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なにまお!(リメイク前旧作Rotstufen!!)  作者: 水都まる
第4章 (元)魔王と勇者の憩場に
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23話4Part Wolkenkratzer Fantasie④

ここまで読んでくれてる方ありがとうございます!!

まだまだ付き合うよっ!って方は下へ⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!


 


 ピンポーン



 ......が、帝亜羅がタクシーで向かったのは自宅ではなく、別の場所であった。



「はーいっ!!あ!!帝亜羅!!こっちこっち!」


「え、あ、わ......」



 ヨシダパークハイム1号棟の階段をあがり、332号室のインターホンを鳴らした。中の人が出てくる前にと、さっと目尻をぬぐう。そして、その直後にインターホンの音に反応して中から出てきたのは、黒髪に紫色の瞳の、1人の少年であった。


 ウルフカット、ともとれる髪型に向かって右側の横髪をかきあげてピンで留めた、あまり見かけない頭の少年は、帝亜羅の顔を見るや否や手を引いて中に案内した。



「あ、引っ張らなくても自分で行けるよ、葵雲(あうん)くん」



 ......御厨 葵雲(みくりや あうん)。その正体は魔王軍最高火力、空天の覇者の称号を持つ異世界の大悪魔·アスモデウス。悪魔型の時にはウィズオート皇国全体を覆い尽くすほどの魔力波を放ち、1晩で160万人の命火を消すことができるほどの火力。



「あ、そーお?いてっ」



 が、こっち(日本)では不良債権だのアウトドア系ネット廃人だの言われている、元気すぎるどこか掴みどころのない16歳の男の子である。


 今は現在進行形でダンボール箱に(つまず)いて、こける寸でのところで手をついてなんとか体制を保っている。



「......葵雲、気をつけて」



 立ち上がる葵雲の後ろから、葵雲......ことアスモデウスの第2人格、今現在は"みくりやの3つ子"と呼ばれている3人のうちの1人、御厨 晴瑠陽(みくりや はるひ)が手を差し出しつつ声をかけた。



「分かった!」


「あ、晴瑠陽くん!」


「......奈津生、調査はここまで、進んだ......」


「え、じ、情報早いね!私が頼みに来る前からやってるなんて......!」



 ......そう、帝亜羅がここを訪ねた理由は、超人的な頭脳を持つ晴瑠陽に梓捜索の依頼をしたかったから。


 ネットのハッカー界隈でも有名な"天才ハッカー"と呼ばれている(らしい)晴瑠陽ならば、街中の監視カメラのハックなど朝飯前、頑張れば国の政府のコンピュータですらハッキングできる。


 それほどの腕前ならばきっと梓の捜索の力になるだろう、そんな確信が帝亜羅の中にはあった。学校であまりにも驚きすぎて、悲しすぎて泣き崩れてしまったのは演技でもなんでもない。


 梓の事を心から案じているからこそ、自宅に帰るのではなくここに来た。何もせずにはいられなかったのだ。



「......うん。昨日、丞から......望桜が聞いて、望桜から、僕が聞いたから......先に調べてた......」


「じ、情報はなにか見つかった?」


「......昨日、神戸市北区......鈴蘭台2-21のピアノ教室に、18時23分12秒、に到着して、約30分後......19時02分45秒、に、ピアノ教室からでて......ファミリアマート、新神戸駅前店の......監視カメラに、19時31分12秒に写った後に......いなくなってる」


「ここ......」



 大型の固定型パソコンのモニターに映されているのは、聖ヶ丘學園や梓の通うピアノ教室がある神戸市北区鈴蘭台地区から中央区加納町新神戸の地図だ。それの横にいくつかの防犯カメラの動画が表示されていた。


 私立聖ヶ丘學園のバス停のところに設置されているカメラが"1"、ピアノ教室前のカメラが"2"そこから新神戸に辿り着くまでの監視カメラ、合計で400台近くのものにそれぞれ番振りされている。


 晴瑠陽は"2"と番振りされた監視カメラの映像と位置を指示し、その次に同じように、今度は梓が消えたところを(うつ)していた監視カメラ"385"から"392"までの映像と位置を指さした。


 "385"から"392"の監視カメラのうち、"388"から"392"はファミリアマート新神戸駅前店と、()()()()()の間の道路を高い位置から広範囲に渡って5方向から撮すものであった。


 そして、その映像に映っている場所は......



