✨21話1Part 三界等立と(元)魔王VS子猫
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「......あ、ルイーズ!!......て、え?」
聖火崎が屋敷に戻ると(フレアリカは途中で眠ってしまい、今も車の中に居る)、そこには輝く緋色の髪に翠色の瞳を持つ5唯聖勇者の1人、ルイーズ·R·エウリコットが聖槍顕現のための依代である加工枝を握って立っていた。
......が、彼女にしては珍しく、女物の豪勢なドレスを身にまとっている。女戦士にしては細く鍛え上げられた足を薄いレースが覆っており、それの内上部には茶色で短めのフィッシュテールスカートを履いている。豪奢なジュエリーが飾られたそれに負けず劣らず、トップスもまた豪華だ。
その身なりに、聖火崎はまず目を見開いて静かに驚き、そのままの顔できょどきょどと返事をしている。
「お、ジャンヌ!......あの後、すぐにここに向かったと門番に聞いたのだが、大丈夫だったか?」
「え、ええ。この通りよ。む、むしろそっちが大丈夫だったの?」
「ああ。アヴィスフィアの件については、やはり思うことが多々ある。が、いつまでもめそめそしていては彼女が悲しむしな。......にしても、そんなに挙動不審で、どうしたんだ?何かあったのか?」
「見慣れない格好をしてるから......」
女っぽい格好をしないルイーズのドレス姿は、聖火崎の脳裏にしっかりと焼き付いた。そして......
「そ、そうなの......って、る、瑠凪!?」
「はーいあっちあっち!ここに運ぶなよ、庭園東口の倉庫に運べって何回も言っただろ!ったく......あ、聖火崎......」
「あ、主様?」
だれかに指示しながらトコトコと歩いてきた瑠凪もまた、聖火崎の見慣れない格好をしていた。......真っ黒の軍服に黒い短パン、片足のみ同色のタイツを身に纏い、全体を包むように漆黒で金色の刺繍が所々にあしらわれたコートを羽織っている。
スニーカーと指ぬき手袋も黒と、全身真っ黒な姿の瑠凪は、聖火崎の姿を視界に捉えるなり共に歩いてきた或斗の背に隠れてしまった。
「......ど、どうなさいました......?」
「別に......」
「なら隠れなくていいじゃない。どうせ戦う時には、お互い軍服なんだから。......ってか、その手の物騒なものは何よ!」
1歩1歩近づいてくる2人を眺めていた聖火崎が指摘したのは、或斗の右手に握られている銃。大人の男性が手を目一杯広げたのと同じぐらいの大きさである、聖銃よりも大きな銃。
「ああ、これか?......これは......げほっげほっ、大昔にウィズオート皇国群島東側で作られていた銃を、復元して使えるようにしたものらしい。確か......モスキート?」
「......蚊?その突き出た銃口でグサッと刺すの?」
「......は?」「......は?」
「あー、ベレッタ·Modello1938Aっつー銃だ。愛称がモスキート。おはよう聖火崎!半日見てなかったけど、元気そうでなによりだ!」
何言ってんだあんた、と言わんばかりの表情でお互いを眺める聖火崎と或斗の間に高らかと声を上げながら入ってきたのは、下界13代目(元)魔王にして歴代最弱魔王と呼ばれている青年·緑丘 望桜だ。
「(元)魔王から元気に挨拶される勇者......私今、デジャヴを体感したわ」
「何でだよ。そこは未視感じゃないのかよ」
瑠凪のツッコミを耳に入れてもなお、うんうんと頷き続ける聖火崎は、車の中から聞こえてくるフレアリカではない声に、あー、そういえば......と、望桜達を呼びつけて、
「的李と帝亜羅ちゃん、鐘音、マモン、それからガブリエルを呼んで、会議室を借りてちょうだい」
「え、いきなりなんだよ」
「天使を捕まえたの。それもガブリエルに負けず劣らずの神気を持ってる天使。それなりに上位の天使と見たの。天界についての話を聞くにはうってつけだわ」
瑠凪の講義とも取れる声を完全無視した聖火崎は、つかつかと車の方に力強く歩みを進めていった。そして車のドアを開き、縄で縛られた赤毛の天使の首根っこを掴んでずるずると運んでくる。
「うわ、お前縛ったのかよ。容赦ねえ......」
「当たり前よ。殺されかけたし、私の大事な友達にも怖い思いをさせたんだもの。同種だからって酷いことをするつもりはないわ。ただ、話を聞かせてもらうだけ」
冷徹な視線を赤毛の天使の方に向けた聖火崎は、にやりと意地悪げに笑みを浮かべて見せたのだった。
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「あー......頭痛い。或斗、頭痛薬取って」
......兵庫県明石市南明石のマンションの一室。綺麗な室内は年明けに向けてとクリスマス前に間に合わせるために早めに行った大掃除のおかげでピカピカ。オシャレなインテリアも暁の日光に照らされていつも以上に眩しく見える。
その一室内にあるリビングキッチンにて絶賛稼働中の炬燵の中に下半身を入れてぬくぬくと過ごしている堕天使は、藍色の髪を乱雑に束ねた頭のまま液晶タブレットを下敷きにするのにも構わずに天板に突っ伏し呻き声を上げた。
その堕天使に或斗、と呼ばれた青年は近くにあった頭痛薬をぱっと取って手渡すと、その堕天使に心配そうに声をかけた。そして堕天使の方に手にドリンクを持ったまま近づいていき、
「大丈夫ですか?主様......?」
「あー......分かんない、ただ日本の神事が侮れないって事だけはわかった、何がクリスマスだよ......頭痛い、怠い、動きたくないぃ〜......」
