5話2Part (元)魔王の休日は大荒れです(?)②
ここまで来てくれた方、読んでやるよ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!
「アオンモールだーっ!!堺の!!」
或斗の移送魔法で1秒もかからずに到着したのは、堺市鉄砲町のアオンモール。営業開始から10分程しか経っていないにもかかわらず、既に人が山ほどいる。
3階建ての建物にたくさんの店が入っており、この建物内だけでも十分楽しめそうな雰囲気を醸し出している。
「何だ、貴様が常日頃通いつめている所と大差ないではないか」
「いや〜、でもやっぱ違う場所のこーいうとこ行きたいじゃん!!あ、まおまお達〜、市役所や自転車博物館とかじゃなくてごめんね〜」
太鳳が後ろを振り返り、申し訳なさなど微塵も感じられないが、一応手を合わせながら謝罪する。
「僕はここでも構わないけど」
「私も特に行きたいところはなかったから、大丈夫なのだよ」
「俺は皆で出かけられるだけ良いから、気にしなくていいぞ」
「そっか〜!良かった!んじゃ、まず何処から行くあるきゅん!」
「僕は適当に本屋でも行ってくる」
「私はCU(某大手携帯会社)を見てくるのだよ」
「......」
「......或斗?」
太鳳の振りに反応しない或斗。店の1つを見つめたまま固まっている。......刹那、やっと反応したのか後ろを振り返った。
「......はっ!す、すみません俺としたことが......」
「或斗、行きたい店あるなら行ってきていいよ」
「ほ、本当ですか主様......?」
「あー、あるきゅんどっか行くならボクも一緒に行く〜」
或斗が一心に見つめていたのはタピオカ屋。的李と鐘音は既に周りには居なかった。太鳳はスマホをいじっており、或斗の行きたい店にも的李と鐘音が居ないことにも気づかなかったようだが、テキトーな返事を返した。俺と唯一或斗の様子を伺っていた瑠凪は、早速自由行動の許可を言い渡した。
「うん、いいよ。俺には関係ないし。画材屋と機械店行ってくるよ」
「主様1人では不安です......」
「......えっ、なに或斗、まさか俺1人で店に行ったら、誘拐されるとか言いたいわけ?」
「え、だって神戸のアオンでも既に十数回声掛けられてるじゃないですか」
「もー!!子供じゃないんだから1人で店ぐらい行けるっての!!」
周りの人混みと自身の主を交互に見つめる或斗。......少なくとも初見だと絶対14、5歳くらいの子にしか見えないよな。都会は色々と物騒だから気をつけろって実家の婆ちゃんも言ってたし、やっぱそういうものなんだろう。或斗は瑠凪が心配だろうけど、行きたい店があるなら行った方が楽しいだろうし、太鳳もこっちには来ないだろう。的李と鐘音は論外。となると、適任者は......
「でも、本当に主様お1人では心配で......」
「だから店の1つや2つくらい1人で行けるかr「あーはいはい、俺が瑠凪と一緒に行くよ」
「ま、望桜さん......?」
「望桜?」
望桜の立候補に思わず頭の上に疑問符を浮かべる2人。いや、そこまで疑問に思うことでもないと思うんだが......
「1人じゃなきゃいいんだろ?俺も機械店には行きたいと思ってたんだ。スマホも良いが、やっぱパソコンが家にあった方がいいから買おうか悩んでたんだよ。これを機に安いやつ1台買うことにするわ。それに、さっきも言ったろ?俺は皆で出かけられるだけでも良いって。もうバラバラだけどなww」
「あ、ありがとうございます!!では......沙流川!行くぞ!」
「あいよー!!」
或斗は嬉しそうにぱっと顔をあげて、そのまま店の方に走っていく。太鳳もそれに続いた。残ったのは俺と瑠凪だけだ。何気に初の2人っきり(人混みは無視)。......やっぱり今日ってついてる日なんじゃねえの?
