5話 お使い
ついに父さんが帰ってきた
あぁ...「お前なんか息子じゃない!」とか言われて追い出されたらどうしよ
なんか一番言いにくい人だし
そしてとうとう、お父さんが何か言ってきた
「白ー二階にいるんだろ?玄関にきてくれー」
これは、行かなくちゃダメなのか?
母さんに聞く
「あ、行った方が」
「いいわね、面白いことになるわよ」
「は、はい...」
面白いことってなんだよ!
追い出されるのが面白いのか!コンチクショー!!
俺はしぶしぶと階段を下りて玄関に向かった
「あ、とっ、父さんお帰りーハハハ」
「うぉぉぉぉ!白ぉぉぉぉ!!!可愛くなったなー!!母さんからメールで聞いたがまさかこんな可愛いとは思わなかったぞ!!」
「は、はぁ・・・」
「お願いだ、パパって言ってくれ!娘に言われてみたかったんだ!」
なんだ!この父さんは!いっつもソファーでビール飲んでふんぞり返ってるいつもの父さんと全く違うぞ!
しかもパパってなんだよ!!!
「え、パ、パ?」
「ふぉぉぉぉ!!!灰咲剛史一生の悔い無し!!」
「あ、父さん落ち着いて」
「そうよ、剛史さん少しは落ち着いたら?気持はわかるけど」
母さんと兄貴が下におりてきた
「だってな、あんなクソつまらない仕事から帰ってきて、可愛い娘がお出迎えしてくれたら誰でもこうなるだろ」
「クソつまらない仕事って...それより父さん着替えてきたら?」
「む、それもそうだな。着替えてくる」
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「あ、白ちゃんそういえば洋服それしかないわよね」
リビングでアイスココアを飲みながらまったりしてると突然母さんが話しかけてきた
「え?洋服なら俺の部屋にいくらでも」
「女物よ」
「家なら男物でいいじゃないか、まだ夏休みだし」
そう、高校一年生の夏休みだ
ちなみに部活は帰宅部
あ、学校どうすんだろ
「あら、男物の洋服ならもう捨てたわよ?」
「は?今なんて?」
「捨てたわよ」
「マジかよ...」
「女の子が持ってたら不思議じゃない、あ、もしかして不思議ちゃんになりたかった?」
「んな訳あるか!」
あぁ、お気に入りだった俺のTシャツさんサヨナラ
「買いに行くのは明日にしましょうか、もう夕方だし」
「はいはい・・・」
すると突然兄貴が言ってきた
「母さん、今日の晩飯なに?」
「んー白ちゃんの女体化祝いで焼き肉にでもしようかしら」
「うぉ!焼き肉か!」
「お腹すいたからいいかもね」
「そうね、そうしましょうか。あ、焼き肉のタレが無いわね...白ちゃんお使いに行ってくれるかしら?」
「え?別に構わないけど」
「ありがとうね、はいお金。変な人に付いて行っちゃダメよ?」
「分ってるよ、小学生じゃあるまいし」
「だって今の白ちゃん、可愛い過ぎて道路脇の小道に連れ込んで、楽しいことしたくなるぐらいだもの」
「あのねぇ...そんな物騒な街じゃないでしょ...」
「もうちょっと自覚したほうがいいわよ?」
「え、何を?」
「はぁ、分らないならいいわ。早く行ってきて」
「はーい」
ガチャリ
家を出たのはいいがどこのスーパーに行こうか
一番近いとこにモコモコスーパーって言うとこがあるけど
あそこ閉店早いからもう終わってるかな
しゃあない
駅前のゴトーイツカドーに行くか
ちょっと歩くけどね
それにしても暑いな
夕方だから日光が少ないけども
うなじから汗がじんわりでてくるのが分る
今は母さんから無理やり着せられたワンピースを着てるけど、周りの歩いてる人に女装してる変態と思われないかな
いや、髪が白いからそっちも見られるかな
俺はなるべく目立たないようにコソコソと歩いていた
だがそのとき目の前をギャル高校生が歩いてきたのだ
「マジ、あいつうざくね?」
「だよねー!キャハハハ!!!」
こ、これはかかわるとめんどくさい典型的なギャルだ
「あれ?あの歩いてきてる銀髪の子チョー可愛いくね?」
「え?マジ?うわっあれ天然物じゃね!」
「でも、見せびらかしてるのかもしれなくねー?」
「ありえるー!」
「「キャハハハハハハ!!」」
あーこれはウザいですね
好きでこんな外見してるわけじゃないっつの
でも可愛いと言われ顔を赤くしながらテトテトと急ぎ足でスーパーへ向かった
や、やっと駅が見えてきた
人がさっきより全然多いから人の目が気になる
絶対女装系キモオタとか思われてそうだな...
