突然のお誘い
「――いやーもう二学期も終わりかぁ。なんかあっという間だったよね……って、なんか前にも言ったよね、これ」
【そうですね、斎宮さん。本当にあっという間で、二学期も本当に充実した日々でした】
それから、およそ一ヶ月経た12月中旬。
空き教室にて、藹々とした雰囲気でそんな会話を交わす僕ら。修学旅行や文化祭など、非日常の特別な時間は今でも鮮明に覚えている。……だけど、何より大切なのは、この教室でこうして過ごす日常だったり、なんて思うわけで。
その後も、閑談を続けたり将棋を指したりと楽しい時間を過ごす僕ら。気が付くと、窓の外はすっかり黄昏に染まっている。どちらからともなく、そろそろ帰ろうという雰囲気になった辺りで徐に口を開く。そして、たとだとしく震える声でどうにか言葉を紡ぐ。
「……あの、斎宮、さん。その……もし良ければ、会えませんか? その……来週の、日曜日に」
「…………へっ?」
「…………ふぅ」
それから、数日経た小昼の頃。
そう、胸に手を添え呼吸を整える。そんな僕がいるのは、地元の大きな公園――その中央の辺りにある、大きな噴水の前で。待ち合わせは正午――そして、スマホを見ると時刻は11時28分。……流石に、早すぎたかな? でも、まあ良いよね? 早く来る分には、これといって問題もないはずだし――
「――おや、出来れば先に到着してお待ちしたかったところなのですが……ふふっ、やはり先輩には敵いませんね。お待たせしました、朝陽先輩」
すると、そっと鼓膜を揺らす柔らかな声。もうお馴染みの声の方向――後方へと向き直り、いつもの通りペンを執り答える。
【いえ、お気になさらず。僕も、たった今来たところですので――織部さん】
「――ところで、改めてですがありがとうございます。突然のお誘いなのに、こうして承諾してくださって」
【いえ、織部さん。こちらこそ、誘ってくださりありがとうございます。とても嬉しかったです】
その後、歩みを進めつつ和やかにやり取りを交わす。彼女の言葉通り、お誘いがあったのは昨日の夜のこと。それでも、今日はたまたま仕事もなかったので承諾。尤も、いくつかの理由にて大いに悩むところではあったのだけれど……それでも、今回は承諾すべきだと思った。彼女が、どうして今日こうして誘ってくれたのか――いくら愚鈍な僕といえど、流石に察せないはずはなかったから。
「――ねえ、朝陽先輩。今日は、すっごく楽しい一日にしましょうね!」
「……織部さん」
すると、ニコッと微笑みそう口にする織部さん。そんな彼女の笑顔に、ぎゅっと痛みを覚えつつ僕もどうにか微笑んだ。




