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兄勇妹魔  作者: アリス法式
序章 転生記
4/11

四話

今回も、そのまま書くとかなり長くなりそうだったので半分にしました。

柔らかい温かい、何重にも敷き詰められた羽毛布団に包まれて目を覚ます。

いつもの場所、いつもの部屋。

桜色を基調にした壁紙に囲まれて、ふわふわの羽毛布団に身体を沈めながらぐるりと周りを見回す。

木目が綺麗なベットは温かみがありとても寝心地がいい。

部屋の中は黒のシックな勉強机と白く塗られたクローゼット、扉の横に等身大の姿見が置かれている以外は、少々殺風景な感じはあるが全体的に明るく温かい感じがするように造られている。


いつもの部屋、いつもの場所。

私が死んだ後にたどりつく原初の場所。


過去の記憶の中に埋もれてしまいもう薄れて思い出すことも困難だが、ここはきっと私の部屋。

私が生まれ育った部屋なのだとおもう。


それを確信するすべも、その頃の記憶を思い出すことも既に無いのだけど―――。




自分が着ていた服、ボロボロの黒いローブを脱ぎ捨てて、部屋のクローゼットの中から淡いピンクのワンピースを取り出してそれに着替える。

勝手しったる自分の部屋、どこに何があるのかはなぜか身体が理解している。

其処は気にせず姿見の前で自分の格好におかしいところが無いか確認してから、私は部屋を後にした。


カチャ


扉の開く音と共に何かが繋がるような感覚が襲ってくる。

一瞬の空白を置いてから、目の前に長い廊下が繋がった。

廊下の壁をなぞるように目を向けると、長い廊下には等間隔に私が今出てきた部屋と同じような扉が続いていた。

そのうち何部屋が私の部屋のように正常につながっているかは疑問だが...。

向かって左側が突き当たりの壁な事を考えると私の部屋は一番角の部屋に当たるらしい。


私は突き当たりの壁に背を向けて通路をまっすぐ歩き出した。

ふと振り返って見ると、私の部屋の扉には一つ白いプレートが打ち付けられているのが見えた。


『桜』


漢字一文字で書かれた名前が其処に刻まれている。

一度止めた足を動かし始めて、長い廊下をある歩くことしばらく。

私はソレに気がついた。

等間隔に並ぶ沢山の部屋、そのどの扉にも私の部屋と同じように白いプレートが打ち付けられている。

しかし、跡の様な物はあるのだが、そのどれもが名前を判別することは出来なさそうなほど古ぼけて、または何か硬い物を叩きつけたように割れていた。

長い長い廊下。

並ぶ沢山の部屋、其処にかけられたプレートはそのどれもが既に失われた物となっていた...―――。



長い廊下をぺたぺたと歩いて抜けると、其処にはいつも彼女が座っているテラスのような空間がある。

あー、ぺたぺた?

うむ?足元をよく見たら私何も履いて無い。

裸足だ...、まあいいか。


そのままぺたぺたと擬音のような、実をいえばほとんど音の立たない足音を残しながら私は彼女がいるはずのテラスに近づいた。



―――「......王...サクラ...のこ...で...ね」


しかし、聞きなれた声で私の名前を呼ぶ人が誰かと話をしているらしいことに気がつき、私の足は其処でぴたりと動くのを止めた。

そーとそーと。

できるだけ足音を立てないように慎重にテラスに近づいていく。

そして、入り口の左右に立つ円柱の柱に背を預けるようにして、私はテラスの中を覗きこんだ。


其処にあったのは、顔を隠しながら女神様(腐)と呼ばれてあわてる女性と、彼女に楽しげに笑顔を見せる兄の姿があった。


会話的には既にある程度終えた後らしく、兄の存在がだんだんと希薄になっていくのがわかる。

糸を解くようにだんだんとその姿が薄くなり、最後に残ったのは白く純白な魂のみとなり―――。


―――そんな兄の魂を抱き締めるように女神様が抱えあげた。

揺る肩、静かに響く嗚咽の声を聞きながら、私はもう少しだけ円柱に背中を預けて彼女が落ち着くのを待つことにしたのでした―――。




女神様が泣き止むのをなんとなく気配で察してから私は静かにテラスに入っていった。

彼女が座っているのは先ほどまで兄が座っていた場所、落ち着いたのか少し紅茶を啜りながらボーッと虚空を見つめているのがわかる。

あ・れ?

女神様(腐)?貴女が使っているカップって先ほどまで兄が使っていたものでは無いのでしょうか?


間接キスかこのアマ!


私は悟られないように気配を消しながら彼女に近づくと、彼女の肩を叩いた。


「間接キスですか?狙ってたのですか?計画どおりですか?女神様(腐)?」


「うきゃあぁぁぁぁ!!!!さささささ...サクラたん!?

