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アダミノ  作者: 多加也 草子
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6.ウィル王の過去

 その数日後、大臣の部屋に呼ばれた。

「あなたは、ベルデコリーテ村の近くの森から来たと聞いている。両親は病気で亡くなったと。両親の名は?」

「覚えていません」

「なぜ? 両親はいつ亡くなったのですか?」

「私が5歳の時です」

 アダミノは危険を感じ、嘘をついた。ウィル王に反逆したハッシュの娘であることを探られては、ここに居られなくなる。ベルデコリーテ村の近くの村で流行病があったのがアダミノが5歳の時だった。5歳ならば、つらい経験で両親の記憶がなくなったと言うのも納得してくれるだろう。それで通そうと以前から決めていたのだ。

「そうか……。実はクラレッタ様から直々に私に依頼があった。あなたを私の養女にするようにと」

 アダミノには意味がわからなかった。

「なぜです?」

「あなたをウィル王の妃に考えているのだ。クラレッタ様はこの前、病に伏せられてからと言うもの自分がいなくなった後のウィル様の事が心配らしい」

「でも、私のような村の出身の娘ではなく、貴族のご息女がたくさんいらっしゃいます。それにクラレッタ様は元気になられました」

「クラレッタ様は病でなくても、事故でもいつ死ぬかわからない。準備はしなくてはならないとおっしゃられている。あなたに託したいのですよ」

 アダミノは驚いた。「仇の妻になる訳にはいかない」とそればかり考えた。

「迷ってらっしゃるようだが、私も実はあなたしかいないと考えているのですよ」

「なぜでしょう?」

「……これから話すことを、他言はしないでくれますか?」

 アダミノは黙って頷いた。

「実は、私はクラレッタ様がこの国に嫁いでくる前、亡命を考えたのです。あの頃は、ウィル様の政治を理解する事ができなかった。ウィル様の養育係だった男がウィル様を言い含め、無意味な戦争を仕掛けさせていました。そして、無駄な人命をなくしていたのです。そんな時、クラレッタ様の故郷グランデ王国に公用で行ったので、亡命を決行しようと考えていました。グランデ王に伝える前に、たまたまクラレッタ王女と話す機会があった。彼女はウィル様の噂を聞いていて、ウィル様の事をおかわいそうな方と言っていた」

「おかわいそうな方とは、なぜですか?」

 アダミノは大臣に聞いた。 

「ウィル様が生まれた時のことです。たまたま嵐がやってきて国民の多くが死んでしまった。ウィル様のお父上の前王は、数年前から預言者フールを信用して、いろいろな相談をしていました。なぜ信用していたかと言うと、フールはある日突然やって来て、前王の病を予言し、そして薬で前王の病を完治させたのです。前王は不吉な時に生まれたウィル様をどのように育てればよいかをフールに予言をさせました。フールは、ウィル様には悪運が付いている。それを取り除くには10年かかり、悪運を最小限に留める為に、10歳になるまで山城に閉じ込め、その間、フール自身が身の回りのお世話をしながら悪運を取り除く祓いをすると言ったのです。その通り10年の間、ウィル様は北の山にある城に閉じ込められていたのです。その10年が経つ5日前に前王は亡くなられました。そして幼いウィル様はそのまま王座に着いたのでした。ウィル様は10歳までフール以外に会うことはなく、そのまま王になってしまった。フール以外を信用せず、フールに言われるがままに無益な戦争を始めたのです。クラレッタ様はそのことを知っていました。そして、クラレッタ様は彼を癒して差し上げたいと申し出たのでした」

