→DKBL007 書いておいた短編を三本出してみた(約9000文字)
【攻め】溺愛生徒会長 加賀谷 イツキ
【受け】従順書記 花井 ユウ
☆一目惚れした生徒会長が強引に書記にしました。
【短編①】「生徒会長の溺愛大作戦!」
男だけの花園。金犀学園。
三年生になるまで恋人ができなかった俺の前に、突如彼は現れた。
初々しい一年生の集団の中、そこに俺だけの花を見つけてしまった。
「──君!」
とにかくその時の俺は舞い上がっていて、声をかけずにいられなかった。
「名前は?」
おい、これじゃまるで戦後間もないラジオドラマじゃないか。
「ぼ、僕……ですか?」
その花は、大きな瞳を見開いて可憐な唇から鈴が鳴るような声を漏らした。
「花井、ユウです……」
はない ゆう
俺はその名を胸の奥まで刻みつけた。
「花井くん……」
「え、えっと……三年生の人ですか?」
戸惑っている。なんて可愛いんだ……
ダメだ! まだ触るな!!
俺はそんな自分との葛藤を制して、努めて先輩らしく自己紹介した。
「急に済まない。俺は今期の生徒会長・加賀谷イツキ」
「加賀谷、先輩……じゃなくて、会長ですか……」
不覚にも、己の名を呼ばれて俺は頭が真っ白になった。
白くなっていく頭で、それでも俺は懸命に考えた。
彼をここで逃してはならない。なんとか繋がりをもてないか──
!
その時のヒラメキを、俺は一生自画自賛することになる。
「君、生徒会に入らないか?」
◇ ◇ ◇
「会長! 先週の会議の議事録、出来上がりました!」
にこやかな笑み、軽やかな足取りで、生徒会書記の一年生・花井ユウは奥の席で作業中の生徒会長に声をかけた。
「ああ、ありがとう、花井。早く上げてくれて助かるよ」
悠然に笑って議事録を受け取った生徒会長・加賀谷イツキの胸中が、「ユウ可愛いユウ可愛いユウ可愛い」で埋め尽くされていることは誰も知らない。
「いえ! あの、ワガママを言って生徒会室を開けていただいてすみません!」
ユウは恐縮しながらイツキに向かってペコリと一礼した。
なんて可愛い仕草なんだ、という気持ちをイツキは絶対に出さずに応える。
「いや、構わない。ちょうど俺もやっつけてしまいたい書類があったからな」
今日は生徒会の活動日ではない。それなのに、イツキとユウは仕事をしていた。
ユウが、自分は不慣れだから議事録の作業をしたいとイツキに申し出たからだ。
先週の会議の録音は生徒会室のパソコンに入っていて、持ち出すことは出来ない。
サラリーマン風に言えば、ユウは休日出勤を願い出たのである。
今日、生徒会室を開ければ二人きり……だと?
そんな煩悩に支配されたイツキが、これを断るはずはなかった。
もっとも、ユウのおねだり(イツキ的にはそう表現したい)を断ることなどそもそもあり得ないのだが。
一年生にだけ仕事を押しつける訳にはいかない。
自分は生徒会長として、他の役員を監督する責任がある。
そんなもっともらしい論理で武装して、イツキはまんまとユウと放課後デート(イツキ的にはそう表現したい)を実現した。
「会長の方はまだかかりますか?」
「ああ……うん、そうだな……まあ、それなりに……」
やっつけてしまいたい書類などはない。
イツキはパソコンの画面越しに、一生懸命に手を動かすユウの横顔を覗き見していただけ。
白紙の文書ファイルを見られないように、イツキは生返事で切り抜けようとした。
「それじゃあ、僕、お茶淹れますね」
「あ、ありがとう。花井は先に帰ってもいいんだぞ?」
嘘だ!
帰らないでくれ!!
心とは裏腹に格好つけてしまう自分を、イツキは呪わしく思った。
「とんでもないです! 僕が無理を言って開けてもらったんだから、お手伝いします!」
真面目で従順なユウがそう言うと、イツキは内心で飛び上がって喜ぶも、それを顔には出さずにまた格好つける。
「そうか。ありがとう。じゃあ、とりあえず紅茶を入れてくれるか? 一番いいやつ……皆には内緒だぞ」
「はい! 美味しく淹れますね!」
心なしか、ユウが頬を染めた気がする。
可愛い可愛い可愛い。
イツキは荒くなりそうな息を懸命に堪えて、備え付けの給湯室へと向かう小さな背中を見送った。
しばらくして、アールグレイの芳醇な香りが生徒会室に漂ってくる。
ユウは来客用のカップを二脚、トレイに乗せて持ってきた。置いてある個々のカップでは高級茶葉を味わうには役不足だ。
「えへへ、これ、使っちゃいました」
悪戯っぽく笑うユウの仕草は全てが可愛くて、イツキは発熱しそう。クーラーの温度をこっそり下げた。
そうしているうちに、ユウがイツキの机まで歩いてくる。
マズイ!
