついてたんだ」
隊長は自身の投げかけた質問に答えぬアズライールに追い打ちをかけるように、そう声をかける。
すると、
「......あれ?どうして貴方がそれを知ってるんです?」
きょとんとした顔で、さほど気にしていないのか小首を傾げながら再び足を動かし始めた。
......大昔から"大量猟奇殺人犯"などではなくただ単純に"勇者の仲間の1人"として名が語られてきた、アッシェ·C·フランチェスカは、恐らく......いや、確実に目の前の大天使である。
そう、直観的に感じた隊長は、
「......近づくな......これは、警告だ」
やけに萎れた元気のない声で、アズライールにそう忠告した。
「あれれ〜?どうしたんです?さっきまでの威勢はどこに行っちゃったんですかぁ〜?」
「......」
「あは、もしかしてぇ、僕が目だけで人を殺せる人の感情が上手く読み取れない根っからの殺人犯だからって、怖気付いちゃいましたぁ?」
くすくす。そんな鼻につく嘲る笑み混じりに煽るように返されても、尚も黙り込む隊長。
「くそっ、舐めやがってこのクソガキ!!」
「1人殺せたからって、騎士1万人にガキ1人で適うと思うな!!」
そんな隊長に痺れを切らした騎兵達は、隊長の目の前に仁王立ちして、手を口に当てて上品を装いつつも気品のない嘲笑を零す青年に向かって次々と罵倒の言葉を浴びせた。
「......ふふふ、あはははっ♪」
......それが、彼らが自ずから命火を経つ運命へと足を掛けた......本来なら生きた状態で迎えていたであろう1秒後の未来にさよならを告げる事となる、最大の要因であった。
「政府に楯突いて無事で済むとっ......」
1人の騎兵が、先程アズライールに殺された騎士同様言葉半ばで口を開けたまま地面へと無様に転がり落ちた......
ドサッ、ドズドザッドサドスドサッ、ゴト......
『............嘘、でしょ......?』
「......は、.............?」
......否、隊長とそのすぐ横でアズライールに何も言わずに武器だけ構えていた副隊長を残して、他の騎兵全員が馬から落ちて土に塗れた。
ドザッ、という音が断続的に続く事数秒後、聖火崎のぼやきがテレパシーを通して伝わってきた事で、或斗は改めて"他人を不幸にする"異才の恐ろしさを痛感させられる。
「......あーあ、せぇっかく人が生かしておいてやろうかなーって思ってたのに、なーんで気を悪くするようなことしちゃうかなぁ......」
......アズライールのどことなく小さな"イラッ"を滲ませた笑いの後、約1万人はいた南方地方騎士団騎兵部隊の騎兵達が何の前触れもなく事切れたのだ。
─────────────To Be Continued─────────────
ご精読ありがとうございました!!