27話4Part 友情④
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「あ、やばい......」
......あれは、味方ではない、よな......そう、望桜が考えていると、聖火崎がどこか慌てた声を上げたので、望桜は反射的にそちらの方に向き直った。
「聖剣、折れちゃった......」
「は?」
望桜の視線の先でしゃがみ込んでいる聖火崎の手にあったのは、
「......は?」
無惨にも真っ二つに折れてしまっている、聖剣·リジルの本体、ユグドラシルの枝であった。
「ちょっおまそれどうすんだよ!!」
「わっかんないわよどうすればいいのこれ!?」
......聖剣·リジルを含む五唯聖武器は、基本的には刃が折れようが1部が欠けようが"壊れる"事はないのである。
だがそれは、五唯聖武器の"本体"である宇宙樹·ユグドラシルの枝が壊れていない場合の話。
だから、普通は顕現させると出てくる部分で攻撃したり、敵の攻撃を弾いたり防いだりするのだが......
今回、聖火崎は咄嗟の判断で聖剣を顕現させたはいいものの、轟速で迫り来る攻撃(?)と思しき黒色の物体をあろうことか"本体"で受けてしまったのだ。
「くっ、こうなったら......」
人影を睨みながら、聖火崎は今着ているジャンバーのポケットからある物を取りだした。
「秘技!ガムテープぐるぐる巻き!!」
「は!?」
ダンボールに封をする時やものを仮止め、もしくは補強する時などに便利なガムテープ(使い切る直前)である。
聖火崎はそれを取り出すなり、聖剣の折れた部分どうしをくっ付けてぐるぐると巻き付け、
「よしっ!!」
聖剣が多少貧弱にはなったものの、普通に顕現する事を確認して普通に臨戦態勢を取り始めたではないか。
これには、戦闘できない·魔力は小悪魔並み·魔法使えない·頭の良さはそこそこ·運動神経もまあまあという、(元)魔王かお前!?となるようなスペックの望桜ですら開いた口が塞がらない状態である。
周りで見ていた鐘音や瑠凪、そして上空にいる葵雲とガルダも思わず頭を抱えてしまったり、呆れて唖然としてしまったりしている。
「それでいいのか勇者!?」
「いいのよ魔王!!」
......もう気にしない方がいいな......こいつはこういう奴だったわ......と望桜が割り切った頃に、
「望桜!早くさっき言ってたやつして!!時間ない!!」
瑠凪が望桜にレヴィアタンの魔法を解くようにと、目と声で急かしてきた。
望桜はそれに無言で首をこくこくと縦に振ってから、急いで未だ動く様子のない海獣......レヴィアタンの元に駆け寄った。
が、
「......なんだ、これ......?」
「っ、望桜!伏せて!!」
「おわっ!?」
刹那、葵雲から望桜に警告がなされ、望桜は半ば転げるかのように後ろに倒れ伏せた。
そんな望桜の頭上を、鋭い斬撃が一瞬で通り過ぎていった。
ザクッ、
キェッ......
......その斬撃は、残酷にもレヴィアタンの首の辺りをズバッと断ち切ってしまった。
レヴィアタンは小さな悲鳴のような鳴き声を上げた後、自身の傷から溢れるどす黒い血液が混ざった海に力なく浮き横たわっている。
「レヴィ......?」
その様子を、唖然とした表情で見ていた瑠凪を、
「瑠凪っ、こっちだ!!」
「あ、」
望桜は慌ててレヴィアタンの元から引き離した。
それと同じ頃に、
「あなた、敵なのは確実よね?」
「......」
聖火崎は黒い人影を警戒しながらそう、訊ねかけていた。その問いに対して、人影の主は答えない。
「ガルダはこの調子だし、ベルゼブブもこんな感じよ。レヴィアタンに至っては、今ので致命傷でも負ったんじゃないの?誰がやったのか知らないけど、少なくとも私達には弁解の余地もなしに殺すつもりはなかったんだけど」
ガルダは上空で葵雲から10m程距離を取った所で、人影の事をただただ見ており、ベルゼブブ......鐘音は、帝亜羅を連れて遠くまで離れてから、周囲に防護結界を張って警戒しつつ事の顛末を見守っている。
レヴィアタンは傍から見たら、瀕死どころか......という状態だ。
そんな3人を一瞥してから、聖火崎はそう言った。
「......、」
聖火崎の2つ目の言い草に、人影は口をゆっくりと開いた。
「......別に、今の僕達にも貴方達をすぐに殺すつもりはありませんよ」
「は......?」
人影の声は、若い男性......17、8歳くらいを彷彿とさせるようなとても若々しい声であった。
そして、丁度いいタイミングで晴れた靄の中にいたのは、黒色のフードを目深く被った、薄紫色の髪をした青年であった。
背には大きな白色の翼を生やし、頭上には壊れかけた、所謂"天使の輪"を携えた天使、それが人影の正体だ。
「......!」
......その姿は、今頃遠くのビルの上にてゆっくりしているであろう或斗に、酷似と言っても過言ではないほど似ていた。
「言っときますけど、貴方達のお仲間に僕と似た見た目の人がいたとしても、それは出自の問題であって僕が悪魔とかあいつが実はまだ現役の天使で〜だとか、そういうことではないですから」
「あ、そう......」
どことなく今の状況に似つかわしくない弁解を必死でする天使を、聖火崎はこちらも似つかわしくないしらーっとした視線で見つめる。
「ん゛ん゛っ、」
その視線を跳ね除けるように天使は咳払いすると、
「それでは、失礼します」
「......はあ、」
そう言って、ガルダの元に飛んでいき、彼女の手を掴んだ。ガルダはそれと同時に、小さくため息をついた。
「はっ、ちょっと待ちなさいよ!!」
聖火崎が慌ててそれを制止しようとした頃には、天使はガルダを連れたままレヴィアタンの元まで移動を済ませていた。
そして、
「アスタロトによろしく伝えておいて下さい。ではまた」
そう捨て台詞を残してから、ガルダ、レヴィアタンの2人を連れてゲートで去っていった。
「......何、あれ......」
後には、唖然としたまま立ち尽くす聖火崎と、上空でぼーっとしたままそれを見つめている葵雲の姿だけが残されていた。
─────────────To Be Continued──────────────
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