「......私の、家......?」



 ......神戸市中央区加納町の新神戸駅の近くにある、帝亜羅の自宅の前の通り。


 新神戸駅前店のファミリアマートが道路を挟んで向かいにある帝亜羅の自宅の、道路を撮した監視カメラの映像では、5つ全てに梓がまっすぐに帝亜羅の自宅に走ってきているところが映っていた。


 ところが、帝亜羅の家がある方から撮っている"391"と"392"のカメラからは、ファミリアマート新神戸駅前店道路沿いに停めてあった車の影に入った直後、梓の姿はどこにもなくなってしまっているように撮されていた。


 一方で、"388"と"389"と"390"のファミリアマート側から撮っているカメラからは、車の前を横切ろうとした瞬間に忽然と姿を消してしまったように見える。


 ......梓がいなくなる瞬間の映像は、見ているだけで帝亜羅の胸をじくじくと痛ませた。



「......どういうこと?梓ちゃん、うちに来ようとしてたの......?」


「......多分、梓も何かを......感じ取って、自宅より、近い奈津生の......家に、来よう、としてたんだと......思う......」


「......梓ちゃん......」



 ......友達が、どこまでも明るくて怖いもの知らずな親友()が、いざ危ない目に会いそうになった時、咄嗟に自分を頼ろうとしてくれていた。


 その事実が帝亜羅にとっては嬉しいようで、胸を押しつぶすほどの重圧だった。


 ......高校に入ってから知り合った、私にとって唯一無二の親友。そんな親友が、二度と帰って来なくてもいいの?


 帝亜羅の中で、ふつふつと"どうしようもない怒り"が湧き始めていた。



「......で、奈津生、今の動画で......気づいて欲しい、ことがある......」


「......え?」


「......これ、日本の一般、常識界どころか......科学的にも、ありえない......移動の仕方と、拐われ方、してる......」


「......え、そう?んーと............」



 晴瑠陽からの指摘を受けて、じっと考え込んでみる。


 ......マップ等で出てくる道順だと、聖ヶ丘學園のある鈴蘭台から帝亜羅の家がある新神戸駅前まではおよそ9.6km、車で20分ほど要する。もちろん、徒歩だともっとかかる。


 そして、梓の通うピアノ教室があるのも鈴蘭台。マップによると北鈴蘭台にある事になっている。そうなると、鈴蘭台よりも遠いという事になるし、それに比例して所要時間も増える計算になる。


 そして例のあの時間の監視カメラには梓の両親や親戚、さらには帝亜羅の母親の車も写っていない。それ(プラス)、偶然かタクシーやバス等の姿も写っていなかった。


 つまり、梓は全て徒歩で移動している。徒歩ならば、北鈴蘭台から新神戸までは2時間ほどかかる。


 梓が北鈴蘭台のピアノ教室を出たのが19時2分、そして帝亜羅の家の前を撮した"388"から"392"の監視カメラに映ったのが19時31分。ということは、北鈴蘭台から新神戸の帝亜羅の自宅まで、徒歩で30分で移動した......?



「......あ、車を使わないと無理な距離、なのに......梓ちゃんは"徒歩"で家まで移動した、それも......さ、30分で!?そんなの絶対無理だよ!!」



 ......そう、30で北鈴蘭台から新神戸までの移動は、"日本の一般常識界どころか科学的にも絶対無理"なのだ。



「......それも、だけど......あと1つ、ある......」



 それに気づいて声を上げた帝亜羅に、晴瑠陽の指摘はまだ続く。



「......あ、」



 ──『一方で、"388"と"389"と"390"のファミリアマート側から撮っているカメラからは、()()()()()()()()()()()()()()忽然と姿を消してしまったように見える。』



「......一瞬で、姿を消した?」


「......そう、どう考えても......おかしい、よね......?」


「本当だ!!気づかなかった!!」


「......気づいて......なかったの、不思議......」


「あ、確かに......そういうとこ、私鈍いんだよね......」


「......そう」



 帝亜羅のどうでもいい新発見に、晴瑠陽はいつもと何ら変わらぬ相槌を打った。



「......で、さっきまでの、ことを踏まえると......」



 そして、その直後にパソコンの方に向き直り、指でモニターをつーっとなぞった。


 袖からちらと覗く葵雲とは色が全く違う白い細い指は、ある1箇所の施設を指し示した。



「......異世界(ウィズオート皇国)の、政府の奴らの、仕業......って、ことになる......」



 そうぼそりと静かに、しかし何かを決定づける大事な台詞にぴったりな強さを兼ね備えたまま呟いた。




 ─────────────To Be Continued──────────────




ご精読ありがとうございました!!

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