25話2Part Parallel②
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一方その頃、神戸市本町のヨシダパークハイム332号室にて、
「はっ!!」
アウトドア系ネット廃人少年·御厨 葵雲ことアスモデウスは、重たい謎の黒い箱を運ばされていた。......なにこれ、すっっっごい重いんだけど......!
「もっと力を入れられないのか、葵雲」
頑張ってはいるのだろうがどうしても一生懸命押しているようには見えないその様子に、
「むーっ!!僕火力は高いし空飛ぶのも得意だけど、力はそんなにないんだってばーっ!!っていうか、ラファエルも手伝ってよー!!」
「無理だな。こっちはこっちで忙しいのだから」
ラファエル......こと来栖亭 沁音は、呆れたように声を上げた。
「第一、仮にも分身である雨弥の方はそれを軽々と運べるのに、本体であるそなたの方が力がないとは一体どういうことだ」
御厨 雨弥......下界大悪魔である葵雲の分身(第3人格)で、純粋無垢で無邪気で、とにかく元気な子。......でもあり、人を家から引っ張りだそうとするという、引きこもり予備軍である葵雲にとってはあまり一緒にいたい相手ではない。相手が自分の兄弟のようなものである手
それが、先日......というよりはかなり前だが、望桜達一同がマモンの館にお世話になった際に、「3人で1つの体を共有するのは、我が強い汝らには苦痛じゃろう」と最新技術で作った"クローン体"に第2人格である晴瑠陽と雨弥をそれぞれ移してくれたのだ。
その粋な(?)計らいによって葵雲、晴瑠陽、雨弥は四六時中自分が体の主導権を握り、自由に好きな事ができるようになった。
それ以降、葵雲はノートパソコンでYouTubeネトゲをやりまくり、晴瑠陽はパソコンで何やらデータ打ち込みやらプログラミング、あとは何らかの機器のハック、雨弥はPlayStoreVitaでひたすら遊ぶ日々が続いている。
葵雲はまあ上記で述べた事を丸1日、それを1週間に6日ペースで行っている(残り1日はファミレスに行ってパフェを食べまくる)というスケジュールをずっとやっている。
そんなネトゲ廃人()生活をこなしている葵雲より、雨弥は週5日近所の顔馴染みの八百屋さんにて、客引きや接客、野菜の運搬などを手伝っている為運動はしている。
そのためか葵雲より雨弥の方が力が強く、この黒い箱が今332号室にあるのも、手伝いに行く前に雨弥が5階から3階に下ろす作業だけこなしていったからなのだ。
雨弥がいなかったら、おそらくこの箱はまだ5階と4階の間の階段にあっただろう。
「知らないよおー!!んじゃあ、その力持ちの雨弥くんはどちらにー?」
そんな雨弥の働きと八百屋さんの手伝いの事は知らない葵雲は、不機嫌全開で箱を押しながら来栖亭の方に視線をやる。
「ああ、神代の所だ」
「またー?」
「外に出て働いているだけマシだろう」
「なっ......ぶー」
来栖亭の思いがけない言葉の反撃にあった葵雲は、ぶすくれながらも箱に視線を戻した。
ズ、ズズ......
「てゆーか、なんでこの箱こんなに重いの?ってかこれなんなの?」
「ああ、以前ベルフェゴールから天津風が預かっていた物だそうだ。今役に立つであろう物が入っているらしいから、わざわざこっちに運んできたのだ」
「ベルフェ......なんで的李が、天津風に?」
「さあ知らん。ただ、何らかの考えがあってのことだろう」
2人は会話しつつ、黒い箱に視線を向ける。
そういえば、一体何が......運ばされている葵雲も、資料漁りで忙しい来栖亭も、思えば中身は知らない。とてつもなく重い箱、以外の情報もない。
「......開けるな、とは言われてないんだよね?」
「ああ。言われてないな」
開けるな、と言われれば開けたくなるのが人の性なのだが、開けるなと言われなければ当然「あ、開けるなとは言わないんだ」と考えてしまう。それ=、
「......開けてみない?僕らだって一応、関係者なわけだし」
「だな」
開けてもいい、という事だ。そう考えて、葵雲は迷わず箱の蓋であろう部分に手を伸ばして開けにかかり、来栖亭はそれをそばに来て見守った。
「......え、これ!」
「なっ」
葵雲の手によって開かれた箱の中には、2人共が1度も見た事がない、それなのに、ひと目で何が入っているのか分かるような物が入っていた。
「聖盾アイギス!?」
「な、何故ベルフェゴールがこれを!?」
......聖盾·アイギス。天界にある宇宙樹·ユグドラシルの枝を用いて作られた5つの武器、5唯聖武器のうちの1つの盾である。その5唯聖武器を武器として使用できる"選ばれし者達"こそが一般的に"勇者"と呼ばれる戦士達だ。
しかし、その"勇者"として選出されるのは何らかの形で勇者軍や政府軍と関わっており、武術の心得がある者の中からで、その中に"魔人"と呼ばれる魔力媒体で生きる人が入れられる事はない。
ましてや、的李......ベルフェゴールのような大悪魔が所持できる物ではない。それなのに......