パソコンの画面が白いことに気づかれる!
イツキは慌てて立ち上がった。
「は、花井! お茶はそっちのソファで飲もう!」
「え?」
イツキが指さしたのは、来客を迎える応接セットがある一画だ。
ユウが立ち止まっているうちに、イツキはツカツカとそこに向かって先にソファに腰掛けた。
「こちらで休憩しよう。……おいで」
イツキは三人掛けのソファの端に座り、大人びた笑みでもって隣をポンと叩いてユウを招いた。
すると、ユウはまた頬を紅く染めて頷く。
「は、はい……」
方向を変えたユウがこちらにやって来る。
結果オーライの大チャンス到来かもしれない、とイツキは思った。
現在の暦は七月に入ったばかり。もうすぐ夏本番である。
イツキは、夏休みが始まる前にどうしてもユウと恋人になりたかった。
ただの先輩後輩のままで、長い休みを過ごすなどもっての外。
誰にも邪魔されずに、夏休み中はずーっとユウとイチャイチャしたいのだ。
そうなるためには、この想いを告げなくては。他の役員がいない今日こそ、大チャンス!
隣にそっと座るユウは、少しいつもと違う。仄かに頬を染めて、恥じらっているように見えた。
「どうぞ、会長」
ユウが差し出してくれた紅茶を、イツキはゆっくりと味わった。
「……うん、美味しい。上手に淹れてくれたな」
鼻腔をくすぐる芳香に後押しされて、イツキはユウに微笑みかけた。
「えへへ……良かったです」
ふわっと笑う笑顔と、柔らかく揺れる前髪。
緩いウェーブがかかった茶色い髪に触れて、掻き上げて匂いを嗅ぎたい!
落ち着け、加賀谷イツキ。第五十五代生徒会長よ。
段取りが肝心だ。早まってはいけない。
イツキはバクバク煩い心臓音から懸命に意識を逸らし、ユウに問いかけた。
「花井。……君は、夏休みの予定などは、あるのか?」
「いえ、特には。うちは両親が共働きなので長い旅行も行けないですし」
「そうか……」
細かすぎる関門を突破して、イツキは心の中で拳を握る。こんなに刻んでいたらいったいいつ告白できるのか。
「会長は、受験勉強とかでお忙しいんですか?」
ユウが俺に興味を持っている! なんて可愛いんだ!
イツキは嬉しさで放心しそうになるのを堪えて、努めて普通に振る舞おうとした。
「いや、そうでもない。俺は大学も金犀だから。内申点も満たしているはずだし、何もなければ推薦がとれるんだ」
「そうなんですか? さすが会長です!」
ユウはキラキラした眼差しを向けて言った。ちょっと可愛いが過ぎる。
伸ばせば届くその手を握って、抱き寄せたい。
イツキは抗いがたい衝動と戦っている。
「僕、夏休み、あまり楽しみじゃなくて……」
「どうして?」
俯きがちに、ユウは顔をますます赤らめて、覚悟を決めたように言った。
「一月以上も、会長に会えないなんて……」
「!」
イツキの心臓はバックンバックン騒ぎ出していた。
「僕、会長に生徒会に誘っていただいて、すごく嬉しかったんです。会長のお役に立てるのが──必要とされるのが嬉しくて」
イツキの脳裏には春からの走馬灯が駆け巡る。
書記の仕事を懸命に覚えようと頑張っていた四月。
初めての部活動予算会議で議事録作成に取り組んだ五月。
衣替えを迎え、半袖の下から細くて白い腕が見えた六月。
