DKBL005 クズ帝王生徒会長×冷静執事副会長 「スターダスト★スナイパー」
【攻め】クズ帝王会長 星狩 ミカド
【受け】冷静執事副会長 匠 キュウマ
☆欲しがりのクズ。誰よりも側にいるスナイパー。
(注記 金犀学園は男子校です)
「こんなオレに敬語なんか使わなくていい」
そう言われた時、俺はこいつに生涯を捧げようと決めた。
「会長、予算委員会の資料です」
「ああ……」
キュウマが差し出した分厚い紙の束を、ミカドは受け取って表紙だけ見た。
「ごくろーさん」
すぐさま机の横に置いて、パソコン画面に視線を戻す。
その様子に、キュウマは眉をひそめて確認した。
「……ちゃんと読むんだろうな」
「読むわけねえだろ、こんな数字ばっかりのヤツ」
「ふう……」
明らかに聞こえるように、大きな溜息をキュウマは吐いてみせた。
それに少しばかり不機嫌になって、ミカドは言う。ただし、顔は笑っていた。
「オレはな、ペライチしか見ねえんだよ」
「まったく……」
キュウマは続けてA4用紙を一枚、ピラと出す。予算案の概要だった。
「先にコレを出せ」
ミカドは機嫌を戻し、フフンと笑ってペラ紙を受け取る。
その視線は数字を追っており、そこでキュウマはやっと安堵した。
「うん、わかった」
「本当にか?」
訝しみながら聞くと、ミカドはニヤと笑って呑気に答える。
「細かいことはオマエがわかってんだろ」
「……そうだが」
いつもそう。
生徒会長のカリスマ性だけを持つミカドは、副会長のキュウマに仕事のほとんどを丸投げする。
実務的には、キュウマが会長職をこなしていると言った方が正しい。
「あっ、やべえ。時間だわ」
「またか……」
ミカドは自身の持つカリスマ性を、趣味に使っている。
「ふっふ、今日は初めての子なんだ。優しぃく、可愛がってやらねえとな」
ミカドは相手に事欠かない。言い寄る生徒はいくらでもいる。
「じゃ、後はよろしくな」
役員達に背中を向けて、手を振りながらミカドは生徒会室を出て行った。
彼の好みは、だいたいが可愛らしい下級生。初めての経験を美味しくいただくのが、彼の趣味である。
「まったく……」
キュウマは再び溜息を吐くが、役員達にとってもいつもの事。
苦笑いをしながら仕事を再開する彼らに報いるため、副会長としてキュウマはその何倍も働く。
◇ ◇ ◇
旧財閥の流れを汲む星狩ホールディングス。
その当主が病に倒れたのは十年ほど前のこと。
星狩家は突然の出来事に戸惑い、後継問題に揺れた。
当主には実子がまだいなかったからである。
——いや、実子はいた。だが、それは奥方の子ではなかった。
当主本人とキュウマの父である執事長以外、その存在を知らなかった息子。
認知はされていたものの、遠方に住まわされていたミカドが突然呼び寄せられる。
目まぐるしく変わる環境。屋敷に来たばかりのミカドは神経が壊れかけた。
執事長であるキュウマの父は、息子を次期当主の側仕えに置く。そこからキュウマも、若干八歳で住み込みの使用人になった。
「ミカド様……」
初めて会った時、ミカドは庭の池をぼんやり眺めていて。
近寄ったキュウマを見もせずに吐き捨てた。
「こんなオレに敬語なんか使わなくていい」
同い年の少年から聞けるような言葉ではなかった。
きっと周囲から、その出自ゆえに心ない事を噂されているんだろう。
「でも……」
父からはきつく言われている。
誰よりも敬い、誰よりも味方になって差し上げなさい、と。
キュウマが戸惑っていると、ミカドはようやく顔を上げてこちらを見た。
諦めたような顔で、微かに笑う。
「……友達に、なってくれる?」
それが、最初の命令。
「はい」
キュウマは迷わず頷いた。
誰よりも味方になる、そう決めた。
「はい、ミカド」
キュウマがそう言うと、ミカドははにかみながら笑った。
「……おう」
射抜かれた。
こいつに生涯を捧げよう。
キュウマはこの日から、誰よりもミカドの側にいる。
◇ ◇ ◇
あれから十年。
奇跡的に当主は病を克服し、現在も精力的に社長の座についている。
ミカドが次期当主なのは変わらず。だが、現在の当主はまだ相当元気なので、ミカドはやりたい放題の毎日だ。
「またあの一年生と話してたな」
キュウマが遅れて生徒会室にやって来ると、ミカドはすでにいて。
まるで見て来たかのような口ぶりで揶揄い混じりに微笑んでいた。
「ああ。委員会の相談をされてな」
ミカドほどではないが、キュウマもモテる。
会長は確かに魅力的だが、だらしないクズだというのも周知の事実で。それを影で支えている副会長のキュウマにも、憧れの目が向けられるのは自然な事だった。
