文化祭を終えて
「――いやーほんと大変だったよ。でも、それでもやっぱり楽しいね、文化祭!」
【はい、斎宮さん。本当に楽しく、大変充実した一日でした!】
それから、数時間後。
茜に染まる帰り道を、藹々とした雰囲気で会話を交わし歩いていく僕ら。言葉の通り、斎宮さんは本当に大変だったと思う。……うん、本当にお疲れさまです。
「……それでさ、改めてだけどありがとね、新里。ほんとに、ほんとに助かった」
【……いえ、斎宮さん。少しでもお役に立てたのなら幸いです。こちらこそ、ありがとございます】
「ふふっ、なんで新里が」
それから、ほどなくそう口にする斎宮さん。僕自身、大したことはしていないけど……それでも、お役に立てたのなら幸いです。
ともあれ、何のお話かと言うと――微力ながら、二年B組の和風喫茶を僕がお手伝いさせて頂いたことに関してで。
『……えっと、手伝ってくれる……? まあ、状況が状況だし助かるけど……でも、良いの? 新里くんも、自分のクラスのこととかあるでしょ?』
数時間前、二年B組の教室にて。
僕の申し出に、ポカンとした表情でそう問い掛ける女子生徒。……まあ、そうなるよね。部外者の人間に、いきなりこんなことを言われたら。……ところで、それはそうと……うん、ご存知だったんですね、僕のこと。こちらもびっくりです。
ともあれ、少し悩んでいたものの、やはり猫の手も借りたいだからか承諾の意を示してくれた女子生徒。そして、やはり時間もないとのことで、さっと和装し当喫茶のシステムについて簡潔な説明を受けさっそくお仕事。もちろん、驚いていたけれど……それでも、皆さんお礼の言葉と共に暖かく受け入れてくれて……うん、こちらこそありがとうございます。
「……ところで、改めて思ったけど……ほんと似合うよね、女装。あの美少女は誰だ、みたいな雰囲気になってたし。ふふっ、お陰でもっと忙しくなっちゃった」
【……いえ、そんな恐縮です。斎宮さんこそ、本当に綺麗で見蕩れてしまいました】
「……う、うん、ありがと。でも、やっぱりほんと似合うよ新里。もはや、天職じゃない?」
【……いや、女装は職業ではないかと。ですが、そうですね……そういうことなら、飲み会などで披露すれば盛り上がるのかも――】
「……いや、流石にもっとあるでしょ、使い道。あと、たぶん飲み会とか行かないよね、新里」
その後も、和やかにやり取りを交わしつつ歩を進めていく。まあ、確かに飲み会とかに意気揚々と参加している自分は全く以て想像出来ないけども。……あっ、でも例えば少人数の――斎宮さんや日坂くん、織部さんとの飲み会だったらすっごく楽しそう……というか、絶対楽しい。いつか実現すると良いなぁ。
【……ところで、今更ではありますが、ありがとうございます、斎宮さん】
「ん? 何のこと?」
【……全く、とぼけちゃって。斎宮さんでしょう? 二年E組の宣伝をしてくださったのは】
「ふふっ、やっぱバレちゃってたか。でも、別に感謝されることじゃないよ。あれは、せめてものお返しだし」
その後、ややあってそう伝える僕。すると、一回とぼけた後、僕の言葉に可笑しそうに答える斎宮さん。僕は後から聞いたのだけど、あの辺り――僕がお手伝いしたあの辺りの時間から、なんと二年E組の屋台やお化け屋敷にお客さんが更に増え大いに繁盛したとのことで。ちなみに、西条さんはというと僕が戻ってこないため他の屋台のお手伝いを……うん、ほんとにごめんなさい。
「それに、宣伝って言っても私はあの美少女が二年E組の生徒だと伝えただけ。新里のクラスにお客さんが増えたのは、新里自身がお客さんを魅了したからだよ」
【い、いえ僕なんかが魅了だなんて……ですが、ありがとうございます斎宮さん】
すると、ふっと微笑みそう告げてくれる斎宮さん。僕なんかには何とも勿体ないお言葉……だけど、魅了とまでは言わずとも、褒めてくださるお客さんは少なからずいてくださって。……うん、本当にありがたいことこの上な――
「――ところで、新里。あの後、クラスの子からすっごく興味深いことを聞いたんだけど――」
そんな感慨の最中、ふと莞爾とした笑顔でそう口にする斎宮さん。……だけど、どうしてだろう。満面の笑顔なのに、どこか不穏な雰囲気をひしひしと感じてしまうのは。すると、ほどなくして――
「――なんか、随分と楽しそうだったみたいだね? 可愛い後輩ちゃんと」
そう、ニコッと尋ねる斎宮さん。……うん、まあ、否定はしないけども。