「......あ、的李って、確か2000歳くらいだったよね!?」
「2000歳?となると、8000年前から所在不明だった聖盾を持っていたのは、何らかの形で他人から渡されたから......?」
「そうゆうことになるのかな!?」
「わ、わからん!!」
......聖盾は、8000年前の第壱弦聖邪戦争の際に持っていた、勇者 フォルドーラ·F·リリエルが使って以降はどこにあるか分からなかったのだ。
人間達の必死の捜索も虚しく、フォルドーラと共に行方不明になった聖盾は8000年間もの間行方を晦ましていた。
そんな聖盾を探していた勇者軍と皇国政府が唯一手に入れた情報は、"人間界西方でなくなった"という事だけだった。しかし、その情報は少なくともベルフェゴールが聖盾を持っていた理由を知るのに繋がる情報ではない。
「......まあ、ここで考えてても分かんないか〜......って、そういえば」
「ん?ああ......セラフィエルからの指示についてか?」
「そーそれ!」
......望桜達が行方不明になり、残ったメンバー全員が"どうやって助けようか"と頭を抱えていた時に、332号室に颯爽と現れた探偵·瀬良 冬萌......ことセラフィエルが残ったメンバーに残した指示、"富士山頂に向かえ"。
その指示が何のために下されたのか。そして、何故"厚生省に行け"という伝言が、晴瑠陽からセラフィエルに宛てて残されたのか。
真相は分からないが何かしらの好機には繋がるだろうし、何もしないよりはマシだ。そう考えた一同は、とりあえず1人を向かわせる事に決め、
「富士山頂には、ガブリエルが向かっている」
「我厘が行ったんだ〜?」
「ああ」
大天使·ガブリエル......こと我厘 重を適任だと判断して向かわせたのだ(ちなみに、選考理由はとくにない)。
普通の人間ならば少し日数を要するが、我厘は大天使だ。だから、地上を歩いて向かうのではなく空を飛び最短距離で富士山頂へと向かうべく旅立ったのが5時間前。
なにかあったらテレパシーで連絡するようにと伝えてはおいたものの、何も連絡が来ていないということは特に何も発見はなかったのだろう。
こうなると、余計に"富士山頂に向かえ"という指示が下った理由が余計に知りたくなるが、今は分からないので考えないようにしている。
「ねえねえ、」
「何だ?」
「そろそろ帰ってくる頃じゃない?にしても、我厘遅いね〜」
「ああ......」
そう2人が話していた時だった。
ガチャ......
「あ!噂をすればってやつだねー!おかえりぃー!!」
玄関のドアが開き、やけにくたびれた表情の我厘が顔を覗かせた。
「っただいま......」
「おかえり。やけに疲れた顔だが、どうしたのだ?何があった?」
そんな我厘に、来栖亭は駆け寄りつつ訊ねかける。
「ああ、富士山頂にね、ウィズオートの人がいたんだ。それでちょっと」
「え!?こっちの人じゃなくて向こうの人がいたの!?」
「そ、それなら何故連絡を寄越さなかった!!」
「......そいつの魔力·神気感知能力がバカ高くて、それでテレパシーはもちろん飛行するのに使う微量の神気すら探知されて、危うく見つかるところだった。僕1人だけで事を構えるのは、どう考えても得策じゃないだろ?だから、少し離れた所にあった神社まで引いてから戻ってきたんだ」
「なるほど......」
......テレパシーは下級の伝心魔法·法術ではあるものの、遠くの人と人の間で会話をするという機能自体は上級魔法·法術と同じくらい重宝されるためなのか(?)、魔力·神気の消費量が上級伝心魔法·法術である拈華微笑とほぼ変わらないのだ。
なので、使えば空を飛ぶ時よりも敵に存在を感知されやすくなるし、その上敵の感知能力がバカ高いとなると、かなり慎重に動かなければならない自体の場合、戻ってきてから直接口で伝えるのが最適化なのである。
その判断を我厘は行った。さらに、山頂から空を飛んで神戸に戻ってくるのも危険と判断したので、わざわざ離れた所にある神社まで徒歩で移動してから急いで飛んで戻ってきたらしい。
「あ、我厘〜!その感知能力がヤバい奴がさ、どんな奴だったか分かる?」
「かなり暗い場所に居たし、なんならこっちから相手に感知されずに視認できる距離が1kmぐらいだったからそんなにはっきりとは見てないからな?でも強いて言うなら......金髪で、結構重たそうな服着てて、あとはー......眼帯を、着けてた......かな?」
「んん〜............あ!!」
我厘からの報告は、その"感知能力がバカ高い奴"の見た目についての情報であった。その報告に、葵雲は大きく目を見開きつつ椅子から転げ落ちそうになりながらも、かなりの速さでパソコンを操作し始めた。
「ど、どうしたんだよ急に大きな声出して......」
「あ、葵雲?どうしたのだ?」
そんな葵雲の反応に、我厘と来栖亭は戸惑いつつもキーボード上でカタカタと踊る指をまじまじと見つめていた。
「ねえねえ、もしかしてそいつって〜......この子?」
刹那、葵雲の声と共にパソコンのディスプレイ上にとある少年の写真が表示された。
──────────────To Be Continued─────────────
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