そして七月、いや、これからは……
「必要だ、花井」
「会長……?」
イツキは、ユウの腕を掴んで引き寄せた。
初めてその頬に触れる。柔らかくて、とても温かい。
「夏休みになっても、俺には花井が必要だ」
「え、と……」
大きな瞳が少し揺れてイツキを見ていた。
「夏休みが終わっても、秋になって冬が来ても、卒業しても……俺には花井が、ユウが必要なんだ」
ユウの瞳には、イツキしか映っていない。それはイツキも同じ。ユウしか見えない。
俺達の想いは、同じだ。自然とそう思えた。
「ずっと、一緒にいて欲しい。君が、好きだ」
「会長……」
ユウは泣きそうな目で、笑っていた。
その表情は、今までで一番美しい。
「もう、会長なんて呼ぶな……」
イツキはユウの唇に親指で触れる。熱くてしっとりとした感触が、イツキの胸を昂らせた。
「イツキ……さん」
「ああ。ユウ……」
やっと呼んでくれた。その響きをイツキは噛み締めながら唇を寄せる。
ユウの唇は、紅茶の香りを帯びて、甘美な言葉を紡いだ。
「大好き、です……」
「ありがとう……」
甘い紅茶の香りが、ユウの唇から伝わる。
初めてのキスに、イツキは酔いしれながらユウを深く求めていった。
【短編②】「生徒会長の夏休み大作戦!〜図書館デート編」
七月下旬。夏休みに入った。
高校三年、加賀谷イツキにとって薔薇色の長期休暇の幕開けである。
「ふふふ……」
歩いていても笑いが止まらない。
道行きすれ違う人達の、誰よりも俺の方が幸せだ。
何故なら。
宇宙一キュートでベリープリティな恋人が出来てしまったからだ!
しかも、これから待ち合わせ。イツキの足は恋人へと向かっていくためについている。
「フッフフフ……」
落ち着け、加賀谷イツキ。第五十五代生徒会長よ。
まだこれはほんのプロローグ。まずはめくるめくアバンチュールを阻む敵を倒さなければ。
そう、「宿題」という敵を……! 闘技場という名の「図書館」へ……倒しに行くのだ!
「会長、おはようございます!」
図書館入口で元気に手を振っている少年。
それがイツキの恋人、一年生の花井ユウ。
ああ……なんて可愛いんだ。この世のものとは思えない。
私服、初めて見る。天使もTシャツを着るんだなあ。
イツキの脳内はすでに夏祭り状態、花火がバンバンぶち上がっていた。
しかし、そんな煩悩をユウに見せるわけにはいかない。イツキは爽やかに笑ってユウに駆け寄った。
「やあ、ユウ。待たせたね」
そんなイツキの姿を見たユウは花が咲いたように笑う。
「いえ! 僕も今来た所です。せっかく夏休みなのに会長を付き合わせてしまって……」
「こーら、ユウ。会長、じゃないだろ?」
今すぐ抱きしめてグリグリしたい衝動を堪えて、イツキは少しおどけて嗜めた。
するとユウはぽっと頬を染めて、俯きがちに言う。
「え、え……と、イツキ……さん」
恥じらうユウの可愛さは、イツキの意識レベルを成層圏まで飛ばす。
心臓は激しく貫かれ、萌えという吐血をしそうになるが、それもイツキは鋼の精神で堪えた。
「そう、よく出来ました。ユウのためならいくらでも付き合うから、気にしなくていい」
だって俺たちは「付き合っている」のだから!