実際めちゃくちゃ視線がこっち向いてるし
そりゃこの日本で銀髪の子がウロウロしてたら目立つか
警察呼ばれたらどうしよ
[実際に周りの人が考えてること]
「あんな美少女見たことないぞ」
「あの銀髪綺麗!触らせてほしいな」
「彼女だったら最高だろうな」
「グヘヘ...」
[実際に周りの人が考えてること終]
あーはずかしくなってきた
早く買い物済ませて帰りたい...
「ドゥフフフ...あっ、あのぉ、写真撮らせて貰ってもいいっすか、グヘヘ」
ふぇ!?なんだこの典型的なキモオタって感じの人は
悪いけど、髪の毛からの油の匂いがプンプンする
「あ、あの困ります。すいません!」
そう言い終えると俺はダッシュでスーパーへと駆け込んだ
「はぁはぁ、なんだったんだ?あの人」
汗をかいたがスーパーのちょっとキツイ冷房ですぐ乾いた
とりあえずエ〇ラの焼き肉のたれを持ってレジに並ぶ
やはりここでも視線が痛かったがなんとか無視する
「一点で230円になりm...!」
どうしたんだろこの店員さん
いきなり無言になった
[店員の脳内]
「うひゃー!この娘めっちゃ可愛い!」
「もしかしたら常連さんになってくれるかな」
「そしてお友達になって...」
[店員の脳内終]
「あ、あのぉ店員さん?」
「ハッ、すいません!」
我に返ったように店員は猛スピードで会計を済ませ
「ありがとうございましたぁぁぁぁっ!またのご来店お待ちしてまぁぁぁすっ!」
うわっ、なんだったんだこの店員さん
なんか凄いハイテンションだったな、何かいいことでもあったのかな?
俺は小さいビニール袋を片手に待ってスーパーの自動ドアを出た
「うっ、出たとたん熱気が凄いな...」
もう暗くなっているが暑い
「早く帰ろっと」
俺はうすぐらい帰り道を小走りで帰って行った
だが、目の前にめんどくさそうなヤンキーっぽい人が歩いてきた
これは見て見ぬふりしてスルーしよう
ケンカなんか売られたらたまったもんじゃない
ましてやこの体で
ササッと横を通りぬけようとしたが
「よぉ嬢ちゃん、ちょっと待てよ」
あ、これフラグやばい
「は、はい?何か...?」
「ちょっと遊んでいかねーか?金が余ってるんだ、カラオケでも」
ふぁっふぁ!?
ケンカ売るんじゃないのか!
なら安心...じゃなくて!これってナンパか!?
こんな女もどきのどこがいいのか!
ちょっと怖いから断ろう
「すいません、家に帰らなきゃいけないんで...」
「いいじゃんか、ちょっとだけだよ」
するとヤンキーは俺の腕を掴んできた
「ちょ、離してください!」
「ついてくればいいんだよ」
突然、物陰から兄貴が出てきた
「兄貴っ!」
「おいテメー!今俺の妹に触れたな!!ぶっとばしてやろうかぁ!!」
「んだとゴラァ!俺にいちゃもん付ける気かぁ?」
「問答無用だ、怪我したくなければ手を離してここから立ち去れ」
するとヤンキーが俺の腕をギュッと力強く掴んできた
「いっ、痛い!」
「白!大丈夫か!おいテメェあんまり調子のるとこうなるぜ」
兄貴はヤンキーのお腹に蹴りを入れた
そして俺はヤンキーの手から解放された
「ぐ、グハァ...チクショウ、覚えてろよ!」
ヤンキーはフラフラとおぼつかない足元で帰っていった
「忘れとくぜ!」
「兄貴!ありがとう!」
「おう、俺の妹に手をだしたやつには当たり前の報酬だ。でももうちょっとやったほうが良かったかな」
「あれ以上やってたら逮捕されるよ...」
「ふはは、そうだな」
「でもあんで兄貴ここにいたの?」
「ん、母さんが白になんかあっちゃ危ないから護衛よろしくって言われたんだ」
「へ、へぇ...良かったなぁ」
「んでさ」
「何?」
「お礼のキスは」
「するか!」
「んじゃ手をつないで帰るのは」
キスは流石に無理だけど手をつなぐぐらいならいいかな
助けて貰って何もしないのは変だし
「それならいいよ」
「イヤッフォウ!!」
兄貴は俺の掌を握ってきた
「さぁ帰ろうか」
「そだね」
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家に帰ってから気づいたけど手をつないで帰る兄弟って
ブラコンですよね...
顔を真っ赤にして焼き肉を美味しく頂きました
長くなってしまった...