二十一 不完全な神
アステル達は食事をしながら神について話し合う。
「神は完全であると言われているけど、案外完全ではないのかもね」
そうクライトは言った。
シルヴァが自分の気持ちを口に出す。
「神官がそんなこと言っていいのか? ラノ教の教義では神は全知全能だろ」
「でも、宗教の実際を知っている私としましては、神は絶対ではないという思いを日々強くするのですよ。もちろん神様自身は存在されていますけどね」
ニジマスのような川魚は美味かった。ゆでた芋も、スープもおいしかった。
レマが来た。
「今日はサービス。みんないつも利用してくれてるからって、女将が」
その手は鯛の塩焼きと濁り酒を持っていた。
僕は言った。
「女将も気前がいいね。僕、鯛も濁り酒も大好きだ」
「アステルは早くトロルをやっつけられるくらいのすごい戦士になって私を食べさせてね」
「トロルかあ……」
僕は苦笑いした。
食事が済んだあと、僕ら三人は風呂に入った。妖精の血を引くシルヴァの体は普通と違うのかな、と思って見たが、別に変わったところはなかった。
しかしその黄緑色の髪は非常に美しかった。シルヴァは母親とは違って結構美男だったから、黄緑の髪も映える。そういえば十代前の妖精の女王はラキ・ダヴィアといい、その美貌で男達を大いに惑わしたという。さぞ美しかったのだろう……
そう思って僕は風呂の中で眠ってしまった。
しかしすぐにシルヴァに起こされた。
「アステル、お前何かの病気なのか? 風呂で寝るなんて」
つづく