 アダミノは驚いた。ウィル王にそんな過去があったとは。

「それで、クラレッタ様はこの国に来たのですね」

「そうです。はじめは王女として近隣の国を視察する事が目的と称してやってきました。クラレッタ様がいらっしゃった際、フールはクラレッタ様を人質にグランデ王国を支配しようと考えました。ウィル王は、クラレッタ様を人質にする為に城に住まわせもてなしたのです。その間に、クラレッタ様はウィル様のお心に入られた。今までの戦争を無益な事だと諭し、人の命の大切さをウィル様に伝えたのです。ウィル様は見事に変わられた。そして、ある時、フールがクラレッタ様を殺害しようとしました。クラレッタ様が体調を崩された時、薬を煎じて持ってきたのです。クラレッタ様はフールを信用していなかったので、それを小鳥に飲ませました。その小鳥は5日後に死んでしまったのです。クラレッタ様はそれを調べさせました。その薬は一時は元気になるが、だんだんと心の臓が弱ってくると言う麻薬でした。私は前王がまだ健在だった頃、フールがその薬を時々前王に飲ませていたのを知っていました。フールは前王を殺害し、ウィル様を思い通りにさせる為に、ウィル様を10年間、山城に閉じ込めたのでした。それがわかるとウィル様はフールを追放しました。そして、クラレッタ様を后に迎え入れたのです」

 大臣はその時のことを思い出したように遠くを見て微笑んだ。

「この国は生き返った。それはクラレッタ様のおかげです。そのクラレッタ様が、ウィル様は心が変わられたのだから自分がいなくなろうと昔のウィル様に戻られる事はない。しかし、純粋な方ゆえにウィル様を大切に見守られる方が必要だと言っているのです。昔、ウィル王の悪政を止めずに媚を売っていた貴族のご息女ではいけないとおっしゃるのです。正しい意思を持っている優しい方でないとだめなのです」

「私は正しい優しい人間ではないですわ」

「そうでしょうか? ウィル王を正しい道に進み続けさせる方として思いついたのが、不思議にもクラレッタ様もあなたしかいないと言い、私もそうに思えたのです」

「少し、考えさせてください」

 アダミノは断る気でいた。


 それから数日が経ったある日、隣のマーロ国が国境を超えて攻めてきたと知らせが入った。ガースは兵を連れ、国境に向かう事になった。国境に向かう前日、王子の剣の稽古をした後、ガースはアダミノに向かって言った。

「アダミノ、王子様を頼む」

「ガース、気をつけてください」

「ああ」

 ガースは、そうに言うと俯いた。

「正直言うと、久しぶりの戦いで若い兵士がうまく動くかが心配だよ。あんたみたいな腕の良い剣士がいれば戦力になるんだがな」

 アダミノは嬉しかった。ガースが自分の剣を認めてくれたのだ。

「マーロ国にはフールがいる。今度の侵略は、きっとフールが関わっているんだ」

「フールですって!」

「ああ、幼いウィル様を操って、善良な臣下達を次々に追放、または殺してしまった男だ」

 過去をあまり語らなかったガースが、戦いに行く前に気弱になったのか、話し出した。

「フールによって、俺も随分嫌な事をさせられたものだ。フールに抵抗する前王から仕えていた臣下達が出て行ったが、どうしても城から出て行かないブノフ様と言う方がいた。俺はフールに操られたウィル様からの命で、ブノフ様を襲撃したんだ。俺はいくら命令でもブノフ様を殺す事には抵抗があった。俺はわざと致命傷を外し、ブノフ様を逃した。しかし、フールは許さなかった。ウィル様に俺がブノフ様の首を持って来なければ、俺も危険分子だから殺すしかないと進言した。俺はブノフ様を捜しに森に出た。監視役にフールの部下がついて来た。俺はある村にブノフ様らしき人を見かけたと言う情報を聞き、その村に入った。監視役達は村人にブノフ様がいないか聞きまわり、知らないと言われると、匿っているかも知れないと聞いた者を殺し、家に火をつけていった。なかなか見つからず、村にはいないものとあきらめていた時、ウィル様に抵抗して城から追放されたハッシュ様を見つけた。ブノフ様と仲の良いハッシュ様がこの村にいると言うことは、ここに匿われていることは必然的だった。俺はブノフ様を渡すようにハッシュ様にお願いしたが、ハッシュ様は抵抗した。しかたなく、ハッシュ様を殺そうとするとブノフ様が出てきた。俺はブノフ様の首を斬った。そして監視役たちは、ハッシュ様をこのままにするわけにはいかないから殺せと言い、俺はそこにいたハッシュ様の家族全員を殺したんだ。惨い時代だった」

 ガースが殺したんだ。私の家族を。ガースが……

 アダミノは放心状態になった。どうすれば良いんだ。そうだ。今までウィル王の事ばかり敵と思ってきたが、実際に手を下したのはウィル王のはずはなかった。ガースが敵なのだ。

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