✨30話1Part 宣戦布告
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......1月4日、緑丘家にて葵雲のスライムASMR事件が起こった日の午後4時。
ブレイクタイムも少し遅めの時間である今、桃塚家にて、聖弓勇者である聖火崎 千代と、堕天使であり大悪魔の餅月 或斗はコーヒー豆の焙煎の音をBGMに、ダイニングテーブルを挟んで向かい合っていた。
「で、」
ズズズ......
「......あんたに聞きたいことは、大きく分けて2つあるのよ」
聖火崎がテーブル上にあった黒ごまクッキーを1つ摘んでから、そう、目の前の或斗にむかって神妙な面持ちで告げた。
「......」
黙ってクッキーを摘んでは咀嚼して飲み込むのを繰り返す或斗はそのままに、聖火崎は続ける。
「こないだ、東京湾でガルダ、レヴィアタンと戦った時に私達の邪魔してきた、あんたにめちゃくちゃ似てた奴は誰?」
「......」
「それと、異才について聞きたいのよ。瑠凪に聞けばいいかなって思ったけど、昨日こっそり聞いてみたらあんたの方が詳しいって言ってたわ。どういうこと?」
「......はあ、」
聖火崎の問いかけに、或斗は少しだけ眉を顰めてから溜息をつく。
「......俺に似てる奴、と言ったか」
「ええ。ついでに聞くけど、あんたガルダの異空間にいる時髪の色白かったし、一瞬誰か分からなかった。あれが、もしかしてだけど堕天する前の姿なわけ?」
「聞きたいことは2つじゃないのか」
「悪いわね、今思い出した」
「......」
飲み会の時に一緒に盃(?)を交わしていた2人とは思えぬほど、互いの事をじとっとした目で睨みつけながら会話を続けている。
聖火崎の謝罪に或斗は再び沈黙し、テーブル上の黒ごまクッキーがなくなる頃に改めて口を開いた。
「......俺は、天使の頃......結構前だが、その時はガルダの異空間にいる時の姿だった」
「やっぱりね」
「天界に、悪を彷彿とさせる黒や濃色はない。天使の髪は主様を除いて全員揃って明色だ」
「確かに、言われてみればそうね」
或斗は薄紫色......元の色でも白色、冬萌の髪の色は淡い茶色、天仕はピンク、我厘は黄緑......他の聖火崎が知っている天使も、全員が明色......明るい髪の色をしていた。
「なら、なんで瑠凪......ルシファーは、例外で藍色なの?」
「知らん。俺が生まれる前から主様は既に天界の神に続いて序列No.2にいたから、当然主様が生まれた時のことは把握していない」
「そう」
或斗の過去一で冷たい返答と態度にも、聖火崎は顔色1つ変えずに返事する。
「で?あんたに似てる奴は誰?」
「あれは......多分、アズライールだ」
「アズライール?......って、確か......審判天使の......」
「ああ。......お前、サリエルとセラフィエルが審判天使なのは知っていたか?」
「話には聞いたことあるし本でも読んだことある......わよ」
或斗の問に対して、聖火崎は少し言い淀みつつも返し、その様子を見て或斗は満足気に頷いた。
「そうか、ならいい。俺は今がどうなっているか詳しくは知らんが、天界では人間の悪事を裁く審判天使という分類の天使達がいる。その中で、1番偉いのはセラフィエル、その次がサリエルとアズライールだ」
「へぇー......」
「セラフィエルは主に指示出しと統率の係だから戦闘能力はないが、サリエルとアズライールは戦える。サリエルは、魔力で弱体化されると弱いが......アズライールは、弱体化は一切しない」
「はあ?天使に魔力が効かない?どーゆーことよそれ!!」
或斗から出てきた衝撃的な事実......天使であるはずのアズライールには魔力が効かないという事に、聖火崎は思わずガバッと椅子から立ち上がる。倒れた椅子の音が、リビングに響き渡った。
......天使は、神気のみを扱う生命体のはずだ。そのため、神気と対になる力である魔力を使われると、かなり弱体する。
そのため、葵雲達がガルダの作った魔力の充満している異空間の富士山頂にて戦った時、天使である我厘、天仕、来栖亭は周囲の魔力を打ち消すほどに神気を溜め込んでいた皇国所属の騎士·カエレスイェスと宮廷魔導師·ロキにかなり圧倒されてやられかけていたのだ。
基本的に強力な力を持っている天使達を相手にする聖火崎らにとっては、"魔力を使えば天使を倒しやすくなる"という事はかなり大きかった。
......はず、なのだが、
「アズライールは体質なのか何なのか......いや、多分異才だろう。アズライールは、他人を不幸にする、他人の幸運を奪う能力を持っていて、それのサブ?だとは思うが......神気と魔力の両方が扱えるんだ」
或斗曰く、天使であるアズライールは神気だけでなく魔力まで扱えるというのだ。
それには、聖火崎も開けた口が塞がらなかった。
「能力はそんなでもないけど......サブが強いわね」
改めて、聖火崎は驚きつつも或斗に対してそう言葉を返した。
すると、
「いや?あれは結構怖い能力だぞ?」
「は?」
或斗がこう返してきたので、不機嫌丸出しの声をさらっと上げてしまった。
「あいつは、他人の過去の幸運を下げることや、未来で不幸を起こすことができる。それに......」
或斗の悪い予感しかしない溜めに、聖火崎はただただ冷や汗を滲ませながら立ち尽くす事しかできない。
「お前、この世に安全に生まれてこられる確率と出産時の危険性、知ってるか?」
「え......まさか......」
「アズライールは、この世に無事に生まれてこられた幸運をなくすという大きなこともできるし、逆に今日足の小指を何かの角にぶつける位の不運を起こすという小さなこともできる」
「え、怖......小指ぶつけるとか怖......」
"この世に無事生まれてこられた事をなくす"とかどうたらこうたらよりも、身近で結構嫌な不幸である"足の小指を何かの角にぶつける不幸を起こす"の方に身震いしつつも、聖火崎はとりあえず椅子に座り直した。
「まあとにかく、あいつに能力を使われるだけで死ぬ時は死ぬということだ」
「でもそれ、強すぎない......?」
「まあ、詳しいことは知らんが、相手を殺せるレベルの不幸を起こすためには、相手に触れる、もしくは何かしらの傷を自らの手で負わせる必要があるらしい」
「あ、そうなのね」
聖火崎が頷いたのを見て、或斗は、
「......ふぅ、」
アズライールの能力についての説明は粗方終わったのか、小さな溜め息を1つ零して、黒ごまクッキーを1個だけ摘んだ。
「......で、後は......俺の見た目が天使時代とはあまりに違うから、それについてか」
「別にあんたに興味があるわけじゃないんだけど、今は天界についての情報ができるだけ欲しいの」
「そうか......まあ、いいだろう。長くなるがな」
「別に構わないわよ。仕事は6日までないし、あんたはそもそも仕事ないしね」
聖火崎の素っ気ないながらに興味ありげな、野次馬のテンションの返事にも動じずに、或斗はゆっくりと語り始めた。
──────────────To Be Continued────────────
ご精読ありがとうございました!!