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林真理子について

作者: あきら

 私は、林真理子があまり好きではなかった。むしろ嫌いだった。

 20代半ば、私は女性誌「anan」を特集買いしていたのだが、後ろのほうに林真理子のエッセイ「美女入門」が掲載されていた。読んで嫌な気持ちになったことを覚えている。とにかく品がない。エッセイの内容は、太ってきたからダイエットを始めた、成功した、エステに行ってきれいになってきた、有名人に会った、おいしいものを食べてきた、ブランドの服やバッグを買った…とにかくそういう話ばかりが順繰りに出てくるのだ。

 彼女の小説「ミカドの淑女」が面白かっただけに、(こういう人だったのか)という落胆の気持ちが強かった。

 でも待てよ、まがりなりにも「anan」に長期連載されているエッセイだ。これを面白いと思っている人が大多数で、自分は少数派なのかもしれないと思った。若かった私は、2ちゃんねるで、林真理子のエッセイについて語られているスレッドを探して発見した。本音が語られていると思ったのだ。そうしたら、同じようなことを思っている人が大勢いた(ように私には見えた)。実際には同じ人が何度も発言していただけかもしれないけれど、後ろ盾を得たような気持ちになった私は安心してこの考えを固定させた。

 のちにmixiニュースで同じことを語っているエッセイを発見し、最近もまた林真理子のエッセイが下品で好きでないという人に会った。

 しかしあれから10年経ち、私はあのときほど林真理子のエッセイが嫌いではない。総合女性雑誌を買うことがほぼなくなり、女性誌「STORY」のエッセイをちょくちょく立ち読みしているだけだけど、若いころに強烈に感じた嫌悪感はほとんどなくなっている。林真理子のエッセイの内容が変わったわけではない。「STORY」は40代くらいの女性を対象にしている雑誌だけど、相変わらず内容は、太ってきたからダイエットを始めた、成功した、エステに行ってきれいになってきた、有名人に会った、おいしいものを食べてきた、ブランドの服やバッグを買った…という内容である。むしろこれで何年も食っていけるのがすごい。

 ああ、今回はこういう内容ね、と私自身が内容に慣れてきた、というのもあるかもしれないが、私が年齢を重ねて、林真理子の女性を見る容赦のない意地悪な視線を、面白がれるようになったことが、一番の理由のような気がする。そういう批判的な意見を、20代の私は持ちえなかったのである。

 正直私は、ブランドにもエステにもあまり興味はないし、誰かが整形していてもさっぱりわからないのだけど、幾つになっても、痩せてきれいでいたい!…でもおいしいものも食べたい!という林真理子を、少しだけ可愛いと思う。そしてほんの少しだけ、その浅ましさを豚だなと思う。他の意見を参照しなくても、これくらいのことをはっきり言えるくらいまでは、私も図々しくなったと思う。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「ミカドの淑女」は読み物として面白いと思いましたが、やはり彼女独特の失敗も散見される箇所もありました。牧野伯爵が東宮妃(貞明皇后)に召見されたシーンで厚く切った練切を「茶托」に盛って出したと…
[一言] 女性は何をしても皆可愛いと思ってます。 林真理子も貴女も。
[一言] (独善的でも)的を射るような私見を書かれていた作家さんなのでエッセイが好きでした。 当たり障りなく綺麗な言葉でラッピングして誤魔化されたものよりよっぽど良かったのです。 人はダメな部分があっ…
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