30話4Part 宣戦布告④
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だから、安心して針を取り出したのだが、
「......ん、だれ......」
「っ!」
至近距離で、彼が目を覚ましてしまった。
だが、彼は薄らと開けた目で近くにある俺の顔を見て、
「......ああ、なんだ......あすたろですか......」
そう、言ったんだ。......天界で生まれてから100年の間で、仲良くなって、共に時を過ごす仲になって、かけがえのない兄弟となったもう1人の......
......アズライールが先程命火を吹き消しに向かった、もう1人の名前、愛称を呼んだ。
それに驚いて俺が目を見開くと、彼は不思議そうに目を細めた。
「んん......どうしたんです?こんな夜更けに」
そして、完全に目を覚ましたようで、慌てて離れた俺を見ながらゆっくりと起き上がって、ベッドの縁に腰掛けた。
「......まさか、甘えに来たんですか?」
「......、......」
何故怪しまれないのか、何故俺の事を兄弟だと思い込んでいるのか、うまく思考の回らない頭でとりあえず頷いてそのまま立ち尽くしていると、
「ふふ、あすたろも寂しくなったとか......?でしたら、ぜひ隣に座って下さい」
「......ああ、えっと......そうだな」
自分の隣をぽふぽふと手で叩いて誘ってくるので、小さく口篭った返事だけ残して隣に腰掛けた。
「......ふふふ♪」
すると、満足気に笑みを浮かべ、
「っ、」
「......あったかい......♪」
いきなり、ばっと抱き着いてきた。そのままぎゅうっと締め付けられて、
「最近、あすたろとゆっくりお話する時間、なかったですもんね。僕も寂しかったです」
なんて、言ってきたんだ。
そしたら、
「......、」
「......ぅえ、ど、どうしたんです......?」
「え......」
......あの時の俺は、ぽろ、ぽろと大粒の涙を零して、何だか訳の分からない表情のまま泣いていたんだ。
いきなり抱き着いてきた相手は、今から自分が殺そうとしている人物で、自分達を今までずっと"いないもの"として扱ってきた奴らの一員で、赤の他人のはずなのに......ただただ、嬉しかったんだ。
でも、アズライールとの計画もあったし、自分ももはや慣れてしまってあまり堪えていない心の隅で、密かに"いないもの"を抜け出したくて仕方がなかった。
だから、
「......お前に1つ聞きたいことがあるんだが」
「なんですか?あすたろからの質問なら、何でも包み隠さずお答えしますよ♪」
「なら............俺って、どんな奴だ?」
軽く情報だけ得てから、苦しませぬよう一息で殺してやろう。そう、思ったんだ。
「あすたろは、優しくて、かっこよくて、強くて、可愛くて、成績優秀で、頼れて、最高の僕の兄弟です♪」
「........そうか、ありがとう」
俺から手を離してにこにこしながらそう答える彼を見ていて、本当に相棒の事が好きなんだな、なんてまさしく自分事のように、でもどこか他人事のように聞いていた。
「んー、お話していたいのは山々なんですが、明日の講義と訓練に支障が出ますから、そろそろお休みしましょう?また明日の講義の間にでも」
そんな俺に背を向けて、彼は再び毛布の中へと戻っていくべく移動し始めた。俺は迷わずその背中に抱き着いた。
「わっ、と......ふふ、ぎゅーってし足りなかったんです?」
「......」
「あすたろ、今日は随分と甘えたさんですね〜♪」
「......」
安心しているのか間延びした声でそう優しく声をかけてくる彼の項に、そっと針を刺した。
「っ、うー、天界にも下界の虫がいるんですかね〜?何かチクッとしました」
「......」
傷口が淡く青色に変色して、針の先端部に塗られた猛毒が入っていく。その様子を見つめながら、
「......けほ、ぁれ......なんか、視界が......」
どんどん脱力していって、重くなる彼の体が冷たくなるまで俺は背中から腕を回したまま、ずっとその場で固まっていた。
「......」
そっと動かなくなった彼の体をベッドに横にさせて、小さく手を合わせた頃に、
「××××、終わったんだね」
アズライールが扉を開けて入ってきた。
「っ、××××××、終わった............の、か......?」
......俺は、その時のアズライールの姿を見てぎょっとしたな。......だって、
「......お、前......それ......」
「ああ、これ?どう?」
「どう、って......」
「ベッドの上で冷たくなってる彼と、瓜二つでしょ?」
俺がさっき毒で殺して、ベッドの上に横たわらせた彼の見た目そのままのアズライールが、扉を開けて立っていたからだ。
唖然とする俺の元まで歩き寄って来たアズライールは、そのまま彼の体を担いで、
「僕達は今、代償を払ったじゃん。だから魔法が効いたんだよ」
「代償......何の代償だ、」
「さっき言ったでしょ?忘れちゃったの〜?効果付与魔法だよ。彼ら2人の命っていう代償を払って、僕達は彼らと瓜二つな見た目になるっていう効果を手に入れたんだ」
「............そう、か」
「うん」
満足気に頷いたアズライールを前に、俺はただただ落ち着かない胸を擦りながら座り込んでいた。
......自分の健康的な肌色の手を見て、視界の隅をちらつく薄紫色の髪に気を取られながら。
───────────────To Be Continued────────────
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