28話4Part 異世界生物達の冬休み④
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「僕らの世界は元々、どっかの阿呆な神様が使いである天使に、人間達に魔族は悪いやつだって伝えてきなさいって言ったのが最初なんだ」
「........は、」
だが、そんな望桜の想像の斜め上の上を行く原初の大元の話に、望桜は口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。
「その時既に、人間達はある程度の文明があって、どういう訳か天使だとか神だとかそういった類の物を信仰してたんだ。それがやがて組織を生して、聖教徒教会ができたんだよ」
「な、なるほど......」
「その聖教徒教会ができて、その教えが元々信仰してた1部の奴ら以外の所でもそこそこ広まって信仰され始めた頃に、自分達が住んでいる大陸のずっと東に、自分達と同じような文明を持つ生き物が住んでる巨大な大陸があるって分かったんだ。......だから、そこに行って調査や現地人達と色々な情報や文化交換をすることに人間達は決めたってわけ」
「ふむ」
「でも、船は強酸性の海になんて浮かべたらすぐに沈むし、空を飛べるような機械はない。かといって人間じゃ空なんて飛べない......そんなふうに困ってた所に、人間達の進行する神の使いである、天使が現れた。......そしてその天使は、困り果てた人間達に、法術という技を教えたの」
「......そして、そんな人間のために貴重な技を教えてくれた、聖教徒達の偶像である天使が東にある大陸に居る奴らは......魔族は、悪いやつだって言ったってわけか」
「まあ、だいぶ端折って言えばそういうこと」
望桜が理解したのを察して、瑠凪はこくりと頷いた。
「当時からどうやったのか......なんでかは分からないんだけど、神気っていうものはあって、人間達は既にそれを電気やら色々を生み出すためのエネルギー源として使用自体はしてたんだよね」
「そんな神気の活用術が法術か......それじゃ、魔力の方はどうなんだ?」
「............分からない。分からない、けど......あれ自体は多分、もともと魔界大陸にあったんだと思う。起源とかは分からないけどね」
そう言ってはあ......と小さくため息をつく瑠凪は、その直後に自身の手を見やった。
「まあ、そんな感じで人間側が天界の奴らに思い込まされて、僕たちの世界の人魔の戦いは始まったってわけ。最初は、本当に何でもない一言だったんだ。それから始まったいざこざが、睨み合いになり、争いになり、そして8000年経っても尚続く確執とそれに伴う不定期的な大戦争に変わったんだ」
「うわぁ............改めて、言葉の力を思い知らされたわ」
「それ、知っとくとどの世界でも強いよね」
「だな」
そんな事を言いながら、望桜と瑠凪はそれぞれの飲み物を一気に呷った。
「......あー、長々と話したらお腹空いた。残ってる分食べよっと」
「俺もなんか、頭使ったら腹減ったわ」
そして、自身の取り皿に、冷めてぬるくなったハンバーグやらサラダを取って、各々のペースで食べきった。
しかしまだ足りなかったので追加で料理を取って食べる望桜の横で、瑠凪は鮭のクリーム煮をほんの少しとサラダを少々食べて、満足したようににこにことしている。
「え、お前そんだけで足りんの?」
「うーん......っていうかむしろ、これだけしか食べられないしな〜」
「え゛っ」
「......ちょっと、失礼なこと考えてない?」
......え、ま?そ、その量で腹いっぱい......?細っ......か弱っ......と、口には出さずとも、恐らく顔に書いてあっただろう望桜の思考を読み取って、瑠凪はぷりぷりと頬をふくらませて怒っている(望桜目線で推しフィルター付きで見たらめちゃくちゃ可愛い)。
怒らせているのにへらっとしている望桜の頬を、瑠凪は割と本気で抓ってやった。
「いだっ......くない」
「イラッ......お前のそういうとこ嫌い!!」