「......画材屋と機械店の道中まで一緒に行く。さすがに店の中までは来ないだろ?」
「機械店は中に入るけどな。ここからだと......画材屋の方が近いな。そっち先に行こう」
「おけ」
単調な会話が終わったあとに、続く会話はなかった。確かに仲良くはなったんだが、それも挨拶を返してくれたりするようになった程度だ。今が0。周りの雑音と騒音を無視したら、2人の間には気まずい沈黙がずっと流れていただろう。雑音と騒音がそれの中和剤だ。
そして数分歩き、画材屋の前に場所を変えた。画材屋もほかと変わらず、大量の人がせめぎ合っている。騒音と雑音も相変わらずだ。
「......あのさ、先に機械店の方行ってきていいよ」
「お前、機械店はもっと先......」
「そこにもあるよ」
「......あ、本当だ」
そして、俺は瑠凪を1人残し、画材屋を後にした。
「......なんか今、もにょっとした......柔多次式結界の結界壁すり抜けた時みてえ......まあ気のせいか」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「......ねえ」
「何ら」
ここ数十分、タピオカがある店を片っ端からハシゴして、ちょっと休憩......といったところでふと思い出したことを口にする。
大量のタピオカを頬張って、まるでハムスターみたいになっている或斗を横目で見ながら、周りを確認する太鳳。タピオカが原因なのか、変な話し方になっている或斗を気にせず、太鳳は続けた。
「......るったん達遅くない?」
「ほうら?」
「もう結構経ったよ?遅すぎないかな」
時計を再確認して、やっぱり遅いことを確認した。或斗にとっても太鳳にとっても大切な存在である瑠凪がこちらの世界でもし何かあったら、いやまさかそんなことは......と考えただけで冷や汗を流す2人。
「ほんなほろは......ん、そんなことはないと思うが」
「本当に攫われちゃったんじゃない?店の中とかで」
「店の中で?望桜さんも行かせたではないか」
「るったんのことだし、自分は画材屋を見るから望桜は先いっててとか言ってそうじゃん」
「......あ......ど、どどうしよううあ主様が......主様が!!」
あくまで可能性、これやってそうだな位の事として1例を挙げた太鳳だが、或斗にはかなり効いたようだ。キョドって呂律が上手く回らなくなってしまった。
「落ち着いてあるきゅん!!まずは葬祭屋だよ!!」
そしてその状況になった同居人を落ち着かせようとしている太鳳もまた、かなり焦っている。
「ああそうだな!ええっと......スマホってどう起動させるんだ!?」
「ここを押せば起動するよ!!それでこれ開いて位置情報サービスを......て、るったんGPS機能offってるね!!」
「あわ、あわわ......」
「どうしたの......?」
慌てふためく2人の後ろから、通行人の1人が声をかけた。2人とあまり身長に大差ない少年がその本人であるようだ。未だ慌てふためく2人を、少年の青い瞳が捉える。
「あ、えと、む、息子が居なくなってしまってっ!!」
「沙流川!?」
「そっか......若いのに大変だね」
「違います!!」
涙目で違うと主張する或斗を無視して、会話を続ける2人。
「ねえ、GPS機能がonになっていない携帯機器でも、現在地を調べることって出来るかな?」
「うん......できるよ」
「本当ですか!?」
「本当に!?」
期待に満ち溢れた顔で迫ってくる2人に、若干押され気味の少年は、太鳳のスマホを受け取った。そして設定画面から機種情報を少しだけ見た後に、物凄いスピードで画面を操作し始めた。
「......す、凄い」
「......携帯電話やスマホ等の機器は、電源さえ切れてなければ常に微弱な電波を発信し続けてる......そういう位置情報等の情報を保護してる向こうのセキュリティをこの端末で突破して、そういう情報を監視できるアプリをこのサイトからここに入れれば......」
「この場所は......」
「......神戸市鉄砲町アオンモール3階画材屋......の」
「スタッフ......ルーム......?」
地図には載ってない為、一般的に入れなさそうな部屋であることは見て取れるし、現にGPSの示す現在地はスタッフルームだ。
相手のスマホのカメラからの景色が見える、というものを使ってここ数分の記録を見ると、確かに関係者以外立ち入り禁止の札が隅にだが、しっかりと写されている。その後の記録は全て真っ暗だ。
「ありがとうございます!!」
「何をお礼すればいいかな?欲しいものとかあったら、5000円くらいまでならボク達が買ってあげるよ?」
「......いい、お礼は......多分、君達は後始末をしてくれればいい」
そう言って振り返った少年。左右で長さの違う襟足を弄りながら、少しずつ離れていく。
「は......後始末......?」
「......うん......それじゃあね」
少年は別れを告げてすぐに、人混みの中に消えていった。
「......凄かった、ね」
「......ところで、少年は全身和装にコートを羽織っていたぞ、軍服の」
「あ......そういえばそうだった気が......今時の日本であの格好はなかなか居ないよね......?」
......先程の少年は、上は着物に、長ズボンの裾は脛の中心程の位置で固定されており、その上から左は包帯で固定していた。踝上程まであるブーツと、着物の上からは軍服コートを着ていた。そこで2人が思ったことは......
......やっぱり今時の日本であの格好はかなりの変人くらいしか居ないだろ(でしょ)
「......と、とりあえずるったんのとこ行こう」
「......そうだな」
そう言ってその場を後にしたのだった......
───────────────To Be Continued──────────────
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