30話5Part 宣戦布告⑤
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「......大体は分かったわ」
「良かった」
或斗の記憶思念共感魔法が解かれた後、聖火崎はコーヒーを呷るように飲んでから深々と頷いた。
或斗は説明で疲れたのか、少し気だるそうに黒ごまクッキーを口に数個放り込んだ。
「......それで、」
「何?」
「お前に頼みがあるんだが」
「内容によっては断るけど、いいわよ」
真剣そうに聖火崎を真っ直ぐ見据えた或斗は、場のどこかぴりぴりとした空気に合わぬ爽やかな笑顔を浮かべてこう言った。
「......俺達と共に、天界の主を討たないか?」
「......それ、どういうこと?」
或斗の言っている内容と場違いな表情に、聖火崎は思わず声を上げる。
......或斗は今、天界の主......この世界を創ったとされる神を、自分達と共に殺そうと言ってきたからだ。
「お前が討ちたいのは、ウィズオートの皇帝とそれに味方する政府の奴らや貴族達だろう?平民から金を巻き上げ、気に入らない奴らは奴隷として生かさず殺さず酷使するクズ共を、国の運営陣から引きずり下ろしたいのがお前の目的のはずだ」
「まあ、そうね」
「......その、国の運営陣が今のように......国民の行動のほぼ全てを把握し、気に入らない奴には圧力をかけて反乱勢力の拡大を防ぐ。国民を軽い洗脳法術と、聖教徒教会の奴らの、これは神のご啓示である。という口車に上手く乗せて意のままに操る......こうなったのは、彼奴の所為でもある」
「そうなの?私は、細かいことは知らないんだけど......」
やけに爽やかな表情のまま話している或斗を、聖火崎は不思議そうにしつつじっと見つめてみた。
すると、視線に気づいたのか、或斗は笑みをより一層深めながらゆっくりと口を開く。
「......俺達はな、正直、天界で100年間無視されていたあの時期のことで、奴らのことをそんなに憎んではいないんだ」
「それは何となく分かってたわよ。だって、結構嫌な記憶っぽい昔のことを、あんたは淡々と語ってたんだもの」
「バレてたか......」
聖火崎の人を見る目の意外な鋭さに驚きはしたが、或斗は少し目を見開いた程度でそこまで反応は示さなかった。
「何度も言うようだが、俺達はあの時期のことを対して気にはしていない。2人だったということもあるだろうが、何より俺達は自分達の手を汚して、一応は地位?を手に入れた」
「あんたは堕天する前は熾天使お付の智天使、アズライールも審判天使の2番手ぐらいだと、結構偉い方よね」
「ああ。だから、今はそこまで......だが、」
「?」
或斗はふっと話すのを止めて、窓の外に視線を向ける。
......ビルや建物が立ち並び、その間を人や車が通り過ぎていく。皆が皆、誰かしらと何かしらの関係を持って生きていて、知らない人でも挨拶されれば挨拶を返す。
絶対安全ではないにしろ、皆が大体の日々平和に過ごせる程度には安全の確保がなされていて、自由に物事を言って様々な事を好きなように表現する事ができる。
実力がなくとも絶対に生きていけないという事はないし、課題はまだ残されてはいるが、社会的弱者の者達にもきちんと配慮をして生きやすくしようとしてくれる。
日本では当たり前のこの光景は、昔は天界に居を置き、その次に魔界大陸にて過ごしていた或斗であっても見慣れぬ光景だったらしい。
それを数秒間黙って目視してから、聖火崎も或斗の言わんとしている事を少し察して、聖火崎から口を開いた。
「今のままじゃあの世界はいけない、そう思ったのね」
「ああ。日本でも未だにLGBTに対する偏見であったり、虐待やいじめ等課題こそ残されているが、それでもかなり生きやすい国だろう?」
「そうね。ウィズオートに比べたら相当だわ」
「魔界や天界と比べてもそうだ」
「っぷ、」
「ははは」
皮肉ったような、でも皮肉と呼ぶにはあまりにド直球な故郷の悪口を言いながら、2人は暫し乾いた笑いを続けた。
「......あの世界は、実力主義だから一見よくは見えるが、その実力主義が絶対的すぎるが故に、成績上位の者から下位の者が虐められたり見下されたりすることは日常茶飯事だった。何かしらの実力ばかりを重視したせいで、天使は性格が多少なり曲がった者が多い」
「あんたもその1人ね」
「まさしくな」
「っくく......」
「ふっ......」
再び乾いた笑いが続けられる事、数秒後。
「はぁー......分かったわ、やりましょう」
「ありがとう」
聖火崎が深く息を吸い込んだ後にそう肯首し、或斗は素直に礼を述べた。
「......でもそのかわりに、今から付き合って欲しいことがあるのよ」
「な、何だ?」
いきなり立ち上がって何やら屈伸したり腕を伸ばしたりし始める聖火崎に戸惑いつつも、或斗もそれに続いて椅子から腰を上げる。
それを見て、聖火崎は満足気に悪どい笑みを浮かべた。
「私、奇襲とかって基本的にするのもされるのも嫌いなのよ。だからどーんと宣戦布告でもしてやろうと思ったのよ!戦いって、やっぱ派手な方が盛り上がるじゃない?」
「確かに」
「それに、私達狙われるばっかりで、此方から襲いかかったことまだ1度もない訳だし......悪徳役人の1人や2人でも潰して、反旗をばーんと掲げてやりましょ!!」
「そうだな」
聖火崎の悪どい笑みが或斗にも伝染って、
「くっくっくw、」
「ふふふふふ......ww」
いつしか2人共悪戯っぽく笑ってにやにやとしていた。
「という訳で、反乱軍4人目の兵士の入軍を祝って、」
「軍なのに4人......」
或斗からの冷ややかな視線は無視して、聖火崎は続ける。
「南方領主の館に、テレポートッ!!」
テレポート......と言いつつ、ポータルスピアを使って或斗達の家を出ていった。
──────────────To Be Continued─────────────
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