しかし、未だにへらへらとし続けているし、挙句そこそこ失礼な事をさらっと口にした望桜の頭に瑠凪渾身の手刀が振り下ろされる。
とすっ
「うん、この音は痛くないな」
「もおおおおおお!!何なの!?馬鹿にしてんの!?」
「してねえよ!!」
「っ、」
涙目になりながら怒りの声を上げる瑠凪に、望桜は間髪入れずに真っ向から抗議した。
いかにも真剣そうな表情で否定され、瑠凪は気圧されて少しだけ怯んで先程までの勢いを失ってしまった。
「............ただ、可愛いなって......」
「もおおおおおお!!!やっぱりほんっと......マジでそういうとこ嫌いっ!!!!」
正月三賀日最終日の明石の街に密かに響き渡る瑠凪の怒号。そんな大声に反応して、いつの間にか寝てしまっていた葵雲はむくりと起き上がった。
「......んー............おなかすいたー............zz」
......飲みに飲みまくり、食って食いまくった一同が解散したのは、葵雲のなんとも舌足らずな寝言が発せられてから約1時間後の、8時50分頃であった。
片付けはビール瓶4本にスピリタス丸1本、ワインやら焼酎やらをしこたま飲んでも尚平時と何ら変わらぬ様子で楽しげにしている或斗が粗方済ませ、残りは各々が私物を纏めて帰るだけとなった。
8時50分......およそ9時は高校生にもなると仲間内の集まりであればまだ早い時間帯ではあるのだが、あんな事件のすぐ後だし、ご両親も心配するからということで早めに解散することにしたのだ。
「或斗さん、いきなりだったのに色々ありがとう!!楽しかったよ!!」
「お時間があればまた、いつでもいらして下さいね。アポなしでも俺は年中暇な身、年中無休で大歓迎ですから」
「じゃあまた近いうちに遊びに来るよ!」
「あ、あれだけ飲んだのにまだ真面な答弁できてる......或斗さん凄い......」
「人じゃないから」
食後お菓子を食べながらゲームやら色々で遊んでいた梓が或斗と話している横で、感心した様子でそれを見つめる帝亜羅と引き気味な鐘音という絵面が出来上がっている桃塚家のリビングの床には、
「ぐがががが......ふがっ、むぐ......んがががが......」
品行も気品もへったくれもない鼾と格好で酒瓶を抱いて眠る、聖火崎が転がっている。
「的李、的李ー?」
「......う゛、ん......、......?」
パーティー後にようやく部屋から出てきた沙流川が部屋から持ってきてくれた毛布に包まって横たわる的李に、望桜は肩をぽんぽんとしながら声をかけてやった。
小さな呻き声を上げて薄く目を開けた的李は案の定寝ていたようで、望桜が反応を見つめていた数秒間の間でまたすぐに睡魔に攫われかけていた。
「こらこら、寝んなってww」
「......、ぅー......?」
「的李は酒に強いわけじゃねえんだな」
紅潮した頬と薄く手を当てた額から伝わる熱が示す通り、的李は今かなり酔っている。
目こそ小さく開けてはいるが、声にならない声を上げて横になったまま、至極惚けたままぼんやりと望桜の顔を見つめている。
「......タクシー呼ぼうか?」
そんな2人の様子を見兼ねた瑠凪が、スマホを片手に歩み寄ってきてそう訊ねてきたので、
「お、頼むわ!さんきゅ!」
望桜はぱっと顔を上げて返事し、感謝を述べた。
「分かった。............もしもし、」
瑠凪が別の部屋に移動して電話している間、望桜はその声をBGMにTnitterでも見ようかなとスマホを取りだした。
年明けすぐなので、新年1発目の推しの動画が......だとか、新しい1年の始まり!だとかそういったツニートを何となく眺めていると、手元がすっと暗くなる。
「望桜さん」
そして、頭上で名前を呼ばれたので、ぱっと顔を上げると、
「ん?梓ちゃん、どした?」
珍しく(望桜はそんなによく会うわけじゃないからそう言えるのかは分からないが)神妙な面持ちで望桜の方を見据えて、佇んでいた。
──────────────To Be Continued─────────────
ご精読ありがとうございました!!