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紅と茜のサマーウォーズ  作者: カヤ


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13/23

2年目の夏5

私や茜ちゃん、そしてお父さまが地味な努力をしている間、蒼と碧も戦っていた。すみれおばさまは、蒼と碧に興味がない。興味がないというか、自分がいなくても問題がないと思っているっていうか。


だから蒼と碧の作戦は、二つしかない。悪くなって、おばさまをがっかりさせるか、強引に視線を引くか。


悪くなるのにも素質がいる。不良になるのを面白がるには、2人は賢すぎた。だから、視線を引く。


おばさまは子ども服のブランドを拡大し、ローティーン向けも出そうとしている。蒼と碧はそのモデルに立候補したのだ。


特に芸能事務所に所属しているわけでもない。完全なコネだ。しかし、社長の息子、そして双子、おじさまに似た整った顔だちとスタイルは、諸方面からの反発を抑えるのに十分だったらしい。


何より、おばさまのブランドは蒼と碧によく合った。2人のために作られたのかと思うくらいだ。


2人はカメラの前に立つ時、カメラにすみれおばさんを見るようにした。写真が世の中にでる前に、社長のチェックが入る。だからお母さまは前よりずっと俺たちのことを見るようになる計画なんだって、そう言っていた。


俺たちはここにいるよ。いつでもお母さまを見ているよ。


同時に、恭一おじさまも見ているだけの旦那さんでいるのを止めた。


茜ちゃんと藤堂の家に遊びに言った時、思い切って4人で聞いてみたのだ。おばさまを選んだ決め手はって。


おじさまは首を傾げて、あごの下をかりかりとかいた。


「決め手か」


そう言って窓の外を見た。私と茜ちゃんは顔を見合わせた。心の声は同じ。またか。スッキリサッパリ教えてくれてもいいじゃない!


「晴信おじさまは、お父さまはお母さまの一生懸命さに引かれたって言ってた」


ついに碧が我慢できずにそう言った。


「そうか、晴信が。晴信こそ、ゆかりさんのおっちょこちょいな所に引かれたって知ってたか?」


なんと!確かにお母さまは天然だ!茜ちゃんを見たら、茜ちゃんはニヤニヤしていた。お父さま、ばらされちゃったよ?


「晴信おじさまのことはいいんだ。お父さまは!」


碧がせかす。


「私はすみれの2年上の先輩でね、知ってたかな、紅の先輩でもあるんだよ」


おじさまが話し始めた。おばさまとお母さまが私と同じ学校だったのは知ってる。おじさまもだったんだ。


「双子だと言うだけで珍しいのに、ゆかりさんとすみれはそれぞれに目立っていて、けっこう有名だったんだ」


そうなんだ。すみれおばさまはわかる。でもお母さまも?


「いつもそうだ。すみれが活発で、いろいろな活動をがんばる。すみれが目立つ。双子がいるらしいって話になる。じゃあ見に行こうぜってことになる」


確かに、兄弟がいたら気になるかも。


「そしてゆかりさんを見にいく。すると、そこには活発なすみれを清楚に、かわいらしく、おとなしくしたようなゆかりさんがいるってわけ」


蒼と碧があーって顔をした。茜ちゃんがうんうんとうなずいている。


「すみれが目立てば目立つほど、ゆかりさんも目立ち、ゆかりさんに引かれる人が増える。もちろん、すみれももてたさ。けどな、すみれがいいなって思った人はみんなゆかりさんに引かれていった」

「だからおばさまはお母さまの事が嫌いなの?」

「……少なくとも、高校一年、私が見ていた時には仲が良かったよ」


はっきり聞ける人は私しかいないだろう。頑張って聞いてみたが、思っていたような答えではなかった。


「紅、ごめん、ちょっとずれてる。お父さま、お母さまのどこが好きになったの?」

「一生懸命なところ。好きな人が妹に引かれても、くじけずに恨まずに頑張っていたところ。頑張りすぎて空回りするところ」


私たちはびっくりした。おじさま、すみれおばさまが大好きなんだ。


「告白できなかったけど、高校生の頃、好きだったんだ」


おじさまはそう言って照れくさそうに笑った。


「だから私を選んでくれて嬉しかったんだ。結婚してからも頑張り屋で、やっぱりそんな所がいいと思うんだ」


わあ。ドキドキする。


「だから茜、紅、ごめんな。すみれが晴信に執着することを悔しいとは思っても、その事でお前たちが苦しんでいるとは思わなかったんだ」


焼きもちはやいていたんだね。気づかなかった。


「すみれはさ、私のこと、しかたなく選んだんじゃないかって今でも思うよ。それでもいいから選んでほしかったんだ」

「おじさま、そんなにかっこよくても自信ないの?」

「紅、好きな人の前ではね、自信なんてないのさ」


大人は難しい。


「わかんねえよ!」


感心している私と茜ちゃんをよそに、碧がどなった。蒼も怒っている。


「お父さま、そんな気持ち、まったく伝わってない!なんでお母さまのこといつもバカにするんだろう、興味がないのかなって、俺いっつも思ってたんだ」

「そんなつもりはなかった。ただすみれを自由に行動させてやりたかっただけで」

「お母さまだってお父さまに関心持たれてないって思ってるんじゃないのか」

「まさか。まさか私の気持ちはずっと伝わってないのか……」

「そんな態度じゃ伝わらないよ。小学生だってわかるよ……」


碧はがっくりした。


「お父さまはお母さまを諦めるのか」


蒼が問い詰めた。


「しかしな」

「俺たちは諦めない。言葉で言ってもお母さまには伝わらないだろうから、今全力でがんばってる。俺たちを見てくれって」

「だからモデルか」

「そう。お父さまもがんばってくれよ。家族が大事なんだってお母さまに思わせてくれよ」

「しかしどうすれば……」


そんなこと大人に相談されてもな……。


「とにかく、お母さまが好きって気持ちを出すんだ、お父さま」

「そうだよ、何やってもいいって言うのは、無関心と変わらないんだよ。ずっとそうだったんだよ、私は」

「紅……」


そうだ、今は私の事じゃない、おじさまのことだ。と、茜ちゃんがこう言った。


「高校生の頃から、やり直したらいいんじゃないかな」

「高校生の頃から?」

「選んでもらうのを待つんじゃなくて、選ぶの。勝ち取るの。すみれおばさまを、この手に!」


そうして両手をギュッと握りしめた。


「好きって言えばいい。何度でも」


おじさまは真っ赤になった。


「大人にはそれが本当に難しいんだ……」


それでもやらなかったらどんどん離れてしまう。やるんだ、恭一おじさま!



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