いつから其処に?て?え...、ええええええええ?」


何故この人は冤罪を受けた死刑囚のように、無実を訴えるようなウルウルとした瞳で小動物のようにオドオドビクビクとしているのでしょうか?

貴女の行動は全て私がこの目で見ていたというのに。

既に貴女は実刑が決まっているというのに。


「女神様(腐)、現行犯逮捕です。

おとなしくしてください」


「私は無実ですよ!何もサクラたんが怒るようなことして無いですよ!

だからそんな、そんな路傍の石でも見るような冷たい瞳で私を見ないでください!」


後半結構本気で泣きそうな女神様が、一生懸命無実を訴えてくる。


「じゃあ...。

その手にもっている、兄さんが口を付けて紅茶を呑んだであろうカップはなんなのでしょうか?」


ボンッと一気に沸点に達したように顔を赤らめて、手もとのカップを見つめたまま固まる女神様。


「ナンノコトデショウカ...、ワタシハシラナイデスヨ」


「黙れ...、この腐ったミカンが!」


「その罵倒は何か間違っている気がします~!」


違うのですよ、私は腐った林檎なんですから~、とか意味のわからんことをワタワタとのたまっていらっしゃる方の右頬を、とりあえずひっぱたいて意識を戻してあげる。



「さっさと現世に帰ってきなさい、この腐れ女神」


べちんっ!


「ぶっはぁぁっ、いった~い。

私は腐っても女神ですよ、顔面はやめてくださいよ、跡が残ったらどうするんですか!!」



腐ってもって...。

兄さんの前では顔は隠しても格好つけるくせに、私の前ではとことん性格を繕おうとしないですねこの人。

右頬に見事な紅葉マークをつけながら抗議してくる彼女を睨み付けて黙らせてから、私はようやく空いている椅子に腰を落ち着けた。

そして、なお兄が口を付けたであろうティーカップで紅茶を飲んでいる女神様(腐)に話しかける。


「ふん、女神のくせに嘆かわしい話しです。

しかし貴女も女神なわけですし、これも神様としての一種の愛の形なのでしょうかね...」


そう呟きながらちらりと女神様(腐)を眺めると、何を思ったかキラキラしたような瞳で私の言葉に飛びついてきた。


「ええ、私の愛はとても大きく多種多様な側面を持ちますから。

たとえサクラたんがなんと言おうとも、私は貴方達二人を愛していますよ!」


「そうですね、貴女の愛は重い上にどこか変質的な側面を持つので、どう見てもストーカーとしか思えませんが...。

それでも、確かに愛は愛ですわね...」


自信満々に自らの愛を語る女神様(腐)が少々、いやかなり鬱陶しかったので返す言葉には多少の棘は含まれてはいたが、確かに彼女は私達の事を考えて心配してくれているだろう。

其処に疑問は一切無い。

私の返す言葉によって女神様(腐)がものすごい落ち込んでいるが其処に後悔も無い。

一切の罪悪感も感じはしない。だって、ウザイのだもん。


しかし愛ね...。



「よく考えて見れば、貴方は腐っても『運命』の女神でしたよね。

そんな貴女が愛を語るなんて、ソレはかなりのチートなのでは...」


「わ!私は『運命』を司っているだけで、私自身に直接関係はありません!!

べ、別に意中の男性を射止めために彼の『運命』をいじったりなんてしてませんから!」


「そのわりには『時空』の女神に聞いた話ですと、貴女が『運命』を調整してこちらに呼び寄せた人間は、かなり美少年の比率が高ったと聞きましたが?」


「ふえ?!そ、そんあっ、そんにゃ、そんなことにゃいですよ!」


結局噛むんかい

ふふ、しかし、面白いですね。

あせった女神様(腐)が、リラクゼーション効果のある紅茶をひっくり返すほどおろおろしていらっしゃるのを眺めるのは。

まったく紅茶の効果無いようですね~。


「カリムたん今度お仕置きですね。ふふふ」


こぼれた紅茶を拭きながらぶつぶつと怪しく笑う女神様(腐)を眺めていると少しだけこちらの気分も晴れてきた。

流石にふっきれつもりでも兄さまに叩き切られるのは精神的にきついものがありましたか。


さて、これでようやく落ち着いて話が出来そうですね。

女神様をからかうのはコレぐらいにしておいて、こっからは少々まともな話をするとしましょうか。



次話は妹説明回になると思います。

できるだけ軽くなるように心がけていくつもりですが、多少くどくなるかもしれません。読んでいただけた幸いです。


誤字脱字がありましたら報告お願いいたします。


こちらで言うのもおかしい気がしますが。【プロトタイプ】兄勇妹魔のアクセスが140万、ユニークが13万を越えておりました。

呼んでいただいた方々ありがとうございます。

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