最後の一言はオヤジギャグになりかねないので、イツキはぐっと言葉を飲み込んだ。
「……ありがとうございます」
そう笑いかけるユウの視線は、それまでとは違っていた。
イツキが告白する前、気持ちが通じ合っていなかった頃は、単純に可愛らしい笑顔というだけだった。
だが、今のユウの顔。好意を隠さない、隠さなくても良くなった素直な笑顔。
以前の何十倍も素晴らしいとイツキは思った。そしてそんなユウの笑顔に、イツキの想いも何十倍にも膨れ上がる。
「では行こう、談話室を予約してあるから」
イツキはスマートな仕草でユウの腰に触れ、図書館へとエスコートする。
「は、はい……っ」
全ての所作がカッコいい、とユウは思っている。
だがイツキは胸中でユウの細い腰にムラムラしている。そこをおくびにも出さないイツキの精神力は流石であった。
本日の図書館デートの目的はユウの宿題をどう進めるか。効率的に終わらせる方法をイツキが教える、というものだ。
図書館の弱点は話せない事だが、イツキはグループ研究用の談話室を予約することでこれを打破した。
初デートの場所を図書館にする事で、真面目さと誠実さを演出できる。
談話室を予約する事で、デキル男感を出せる。
イツキの計画は完璧であった。
「イツキさんて、やっぱりすごいですね……」
ユウがうっとりと俺を見ている。なんて可愛い。
だがまだ我慢しろイツキ。ユウの宿題の算段をつけてからがアバンチュールの始まりだ。
本当はユウの宿題全てを手取り足取り教えてやりたいイツキである。
だがユウにそれは断られた。二人っきりではドキドキして勉強に集中できない、という実に可愛らしい理由で。
それは確かにイツキも無事に済ませる自信はない。
だから宿題を早く終わらせる計画を立てる助言をする、という折衷案がまとまった。
「僕、頑張って宿題を終わらせますね……!」
「ああ、その意気だ、ユウ」
早く終わらせて、暑い夏で熱くなろう。
イツキの溜め込んだ夏休みプランの数々が火を吹くために。
◇ ◇ ◇
談話室が使えるのは二時間まで。
ユウの宿題内容を確認して、効率良い手順を考えるだけで時間いっぱいだった。
二人が図書館を出るとちょうどよくランチの時間になっていた。
そこでイツキの夏休みプランその一が早速実行された。
「ユウ、頑張ったな。昼食を食べて行かないか、この先にいいカフェがあるんだ」
「はいっ!」
ユウは弾ける笑顔で返事した。嬉しそうにしている様に、イツキの胸もまた弾ける。
「お腹が空いてるんだろう?」
無邪気に喜んでいる様子にイツキがほのぼのしていると、ユウは少し照れながら言った。
「それもありますけど、イツキさんと初めてのデートなのに勉強だけじゃ……なんて。もうちょっと一緒にいたいなって……えへへ」
──カワイイ!
照れて語尾まで喋れないのが、ものすごくカワイイ!!
健気にそんな事を言われては、イツキはキュン死に確定である。
この衝動に耐えるには、せめて手を繋ぐしかない。イツキは迷わずユウの手を取った。
「あ……っ」
「では行こう。暑いが、ゆっくり歩いてもいいかな?」
「はいっ」
ゆっくり歩いて行こう。
俺達はまだ始まったばかりなのだから。
こんなに可愛いユウのペースに合わせて、ゆっくりと。
◇ ◇ ◇
ランチを食べて他愛もないおしゃべりをして、夕暮れ前にイツキはユウを駅に送り届けた。
「イツキさん、僕、宿題頑張って終わらせますね!」
「うん、期待しているよ」
両手でガッツポーズをしてみせるユウの、可愛らしさは何にも変え難い。
こんな可愛い生き物を駅前の数多い通行人に見せるなど、もっての外だとイツキは思う。
「それじゃ──」
帰したくない。
そんな想いに耐えきれなくて、イツキは思わずユウの腰を引き寄せた。
「ふあっ」
驚くユウの耳元に、イツキは唇を寄せる。
「次は夕方まで一緒にいよう」
そして、その次は夜まで……
そこまでは言えなくて、イツキは言葉を飲み込んだ。
愛を囁かれたユウは頬を真っ赤に染めて、改札口を入っていった。
その小さな背中を見送りながら、イツキは気持ちを逸らせる。
あまりゆっくりもしていられない。
夏の夜は短いのだから。
【短編③】「書記の片想い大作戦!」
入学式、壇上の人に恋をした。
「新入生諸君、ようこそ金犀学園へ」
僕らを見下ろして溌剌と語りかけるその人は、とても頼もしくて瞳がキラキラしていた。
ネクタイをかっちりと締めて、ブレザーもきっちりと着こなしている。
整った真っ黒い短髪が照明を受けて光っていた。それが面長の綺麗な顔によく似合っている。
「なんかさ、あの人、サラリーマンみたいだね」
隣のクラスメイトがそんな風に呟いた時、僕はなるほどと納得してしまった。
「第五十五代生徒会長、加賀谷イツキです」
