『黒崎愛音の顔って見てみたい?』
心音ちゃんがエリに何故そんな事を言ったのか?
今まで一切顔出ししなかった、顔出しする事を拒んでいたんじゃないかと思うぐらい全て伏せていた心音ちゃんが何故そのような事を言ったのだろうか?
ただ単にふと言ってしまった言葉なのだろうか?
それとも、やはり今の時代声優は顔出してなんぼの世界だと思ってしまったのか?
「アニメに全く興味無い私にそんな話しされても分からないのに、ましてや声優の事なんて言われても絶対に意味不明って心音は分かってる筈なのに、どうしてそんな事を言ったのかが不思議だったからその名前覚えてた」
そうだ。心音ちゃんは自分がコスプレしてる事も自分がアニメ好きだって事もエリには隠していたはずだ。
そんな彼女が急に何故そんな事を言ったのか…。
ボクは取り合えずスマホを取り出しTwitterを開き、彼女のサブ垢を検索した。
それからどうするのかなんて全く考えていなかったが、何にも出来ない歯がゆさが何かしなきゃと言う気持ちに変わり、自分と彼女が唯一繋がっている(まぁ、厳密に言えば彼女からフォロバをもらっていないのでボクが勝手に彼女のツィートを覗いてってるだけだが)
それでも。
ここを開けば彼女が今何を考えているのか分かるのでは無いかと微かな希望でクリックしてみた。
『みんなはアニメ声優の顔って知りたいと思う?』
おおーー。
つい数分前の彼女の呟きがまさかこんなにも今のボクに的確なモノだとは思わずスマホを落としそうになってしまった。
ふぅーと小さく息を吐き出し彼女にリプしてみる。
『愛リンさんはどう思うのですか?』
質問を質問で返す。
昔何かのアニメ映画でこれは結構有効的な手段だと描かれていた。
Twitter画面鐘の上に1と言う数字がすぐに出た。
『……私はあまり見たくない。アニメキャラと声優本人は別物と考えているので』
案外早くにリプが返ってきた。
どうしよう?何て言えばいい?
何て言葉を返せば彼女からリプが貰える?
そんな事考えてる間にも次から次へと彼女へリプが送られてくる。
その全てに彼女は応えてる訳では無いので、彼女が…彼女が思わず答えたくなるツィート…。
他の人のリプのほとんどが、見たいか見たくないに一言二言付け足しているモノばかりだった。
もう彼女はこの画面を見ていないかもしれない。
こんなにたくさんのリプの中で自分のリプに目を止めて貰える言葉!
そんなの分からない!
分からないなら。
『何かあったのですか?』
今の自分の気持ちを送ってみた。
こんなの…。
これを送ったのがボクだって分かっていない彼女には一体何の事だが分からないだろう。
だけど、ボクにはその言葉しか思い浮かばなかった。
そして…。
Twitterはそのまま途絶えた。




