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チョコレート

僕は今ナンテ言った?

さっきまでお菓子の話題で夢中だった三人も僕の突然の吐露に全神経を集中させてこちらの様子を伺っていた。


『僕は心音ちゃんが好きだ』


数秒前僕は確かにそのような事を言ってしまった。

ごくごく自然に口からとんでもない言葉を出してしまった事実に気付き身体が異様な緊張に包まれる。

でも。

そんな風に硬直化していたのは僕だけでは無かった。

思いもよらなかった告白を受けた当の本人の心音ちゃんは事の事情が飲み込めずに完全に固まっていた。


「あ、えっと、その…えっと…何て言うか、心音ちゃんの声が好きと言うか、その…コスプレ姿が好きと言うか…」


何だよ、それ。

手振りみぶりを加えた自分のたどたどしい言葉に嫌気がさす。

男らしくない言い訳がましい文語だと分かっていても他に何を言っていいのか分からない。


「あ…の、その…えっと…」


続かない言葉が空を彷徨う。

心音ちゃんは今どんな顔をしているのだろう?

俯いたままの横顔は髪の毛が邪魔していて伺う事ができない。

心音ちゃんにとっての僕はただの友達の兄、それだけの人にこんな告白されたら何て言っていいか分からないのは当然だよな。

差し当たりふんわりとした言葉で返すのが的確だろうが瞬時にそんな言葉を出せる人間なんてそうはいないだろう。

しかし、沈黙が長すぎる。

こんな時アニメなら顔を赤らめ瞳を潤ませたヒロインがパッと身を翻して部屋から出て行くから、それを追い掛けると『さっきは急な事で驚いちゃってごめんね、まずは友達からでいいかな?』

などと期待を持たせる返信をするのだろうが。

現実のヒロインは…。


心音ちゃんがふっと顔を上げて僕の目をじっと見た。

あれ?心無しか顔が赤いぞ!

しかも、大きな瞳が潤んでる。

これはもしや!シミュレーション通りの答えがくるのでは?

ごくん。

自分が生ツバを飲み込む音が乾いた部屋に響く。


「あのね、私…」


僕を含めた全員が彼女の次の言葉を待っていた。

だが、次に彼女の口から出た言葉は誰もが予想すらしていなかった言葉だった。


「ふぇ、ひっく」


へ?

こんな可愛いしゃっくりを聞いたのは二回目だった。

まさか…。

僕は先程彼女が食べたチョコの包み紙を念入りにチェックした。

やっぱり!


「おい、これアルコール入ってるチョコだぞ、誰が買ってきた?」


微量だがリキュール入りと記載されている。

あまりにも可愛いパッケージであったし、ごくごく僅かなアルコールなので特別な記載は無い、こんなチョコでも酔っ払ってしまうのか?

心音ちゃんはピンク色に染まった頬、こぼれそうな程大きな瞳は定まらない視線でフワフワと空を仰いでいた。

ひっくとしゃっくりをする度に上下に動く細い肩。

スカート丈を気にしていた座り方がいい加減になってきて、焦ってしまう。


「それメロディ(心音)さんが持ってきたやつ…え?メロディさん酔っ払ってるの?やばい、めちゃ可愛いんだけど、萌えだわー」


嬉しそうなセーラーブルーが彼女に近付き興味深そうに見る。


「しまった、せっかくぅのチャンスなのにぃ。ボクゥ一眼レフ(相棒)持ってこなかった」


心底悔しそうな和喰にスマホでそっと隠し撮りをする高志。


僕の告白の事実は取り合えず忘れられたらしい。

まぁ、良かった。取り合えず無かった事になったようだ。

僕も一旦忘れよう。

僕はテーブルの上にまだ残っていたチョコを口に放り込んだ。


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