最近、キュウマの周りにいるのが可愛らしい一年生。
くったくのない笑顔でキュウマに懐き、好意を隠さない態度を貫いている。
ミカドは自分になびかない者には興味が無いのが常であるので、キュウマファンの一年生を知っている事は意外だった。
しかも、その話題を振ってくるだなんて。
ニヤニヤ笑う様子から、碌なものではないと直感したキュウマは軽くあしらって席に着いた。
「もう抱いてやったのか?」
「……あの子はそんなんじゃない」
すぐ、自分の物差しで物を言う。
ミカドの下世話な考えに、キュウマは辟易していた。
「へえ、『あの子』ね。随分と可愛がってるじゃねえの」
「だから、お前に群がるヤツらと一緒にするな」
尚も言ってくるミカドに、キュウマは少し苛ついた。
あの一年生の事はそんな目で見ていない。好意には応えられない。
僅かに罪悪感があるキュウマには、その言い方は地雷のようなものだった。
「へえ……大事にしてるんだ? 本命だから?」
ミカドは少し声を荒げて、それでも揶揄い口調は変えなかった。
キュウマはそれが不思議になる。
「今日は随分つっかかるな……?」
「べーつーにいぃい!」
子どもの癇癪のようだ。
ミカドはたまにこんな態度を見せる。それは、キュウマの振る舞いが気に入らない証。
「……」
だが、キュウマもいちいち付き合っていられない。
会長が全く仕事をしないので、事務作業が溜まっている。
ミカドを一旦無視して、キュウマは机の上の書類に目を通し始めた。
すると、ミカドはキュウマの背後に近づいて、背中合わせに体重をかける。
キュウマは机に突っ伏されて、思わず言葉を発してしまった。
「重い……」
キュウマにとっては単なる事実に過ぎない。
だがミカドは違う。
堅物でいつも澄ました顔ばかりの「親友」が、泣き言を吐いたように受け取る。
自分が優位に立った事を喜ぶミカドは、少し機嫌を直してまた蒸し返した。
「そんなにあの一年は可愛いのか?」
しつこい。
いつまで言うんだ。
だが、いくら「親友」を許してもらっていても、キュウマは使用人である。主人の話には最後まで付き合わなければならない。
「そういうのではない、と言ってるだろう」
嫌気がさしながらキュウマが答えると、ミカドは静かに聞き直す。
「……抱きたく、ない?」
「当たり前だ」
なんでもそっち方面で考えるな。
俺までお前の思考に振り回すな。
そう言おうと思った時。
「お前は、抱かれたいんだもんな」
ミカドはキュウマの深層心理に、遠慮なく入り込む。
それからたっぷりと間を取ってダメ押しの一言。
「……オレに」
心臓が、潰れるかと思った。
絶対にバレてはならない感情。
目の前の主人に、そんな事を想っているなんて。
キュウマは、絶対に振り向けないと思った。
耳が熱い。きっと赤く染まっている。それだけでも充分な失態だ。
「……」
「むっふっふ」
勝ち誇ったミカドは、笑いながらキュウマから一旦離れる。
しかし、すぐに今度はおぶさるようにして体重をかけてきた。
「おもい……」
キュウマはそれを繰り返すだけで精一杯だった。
「嬉しいくせに」
ミカドの吐息が耳にかかる。
ますます耳は熱くなり、書類を持つ手が震えてしまう。
「好きだろ? オレに、押しつぶされるのが……」
ミカドはそう言いながら、熱い吐息とともにキュウマの耳を軽く喰んだ。
「ッ!」
あまりの仕打ち。
動揺が止まらない。思考はぐるぐると掻き乱される。
キュウマは弾かれたように立ち上がって、生徒会室の扉まで逃げた。
「……ふっ」
おんぶさせていた相手に突然弾かれて、ミカドは一瞬体勢を崩した。
だが、背中を見せながら静かに怒るキュウマを眺めて余裕の笑みを浮かべる。
この潰れそうな心臓を治めなくては。
キュウマはドアノブに手をかけて、覚悟を決めて振り返る。
主人を睨んだのは、微かな抵抗だ。
「お前の性欲処理にまでは、付き合えない。その他大勢のように」
「……知ってる」
部屋を出たキュウマの脳裏には、不敵に笑うミカドの顔がこびりついている。
そう、あいつは知っている。
俺の劣情も。
俺が生涯の全てを捧げていることも。
誰もいなくなった部屋で、ミカドは聞こえもしない独り言を落とす。
「お前は、オレの本命狙いだもんな」
ーーーーー
ミカドとキュウマってどんな二人?
〈妄想メモ〉
この後、ミカドのマンション(連れ込み部屋)を掃除するキュウマ。それを押し倒すミカドのエピソードを予定していましたが、その前に文字数がいい感じになってしまいました(笑)
そのエピソードはまた別の機会に書けたらいいなと思っています!




