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家光との茶の湯と伊達政宗の草履取り

大御所の秀忠が亡くなり、名実ともに将軍となった徳川家光から、あるとき茶の湯のお誘いがあった。

一緒に呼ばれていたのは伊達政宗と島津忠恒(しまづただつね)。どちらも歴戦の外様大名だ。

そして三人ともが茶の湯を愛する者たち。いやぁどんな茶会になるのかなぁ。楽しみだ。


待合で談笑していると、ボーンボーンと銅羅(どら)の音が鳴る。

準備オーケーいつでも入ってきて!という合図だ。

年下とはいえ流石に将軍からのお誘いだ。にじり口から茶室に入るとき、気持ちにじり口をおし(いただ)いて俺は入った。

別に見てもらおうと思ってやったことではない。でも家光は見ていたようだ。

お茶のお点前がある程度進んだところで、


「なぜ、にじり口から入るとき、押し戴いていたのですか?」


と聞かれた。


「いえ、家光公がお触りになったところですから自然と」


と答えたところ、家光は「私に対してそのように自然に敬意を示してくれるのは嬉しい」と、とても感じいってくれた。

家光の心証もよくなったようだし、このお茶会は成功だったね。


でも裏では、ちょっとしたトラブルが起きていたらしい。

このお茶会では、江戸城内の数奇屋の御門の入り口までは草履取りを一人連れてきてよかったのだけど、そこから中は自分一人だけで入るという決まりだった。

俺は草履(ぞうり)取りとして、お気に入りの伴八矢(ばんはちや)を連れて行っていた。

茶の湯がそろそろ終わるだろう時刻、八矢は俺の草履を持って門まで向かった。すると、お堅い役人が「中には絶対に誰も入れてはならない!」と厳しく足軽に伝えていたらしく足止めを食らってしまったらしい。

八矢は


「武士が主人を裸足にして帰らせるなんて、死ねというのと同じだ!」


と眼を見開いて、脇差を引き抜き無理やりに中に入ったとのこと。島津家の草履取りもこれに続いて入っていったそうだ。でも可愛そうだったのが伊達家の草履取りだ。彼だけはそんな無茶をして処罰を受けるのが怖くて、なかなか後に続いて入ることができず、門の外に立ったままだったらしい。


そこに俺たち三人が茶会を終えて一緒に出てきた。

伊達政宗はなぜ自分の草履取だけがいないのか意味がわからず、


「これは一体どういうことだ」


と困っていたので、俺も何があったのかよくわからないままに八矢に命じて予備の草履を出させた。


「おかげで裸足にならなくて済んだ。かたじけない」


礼を言って伊達政宗は帰っていった。


その場ではこれだけのことだったのだけど、聞くところによると、その後、伊達政宗はその草履取りを成敗するよう命じたそうだ。

伊達家の草履ぞうり取りは、「殺される前の最後のご奉公として、役人を連れて利常様の草履取りへお礼に伺いたい」といってお礼の目録を送ってきた。翌日、実際に伊達家の草履取りと役人が訪ねてきたとのことだったので、


「俺に構わず八矢の小屋へ行くように」


と伝えると、さっそく神田にある八矢の屋敷までやってきた。


「え、何これ。こんなの草履取りの家レベルじゃないし」


そりゃそうだろう。伴八矢は5千石だ。玄関前には与力の家臣たちが何人も詰めているし、八矢も茶人だから屋敷も凝った作りになっている。


「私たちは八矢様に直にお会いするには身分が低すぎます。なんて恐れ多いことを!」


と言って、大慌てで伊達家の江戸屋敷に戻り、政宗にそのことを伝えた。

その後、政宗はうちの江戸屋敷までやってきて、


「草履取りにそれほどの人物を連れていたとは恐れ入りもうした。うちの草履取りに同じことをやれなんていった私が間違っておりました。草履取りは許すことにしました。今回の出来事は利常殿のおかげです。」


そういって帰っていった。

普通はもっと身分の低い者を連れて行くんだろうが、将軍のお茶会なので茶人の八矢を連れていって良かった。

面白いこともあるもんだね。



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