自己紹介する姿はまさに、キャリアがあって仕事をバリバリこなすエリートサラリーマンだと思った。
きっとこの人は何でもできるスーパーマンなんだろうと想像した。
だけど、三年生と入学式したばかりの僕では、もう一度会うような機会がなくて。
壇上で感じた恋心は、緊張していたからだと思うようになって。
忙しく巡る学校生活の間にその面影は忘れてしまった。
◇ ◇ ◇
入学して二週間が経った頃、昇降口を歩いていたら急に声をかけられた。
「──君! 名前は?」
僕はこの時とても驚いてしまっていて、その人が壇上のあの人だとは思わなかった。
壇上の人はすでに僕にとっては天上の人になっていたんだ。
「花井、ユウです……」
辛うじて先輩に話しかけられている事だけはわかった。だから失礼がないようにすぐ名前を言った。
先輩に名前を覚えられたらどうなるんだろうと心臓がドキドキしていた。
「花井くん……」
背が高いその先輩は、何故か僕をじっと見つめているだけだった。
何でそんなに見るんだろう。僕は失礼な事を知らずにしていたんだろうか。
「え、えっと……三年生の人ですか?」
直感で三年生だと思ったのは、目の前の先輩が動かないうちに、僕も少し落ち着いたから。
その直立したカッコいい姿には見覚えがある気もした。
「急に済まない。俺は今期の生徒会長・加賀谷イツキ」
目の前の先輩は、ピクリと動いた右腕を何故か左手で押さえながら名前を教えてくれる。
「加賀谷、先輩……」
あ──
その名を反芻した時、僕は急に二週間前の出来事を思い出した。
「じゃなくて、会長ですか……」
初めて会う人じゃない。この人は生徒会長だ。
エリートサラリーマンみたいな、何でも出来る、憧れの壇上の人。
僕の気持ちは、入学式の日に戻る。
そうだ、僕は、この人に恋をした。それを思い出した。
最初のトキメキ。それから二度目のトキメキ。
同じ人に二度ときめいたから、もう、きっとこれは本当に「恋」だ。
「君、生徒会に入らないか?」
「はい……」
恋した人から、夢みたいな提案。
僕は思わず即答していた。変な子だと思われたかもしれない。
でも、これからずっと会えるようになる。目覚めた恋心に僕は舞い上がっていた。
会長の僕を見る目が、とても優しかったから。
◇ ◇ ◇
会長は、何をしていてもカッコいい。
会議中、意見をまとめてみんなが納得するような最適な答えをすぐに出してくれる。カッコいい。
最後に決まって「花井もそれでいいかな?」って聞いてくれるのが一番カッコいい。
とにかく会長は優しくて。
発言権なんかほとんどない一年生の僕を、特に優しく気遣ってくれる。
カッコ良すぎて僕はずっと痺れてる。
五月、六月と、生徒会で会長と過ごしてきて、僕の心には欲が出て来てしまっていた。
期末テストが終われば夏休み。長い間、会長に会えない。その間に僕のことなんか忘れてしまうかもしれない。
だから思い切って、活動日以外の作業を会長に頼んでしまった。
会議録の作成をわざとゆっくりやって終わらない振りをした。
優しい会長は、一年生に一人で作業なんかさせない。そう期待して。
僕は会長と二人っきりになるチャンスを得ようとした。
会長、ごめんなさい。僕、本当は悪い子です。
二人っきりになって、僕は困ってしまった。何をどうしたらいいのか分からなかった。
会長に「好きです」とも言えなくて、困りながら作業だけが進んでしまった。
お茶を淹れて粘ってみるけれど、会長に告白する勇気が出ない。
だってこんなに素敵でカッコいい会長だ。僕みたいなみそっかすはお呼びじゃない。
でも、その日の会長の仕草はなんだかとても甘くて。
「おいで」なんて言って、僕を隣に座らせてくれた。会長がすぐ近くで、いい匂いがして、ますます心臓が跳ね上がる。
好き。
好き、好き。大好き、会長。
夏休みも、僕とずっと一緒にいて欲しい。
「ずっと、一緒にいて欲しい。君が、好きだ」
奇跡が、起きた。
会長も、僕が必要だって言ってくれた。
「イツキ……さん」
初めて恋人になった人の名前を呼んだ。
それだけで、想いがあふれて幸せだ。
「大好き、です……」
◇ ◇ ◇
僕のは作戦なんて呼べたものじゃなかった。
やっぱりイツキさんはスーパーマンだ。僕の恋を叶えてくれたスーパーマン。
二人で過ごす夏休み。まずは僕が宿題を終わらせること。
イツキさんの計画は完璧。今日の段取りも溜息が出るくらいカッコよかった。
僕の計画は……
「次は夕方まで一緒にいよう」
別れ際に囁かれた耳がまだ熱い。
夕方まで、ですか? 嬉しいけれど、その計画は少し不満です。
僕は携帯電話で検索を始める。
『夏休み 恋人と過ごす』
……さらにスペース。
『 夜まで』




