レイヤーは奥が深い
「イヤー、無理だろう?」
翌日の放課後誰もいなくなった教室でボクをレイヤー世界に勧めた高志に、昨日うちに黒崎愛音らしい子が来た事などは話さずに、ただセーラーピンクに出てくるナイトさまをコスプレしたいと言ったところ、ずばっと拒否られた。
「え?だって、仮面してるし…」
高志にこんなにはっきり否定されると思わずもぞもぞと答えると、チッチッチ、と舌打ちして、甘いよ甘いと言われた。
「あのなー、仮面してるから顔の半分が隠れてるからコスしやすいとか、そんなの甘いよ。いいか、世の中にはそんなキャラ結構いるだろう?そんな事言うなら例えば、小学生のくせに探偵やってるアニメに出てくる怪盗とかだって簡単に出来るって事になるだろう?これ見てみろ」
鞄から取り出したスマホで見せてくれたのは、高志がフォロワしているレイヤーさんたちの画像を見せてくれた。
そこには、美しい怪盗達が各々の決めポーズを取っている姿が写っていた。
え?何これ?
想像以上の美しいレイヤーさんが写っている。
もちろん、CG加工されている物も結構あるが、それでも元がちゃんとしてなければここまでならないだろう。
しかも…。
「こんなにキレイだけど、これって男だよね…?」
何でこんなに顔小さいの?
何でこんなに肌キレイなの?
頭の中には何で?何で?と言う疑問が頭の中をぐるぐると駆け回る。
「ああ、男だな、オレ達と同じ男」
いや、もう人間かどうかも疑うぐらいのレベルだぜ。
「彼等は心からそのキャラに成りきるために人によっては、スタイル維持のためにイベントの前日は断食する人もいるほどだぜ」
「ほぇー」
それはすごいな…。
果たしてよこしまな理由でレイヤーを目指している生半可なボクにそこまでは出来るだろうか?
いや、出来る訳無いだろう。
ただそのキャラの衣装を着ればレイヤーになれると思っていたボクには耳痛い言葉だった。
「まぁ、実際オレもそこまで出来ないし、オレのコスなんてただのにわかレベルだからな…でも、それでも、一般の人に一緒に写真撮ってくださいって言われると嬉しくて、また次頑張ろうって思えるんだよなー、ちっくしょう、オレももっと頑張ろう」
なるほどー、聞けば聞くほどレイヤーの世界は奥が深いな。
高志も俄然やる気になっているようだし。
「次のイベントはいつだっけ?」
「それが何と!来週末池袋で結構大きなレイヤーイベントがあるんだけど、参加してみるか?」
来週末…?
そんなに早くに?
「ボクまだ何も用意してないよ」
「まぁ、お前はとりあえず簡単に出来る物にするか、カメラマンとして参加するか?」
「カメラマン…?この間みたいにか?」
「いや、この間はただの俺の付き添いだったろ?今回はちゃんと課金してそのイベントに入れば?」
そんな参加方法もあるのか?
「カメラマンとしての参加なら一般で撮影をお願いするより、色々ポーズもリクエストできるから、お前の憧れのセーラーピンクいたら、彼女にあんなことやこんなこと…」
高志がくっくっくとイヤらしい笑いをするから、ボクもついつい淫らな想像をしてしまう。
おっと、おっと観点がずれてる。
「お前カメラ好きだろ?」
「確かに」
高志と同じくお年玉をはたいて買ってしまった一眼レフ。
今回はあの時よりちゃんと撮れる!
「よし、決まり!来週末のイベント頑張ろう!」