そのまま炬燵に足を入れ、未だに呻き続ける瑠凪の返答を聞いて"メリークルシミマス"が頭にちらついたが無視し、気休め程度に部屋のカーテンを閉め切った。
......まだ日の出直後という早朝も早朝を極めきったような時間帯であるにも関わらず、クリスマス→新年の日本の毎年恒例神事ラッシュによる神気過多は既に猛威を振るいまくっている。しかもまだそのラッシュの1番手前、クリスマスだ。クリスマスでこれでは、これから先が不安で仕方がない。
「今日、シフト入ってなくて良かったですね。......けほけほ、」
「ほんとにねぇ〜......」
「......え?」
そしてそのまま続けられる2人の会話に素っ頓狂な声を上げて反応したのが、2人の同居人、通称"ニートJK"沙流川 太鳳だ。言葉通り『え?』って顔のまま2人の方を向き直った彼女は、2人の言葉に異論というか自室との相違点というか、とにかくそーいったものばかりだと言いたげに口を開いた。
「いや、いやいやいや」
「ん?」
「どしたの太鳳、気でも狂った?」
「んんー、もしかしたらそうかもしれな......じゃなくて、るったん確か今日、シフト入ってたよね?」
「お前は何を言ってるんだ?」
「え、ボクがおかしいの!?............あー、いつものパターンね。はいはい」
しかしそれを言ったら言ったで、彼女の同居人2人は"お前は何を言ってるんだ"とばかりにわざとらしく小首を傾げてなんとも不思議そうにしている。
そして彼女もこの空気に覚えがあるようで、慣れた手つきでその場の空気を軽くあしらった。
「ところで......あるきゅん、その体勢とドリンクは一体......?」
そしていつの間にやら呻き続ける瑠凪を腕の中に抱き込み、ぎゅーっと抱きしめる或斗に太鳳はつっこみながらもソファから炬燵に移動した。
「ああ、わらび餅ドリンクだ。あとは......1日の主様分補給......と、魔力補給」
「普通に補給できるんじゃないの?ってかいつものタピオカじゃなかったのね!?」
「確かにできない事はないのやもしれんが、俺はこれで十分。むしろこっちがいい位だからな」
「相変わらずるったん好きだねぇ......」
そう言って半ば呆れながら瑠凪の方に視線を移す太鳳。
「うー......ぅおえ、なんか気分悪くなってきた......お仕事できない、むり。神気のばか、ばかー......ぉえ、」
自身の体調不良の原因である"神気"にぶちぶちと文句を言いながら、或斗の腕の中でぎゅっと縮こまる瑠凪。顔色は既に蒼白を通り越して土色だ。その様子を見兼ねた太鳳が、スマホ片手に或斗に声をかける。
「ねーねー、るったん本気でつらそうだから救急車呼んだら?ってか前にもまおまおにそんな事聞いた事あるんだけど」
沙流川の言う"まおまおにも聞いた事がある"とは、まだ葵雲に会う前に瑠凪が職場で絶賛体調不良(あの時は魔力停滞)でとてつもなく苦しんでいた時の事だ。あの時も"同居人がやめろと言うから"という理由で救急車を呼ぼうかという断ったのだ。
「お前は馬鹿なのか?主様を魔力停滞や神気過多で日本の病院に入院させたとしても、原因不明のままとりあえず程度に点滴を打たれるだけだ。更には身体中の隅から隅まで精密検査された挙句、高額な"検査代"と"入院代"をもっていかれるだけなのだぞ!?うっ、げっほげほ」
「後半はドラマの見すぎなとこあるかもだけど......でも、それだと出費が痛いからって理由でもとれるんだけど、あるきゅんだったら普通はお金よりるったんを優先するよね?」
或斗のちょっと滑稽じみた例え話に軽く触れながらも、目の前の堕天使に理由を単刀直入に訊ねた。
「だから、主様の体についても優先しているではないか。主様が下等生物である人間ごときに、身体中を触られまくるやもしれんのが俺は嫌なのだ。それに医者に係るなら、日本の者ではなくラグナロクの者にするに決まっているであろう」
「あーなるほど。日本の医者じゃどっちみち神気過多解決できないもんね〜。そもそも1発打っ放せば治るし」
「そういうことだ」
やっと理解した様子のニートJKに満足気な笑みを浮かべた或斗は、腕の中で未だに呻き続ける主人の方に向き直った。
「......うぷ、うぉえ......」
「......今日はお粥だな」
口許に近くにあったタオルを当てて、必死に耐えている瑠凪の様子を見て、或斗はそう、残念そうに呟いた。
「そーだねー......ねえあるきゅん、ボク達もご飯、おかゆなわけじゃないよね?」
「あれは簡単だし、費用もかからん」
「え、え?」
「主様はオムライスが好きだ。だが体調不良時にオムライスは重いし、かといってお粥も白一色だと味気ない。卵がゆだな」
「え、ええー!?ボク達も!?ボク達だけでももっとしっかりしたの食べようよー!」
「却下。今日は一日お粥だ!!......けほっけほっ、」
「やだーぁ!!」
太鳳の講義の声を華麗に無視した或斗は、時折咳き込みながらも自身のスマホのカレンダーアプリの予定の欄に"ほうれん草、ヨーグルト、ごま、アーモンドチョコを買う"と書き足したのであった。どうせすぐ行くけどな、と内心ぼやきながら。
「とりあえず、買い物に......」
そして、そう言いながら12月23日の予定欄から、12月のカレンダーの所に戻ったところだった。
「......あ、そういえば......」
クリスマス、そう赤字で書かれている横が、小さくサンタやらトナカイやらの絵文字でデコレーションされているのが、或斗の視界の隅に入り込んで来た。
───────────────To Be Continued─────────────
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