結局
そうだ、みんな口に出して言った事は一度も無いけれどここにいる僕等の誰一人として心音ちゃんには叶わないと思っている。
友達だと言いながらも心の中で線引きをして、心音ちゃんは別の世界の人だと認識してしまっている所があった。
心音ちゃんは小さい頃からの夢をちゃんと叶えている、そもそも小さい頃からソレになろうとちゃんとした目標を持っていた。
そんなごく一部の僅な人間のできることを成し遂げている心音ちゃんの存在はとても大きなモノだった。
それに比べて流されるように今を生きて他愛ない時間を過ごしている僕等と心音ちゃんが友達と言う立場でいてもいいのか?
それは僕等がダメで心音ちゃんが偉いと言う訳ではない。
みんなそれぞれそんな普通の生活の中で悩みを抱え一生懸命生きている。
だけど、根本的な悩みはきっと違うのではないだろうか?
ああ、何て言えばいいのだろうか?
こうして内々で話し合っている悩みを心音ちゃんに話したところで通じるのだろうか?
逆に心音ちゃんの悩みを僕等が聞いてあげる事ができるのだろうか?
そんな勝手な線引き、きっと心音ちゃんが知ったら悲しむだろうなと思いながらも考えずにはいられない。
心音ちゃんと出会えた奇跡は人生の中でとても大きいものだったから。
だって、想像できる?
手が届かないと思っていた憧れの人が目の前に現れた時の奇跡を。
彼女を前にした時、失った言葉の変わりに自分の意志とは関係無しに涙が止まらなくなるような感覚。
そこに現実にいて普通に会話してる間もこれは夢なのか?と何度も何度も思ってしまう。
告白して想いを打ち明けた事よりも、ラインの友達一覧に心音ちゃんの名前がある事が今だに信じられない事がある。
「私、レイヤーやめたくない!」
溜めていた思いが溢れ出たのだろう。
突然のミューの大きな声に店内が一瞬音を失った。
潤んだままの大きな目が閉じたタイミングで涙が溢れた。
「そうだよなぁ、止めたくないよなぁ」
今までポテトばかり食べていた和喰が手を止め、ミューに落ち着けと言うように肩を叩いた。
「別に止めなくていいんじゃないかな!てか、止める必要無いよ!」
そうだよ、別に止める必要なんかない。
誰に何言われても関係ない。
「でも…。もうセーラーブルーは無理かな?荒らされちゃったし、やるとしたら他のキャラとか…でも、私、セーラーブルー一筋できてたから、レパートリー無いんだよなー、来月のイベントまで間に合う訳ないしなー」
くすん、と唇を噛むと黒目を天上に向けた。
「セーラーブルーでいいんじゃないのかな!それがミューのアイデンティティーだし」
ボクが言うとミューは少し考えてから笑った。




